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ナビゲート[に] 2018-01-24
学生時代、結婚式の披露宴会場でスポットライトを操作するアルバイトをしていました。
業務内容としては、会場の設営、当日のプログラムの流れとスポットライトを当てる場所の確認、本番、片付け、が基本的な一日の流れでした。
今回は、その設営準備中にあったエピソードです。
設営作業は照明に限らず、司会者やお客さまが使用するマイクなど、音響機材の準備もします。
本番の緊張もさることながら、この準備も同じくらい気が抜けない作業です。
一度披露宴が始まってしまうとお客さまの手前、修正することが難しいので、見た目の美しさも含めて完璧に整えておかなければいけません。
マイクのコードなどは基本的に壁に沿って這わせ、できるだけ目立たないよう床や壁の色に合わせたテープを使い固定していきます。
まだメモを見返しながらでなければ個々の手順に自信が持てなかった頃、何本目かのコードを引っ張りつつ会場の角にさしかかったとき、先ほどまで使っていたテープと次の壁の色が違うことに気が付きました。
あいにく手元には適した色のテープを準備しておらず、コードを一旦壁に寄せて、部屋の反対側にある工具箱まで取りに戻りました。
数百人規模の披露宴会場なので端から端まではそれなりに距離があり、気持ちは焦るものの、割れ物が並ぶ中で多くのスタッフが動き回る会場の性質上、走ることはできません。
早足で部屋を突っ切り、目当ての色のテープを手に入れて引き返している途中、前方から「おい何してんだ!」と怒鳴り声が飛んできました。
驚いて目を向けると、コードを寄せた場所で厳しい顔をした社員がこちらを見つめています。
どうやら、乱れたコードを放置して私が別の作業を始めたのだと思ったようです。
普段穏やかに仕事を教えてくれていた社員に怒鳴られたことに驚きつつ、
「壁に合う色のテープを持っていなかったので取りに行っていました」
と弁明すると、彼は怒り顔から一転して慌てて謝ってくれました。
私も、傍目から見れば自分の行動は紛らわしいものだったとはわかっていたので、誤解されたのも仕方ないとその場では特に何も思いませんでした。
目的のコードを固定し、その他の準備も完了させて会場の隅の操作卓に座り本番を待ちます。
先ほどの社員も司会者との打ち合わせを終えて操作卓に戻ってきました。
しばらく無言で照明の設定を確認したあと、彼が不意に手を止めてこう言いました。
「さっきは怒鳴ってごめんね。俺、余裕無かったよね」
もうすぐ始まる披露宴のことで頭が一杯だった私は、再度謝られると思っていなかったので「え! 大丈夫です! 気にしてないです!」と妙に元気よく返事をしてしまいました。
社員はそんな私に苦笑しつつもまだ心配そうな様子で、
「理由も聞く前に怒ったし......。働くの嫌になったら申し訳ないと思って」
と気にかけてくれました。
その後はいつものように披露宴がスタートし、新郎新婦の入場や来賓のスピーチなど、スポットライトの出番も次々にやってきます。
緊張でつい操作の手が固くなってしまいながらも、適確な社員の指示に助けられ、その日も無事すべてのプログラムを滞りなく終えることができました。
アルバイトをしていた当時は、怒ったことをあんなに気にしてくれるなんて優しい社員さんだなあ、としか感じていなかったのですが、もし私があの叱責に深く傷付くタイプの人間だったら、本番前のフォローがないと彼のことを「理不尽に怒鳴る人」として苦手に思っていたかもしれません。すると余計な緊張が増え、仕事でのミスも増していたことでしょう。
また、私の意図はどうあれコードを置き去りにしたことは事実で、もっとしっかり準備をしろと注意を重ね、彼の誤解をうやむやにすることもできたはずです。けれど、そこですぐに自分が早まったと認めてくれた社員の姿に、自分も誰かと働くときは、思い込みに囚われず、自分に非があるときにはすぐに謝罪できる人間になりたいと思いました。
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