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アウトプットの大切さ

メンバーを成長させるには、相手を信じて小さな火傷をさせること

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有岡 秀郎(フリーランスコーチ/研修講師)  2021-09-13

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メンバーを成長させるには、相手を信じて小さな火傷をさせること

私は、高校卒業後18〜24歳までの6年間を航空自衛隊という組織に入り、自衛隊にいながら、通信制で大学を卒業し、卒業と同時に新社会人として大手航空会社系列の航空貨物会社の総合職として入社しました。
屈強な自衛官しかいない基地内の宿舎から、成田空港近くのアパートで一人暮らしをはじめ、自衛官の制服から真新しいリクルートスーツに身を包み、新入社員としての生活をスタートさせました。
入社後に配属されたのは、外国貨物の到着確認を行う部署でした。
入社して1年が終えようとしたころ、上司からOJTリーダーの打診をもらいました。
私にとっても非常によい機会だったので、喜んで引き受けることにしました。

私が指導することになったのはAさんという女性で、大学卒の新入社員です。
今から15年前(2006年)の話になるのですが、彼女は非常に慎重派で仕事においては、真面目なんだけれども要領がよくないタイプ、というのが表現としてわかりやすいでしょうか。
彼女は頭で考えて納得してから行動に移すタイプであったため、私の指導方針である「とりあえずやってみれば」という指導法がなかなか通用せず、「えー、ちょっと整理してからでいいですか」「この処理を入れたらどうなるのですか、不安です」や「前回教わったのですが、どこに書いたかわからないです」という具合に、自ら進んで業務に取り掛かることができない場面がありました。

そのようなAさんに対し、まず私は素直に思っていることを伝えるようにしました。
例えば、「この前、教えたから絶対に手帳に書いているよ」「この業務を教えるのは3回目だよ」「とりあえず電話かけてお客様に謝ってみたら」「これで忘れたなら○○刑だな」という若干ブラックジョークを交えながら、教えていきました。
というのも自衛隊時代は転勤の関係で、いわゆる年上部下のような立場でベテランだけれどもそこの仕事はまったく初めての方に教える場面もあり、思っていることを素直に伝えることができず我慢しながら業務を教えていたこともあったため、今回はそうならないように気をつけました。
その上で私はOJTリーダーとして、Aさんに意図的にアウトプットさせるようにしました。仕事の工程を手取り足取り教えたあと、毎日、Aさんを先生のように教える立場にさせ、私に説明をしてもらうようにしたのです。なぜ、この業務が必要なのかという目的や、この仕事におけるポイントは何かということを絶えず口にしてもらいました。
具体的には、私は習う役をしているので、「なぜそれが必要なのですか」「どういう影響があるのですか」「これができない場合、どういう部署にどういう情報を提供しなければならないのですか」という具合にAさんに意地悪な質問をどんどん投げかけました。
それによりAさん自身が理解でていない部分が明らかになっていきました。

ところで、人間の記憶の定着は「回数×インパクト」だと言われています。
お客様の気分を害して謝罪の反省文を半日かけて書いたこと、研修の日程を間違えて関係者の予定を1日棒に振ったこと、自衛官として命の次に大事だと言われる身分証明証を紛失したこと。どれも私のエピソードですが(笑)
ここまでのインパクトはなくても、意図的にアウトプットさせたことは、Aさんにとって「回数×インパクト」を積み重ねる機会となったはずです。
そんな彼女は今では、女性最年少管理職として第一線で活躍をしています。

一方で教える側の「専門性」と「共感性」を高めることの大切さにも気づきました。
有岡さんに聞けば解決できそうだ、と思ってもらわなければならないので、とにかく経験値を積むことを心がけました。
自分自身が経験したことのない仕事が周りで起きていたら、それを「今何が起きているのですか」「それってどういうことですか」「なんの目的でこの処理を入れているのですか」と聞くことで、実際に経験したことのない業務でも経験値を少しでも高めようという努力をしました。
そのことにより、誰に情報を取りに行けばよいかがわかるようになりました。

また、専門性だけが高くてもよくないと感じています。
皆様の周りにこんな人はいませんか。専門性は高いけれども、とっつきにくい人や、聞いたことに対して2倍になって文句を言ってくる人がいると思いますが、そのような話しづらい関係性のなかでは、部下は大事な確認や相談をせずに、大きな事故につながりやすくなります。
そこで、こんな恥ずかしいことを聞いても怒られないだろうと思ってくれる関係性が大事だと思います。本当に聞きづらいことを相手が聞いてくれたときは「よく言ってくれたねぇ」「これを質問してくれるのは大事だよ」というように相手を承認することを心がけました。

この記事を読まれている指導者の皆様には、ぜひ、仕事を教えるときには相手がどこまで理解したかアウトプットさせる機会を作ってあげてください。
そして、アウトプットは可能であれば、小さな火傷をするくらいの現場経験を与えてあげてください。現場で体感したことが血肉になり身についてくると思います。
今仕事を覚えている最中の皆様は、ぜひ上司にアウトプットする相手役になってもらってください。「私の理解が合っているか確認したいのでお時間をもらえませんか」「ロープレ役をしてもらえませんか」などと声をかけてみてはいかがでしょうか。


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