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会社員 女性 2013-04-12
大学を卒業して最初に入社した会社での出来事です。
4月に入社して、すぐに新入社員研修が合宿形式で行われました。
内容は、社会人としてのマナーや電話応対、来客対応、自社製品の知識などのほか、業務で使うパソコンの操作方法など。講師は、マナーや電話対応は総務担当者、製品知識は工場のスタッフ、パソコン操作は取り引きのある電機メーカー社員など、それぞれの得意分野を活かした面々となっていました。
さて、情報関係の部署に配属された私は、数年後、社内に新しいシステムを広めるためパソコン操作の社内講師を担当することになりました。10名程度に操作方法を教えるパソコン教室の講師のイメージです。
それまでは部内の伝票起票や雑務など、総務的な業務しかしていませんでしたので、いきなり講師をしろと言われても、何をどうしていいのかさっぱりわかりません。
とりあえず、メーカー主催の「インストラクター養成講座」に参加し教えるポイントなどは少し学んだのですが、実際の生徒は上司や先輩、時には役員など......。常に敬語を使い、一歩引いて、と意識しなくてはなりません。「教える」というだけでも不安なのに、さらに、普段はほとんど接点のない諸先輩方と向き合わなくてはならない、という不安でいっぱいになりました。
そんなとき心強いパートナーになってくれたのが、新入社員研修時にパソコン操作を教えてくれた電機メーカー社員のAさんです。
Aさんは、システム設計の担当として長い間わが社で作業をしていたのですが、私の講師デビューが決まってからは、私の先生として研修の準備や進め方、テキスト作成などの指導担当になったのです。
Aさんにとって私は重要な顧客であり、同時にOJT対象者。教える側として、なかなか言いにくい面もあったのでは、と思います。もしトラブルを起こしたら顧客を失う可能性もある。しかし、教えることはしっかり教え、結果を出さなくては......。
Aさんは通常はとても穏やかな性格ながらも、私の良い点悪い点をはっきりと指摘してくれました。
最初のうちはとにかく緊張してしまい、毎回同じテンポで進めていたのですが、そのうち、その日の人数やレベルに合わせるように指導されました。
初心者にはゆっくりと同じことを何度も繰り返し操作させ、とにかく慣れさせること。一方、応用編の受講者には、まず機能の説明を簡潔に行い、あとは演習中心で実践力をつけさせること、など。
なるほど。毎回きっちりと同じように進めなくてはと思い込んでいたのですが、それでは受講生の満足は得られません。指摘されてはじめて気づかさせることばかりでした。
研修では、私が前でプログラムを進め、A さんは後ろから進行を見守ったり遅れがちの受講生を個別でサポートしますが、まだ慣れていないころ、私の説明が非常にくどくなったときがありました。パソコンの仕組みについて説明しようとして、他のことを例に出したら、そっちの説明が長くなり、元に戻れなくなったのです。
目の前に座っている受講生はあきらかに退屈しているのはわかっていたのですが、すでに自分では話の流れを止めることができなくなっていました。どうしよう......と焦りながらも、このまま進めるしかないのかな、とふと後方にいるAさんを見ると、いつも穏やかなAさんの表情が、この時ばかりは強張って青くなっています。そして私と目が合うと「ダメです」と言わんばかり、首を横に振るではありませんか。
そんな表情のAさんを見たのは初めて。
慌てて長い説明を無理やり切り上げ、なんとか通常の進行に戻れたのでした。
数年後、私は結婚退職となるのですが、それまでAさんと私のペアで進めた研修は延べ1000回を超えました。
悪い点を指摘されることも多かった中で、最後の研修後「とても良くなりましたよ」とニッコリ笑顔でお褒めの言葉をもらい、それが退職する私にとって何より嬉しいはなむけになったことを思い出します。
通常のOJT期間は半年から1年間位が多いのですが、このときの私は数年間OJTを受け続けていたことになります。
今思えば、非常に恵まれた、贅沢なOJTでした。
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