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製造 (男性) 2009-03-31
以前、私はある製造ラインのプレス職場で主任のような立場にいました。
ある製品の試作を行ったときのことです。それは今まで経験したことのない大きさの製品だったのですが、普通の試作と同様に対処することにしました。
製造ラインの設定が終了しプレスが開始されました。すると想像以上に状況が悪く、何をやっても全くダメで、2〜3時間たっても製品に傷が入り良品ができず悪戦苦闘してしまいました。時期が夏だったのもあり、現場は非常に暑くなっていました。とりあえず作戦会議を行うため、ラインを一時止め会議を行うことにしました。
私は過去の経験をもとに対策案を2〜3案提案しましたが、どれも期待が薄いもので、手の打ちようがなく困ってしまいました。他の参加メンバーからもアイディアはなく、会議は硬直しそうでした。
するとそのとき、後ろで参加していた課長が、
「うん、その案で間違いないね。やってみよう!」と言い出したのです。
その発言を聞き、とりあえずもう1度やってみようということになりました。しかし......まったくダメ。すぐに策はつき、課長には「もう良品ができないので、他の品種に切り替えましょうか」と提案しました。すると課長は、この非常に暑い現場に椅子を置き、1時間程度現場を凝らして見て、調整作業を開始したのです。
その作業自体は課長でも簡単にできるものではあったのですが、操作は必ず私にさせました。そして、感度がないと戻すことを繰り返して、1つひとつきっちり効果を確認していきました。
「**君、これをこれだけ上げて」
「**君、これをこうして」
このプレスラインというのは、温度の関係上、すぐに効果を確認することが難しいものです。ちょっとの間よくなっても、数十分後にはなぜかまたダメになるということもよくあります。無責任な人は暑い現場から逃れたいのもあり、少しよくなるとすぐ事務所に帰ってしまうことも少なくありませんでした。しかし、課長は効果を確認し本当に納得するまで居座り続けました。
時間がたつにつれ皆は徐々に帰宅し、最後は私と課長とだけになってしまいました。いつしか調整を繰り返すうちに私もアイディアが出るようになり、相談しながら進めることができました。最後は完全ではありませんが、良品がぼちぼち取れ出しお客さまに収める品物は取れるようになりました。
時間は、すでに朝の6時頃になっていました。
制服は、汗が乾いて塩の白色がうきでるほどでした。かなりくたくただったので、30分程度事務所で仮眠を取った後、皆が出社し始めてきました。
朝のミーティングでのこと。(毎朝のミーティングで昨日の報告をすることになっていました。)
てっきり課長がこれまでの出来事を報告すると思いきや、課長はすべての報告を私にさせました。誰もできなかったことを1日がかりで行ったこと、そして何とか良品を取ることができたこと、それらを報告できることがとてもうれしかったです。
後でこの1日の流れを振り返ると、もし、あの会議のときに課長が嘘でも「やってみよう」と声をかけていなければ、きっと何も実行せず考えてばかりで、問題を解決することはできなかったのではないかと思います。
本当に自分でできることをすべて行ったのか?すぐに簡単な方法に逃げる前に、最後までやりつくしたか?など、何よりも1つひとつ確認してあきらめず、進めていくことの大切さを痛感しました。いつしかこの課長のように率先しつつも、部下を同時に指導していけるようなリードの仕方を身につけていきたいと心がけています。
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