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アパレル店長/(女性) 2009-01-27
私は、短大を卒業後、自分の好きだった服飾メーカーに販売員として入社しました。
店頭に立つ前に、2泊3日の新入社員研修があり、そこでは会社の理念、社風などを学びます。研修の最終日に配属先の店舗が発表され、販売員に必要な接客マナーや業務内容については、配属先の店舗で習うことになっていました。
販売員の主な仕事は、接客(販売)、ストック(在庫)管理、品出しの3つです。
研修後、私は都内近郊店の5名体制の店に配属されました。最初の1週間は店頭に立ち、簡単な案内と商品の展示場所を覚え、接客の基本を学びます。
その後、商品知識を学ぶ目的として、ストック整理と接客のロールプレイングを行い、販売員として一歩を踏み出し始めました。
そうして、配属日から数日が過ぎ、仕事や職場の雰囲気にも慣れてきた私は、自然な笑顔で接客や案内ができるようになってきました。
やがて、店長から本格的に業務を任されるようになってきたのですが、その仕事の中心はストック品と書類の整理でした。整理が苦手な私には任された業務に楽しみを持つことができませんでした。そのうえ、この頃の私にはストック整理の本当の意味をまだわかっていなかったのです。
ある日のこと。
私が整理したストック棚を先輩のAさんが見て、
「どうしてあなたはこのような整理しかできないの?売り逃しになるよ!」
と一喝されました。
自分では一生懸命に整理したつもりだったので、この一言にはくやしさと"なぜこれではいけないのか?"という疑問が浮かびました。
それから数日たっても、Aさんからはストック整理の合格点はもらうことができません。私のモチベーションも下がる一方です。厳しいAさんの指導により、私は販売することにすら楽しみを持つことができなくなっていました。
そんなAさんですが、いったん仕事を離れるととてもやさしい先輩。私は、"Aさんはただ厳しくしているのではなく、何か理由があるのでは?"と思うようになりました。
それから間もない週末の日のこと。
私が接客したお客様が、店頭に並んでいる商品を指差し、展示品ではなく在庫品(ビニールに包装されたもの)であれば購入したいと言ってきました。私は、在庫棚に行き、同じ商品があるか探しましたが、その商品は棚にはありませんでした。結局、そのお客様は何も購入せずに店を出て行きました。
その日の閉店後、売上入力を終え、POS上で在庫を確認すると、先程のお客様が購入しようとしていた商品は店にあることになっていました。
実際に棚を探してみると、奥のほうから......。
このことをAさんと店長に報告したところ
「だから言ったでしょ」
とAさんにあきれた口調で一言、言われてしまいました。
このとき、初めて私はストック整理の重要性を実感しました。
ただ整理するだけでなく、誰が見てもわかりやすく整理し、すぐにお客様の要望に応えられる状態にしておかなければならないことを知りました。また、棚をひと目見て、売れるもの、売れていないものを把握し店頭に立つのが販売員だということも同時に教えられました。
その日の帰り、Aさんに
「今日のことでわかったでしょ?ストック整理は大切なんだよ。実際にこういうことがないとわからないんだけどね」
と言われてしまいました。
思えば、Aさんはこれまでも何度も私にストック整理の意味やヒントを教えてくれていたことに気づきました。また、自分自身が理解しないかぎり、仕事全般への応用は利かないということもAさんは厳しさの中にやさしさを持って教えてくれていました。
以降、在庫整理をするときは、より見やすい状態にするために商品の場所を入れ替え、店頭に立ったときは売れ筋の動向を意識しながら接客するなど、販売の仕事を楽しめるようになりました。
そればかりか、将来私が先輩、店長になったとき、Aさんのような指導ができるスタッフになりたいという目標を持つこともできました。
数年後、私は店長に昇格し、売上管理から店舗スタッフの育成など仕事の幅も広がりました。Aさんから教わった「厳しさの中にやさしさを持って指導する」をモットーに、会社から表彰されるような店をつくることができました。
今、私は販売の仕事から離れましたが、Aさんに教えてもらったことはどんな職場でも通じることだと思っています。
※POS(Point of sale) 販売時点情報管理。
販売時に販売活動に関する情報処理を行うこと。
商品名や価格、数量、日時などの販売実績情報を収集し、売上管理・在庫管理などを自動的に行うことができる。
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