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フードスタイリスト(女性) 2006-12-11
私はフードスタイリストという仕事をしている。一見、横文字の響きからか華やかな職業を想像するかもしれない。ところが実際はとても地味な仕事である。
例えば、雑誌の撮影現場で料理にあう器やテーブルクロスを選ぶ。から始まり、料理のつやを出すために絵画の如く絵筆でオイルやみりんを塗る。またある時は、テレビ番組の舞台裏で時間と戦いながら料理をつくる。などなど......。いわば料理界の何でも屋さんである。
私自身食べることも作ることも大好きなので苦とは思ったことはないが、イタリア気質の大雑把な私には、ちと神経を使うデリケートな部分を往々にしてもつ仕事でもある。その大雑把さが吉とでたり凶とでたり......。
'人生はプラスマイナス0で終える'という一節を聞いたことがあるがこれは本当かもしれないと思うことがこの仕事をしているとよくある。
さて、そろそろ本題に入るとしよう。この話はつい最近仕事上で起こった出来事である。
某食品会社からの依頼でテーマに沿った料理を作り、何カットか撮影した写真とレシピを提供したときの話だ。締め切りに少し余裕をもっての提出。『さて、次の仕事にとりかかろうか!』と思った矢先、電話のベルが鳴った。担当者からだった。
「いくつか不明な点があるので教えていただきたいのですが......」とのこと。『不明な点??』私は提出した資料を片手に何やら焦る担当者からの質問に静かに耳を傾けた。すると、
「不明なのは〜......マッシュルームの薄切りとは何ミリですか?」
「食べやすい大きさとはどれくらいなのですか?」
「トマト水煮缶はホールタイプですか?それともカットしてあるものでしょうか?」
『......えーーーーい!!どうでもいいわぁ!!!』と言いたくなる瞬間だ。確かにお菓子ならば、出来上がりを大きく左右するので計量に温度管理と気をつけなければならないことがたくさんある。だが、こと家庭料理に関して言えば、押さえるところさえ押さえておけば全くもって問題はないのだ。基本さえ押さえればあとは変幻自在!!いくらでも応用は広がり自分色にアレンジするのも何か宝物を見つけたような楽しい気分になるものではなかろうか?
おいしい料理を作るには、経験やテクニックも時には必要だ。しかし一番大切なのはハートだと私は信じて疑わない。例えて言うならば、イタリア人がどんな高級リストランテよりも「うちのマンマの味が一番だ!!」と豪語するのもまさにマンマの料理には愛情というスパイスがたっぷり込められているからなのだ。私はこう思いながらも一呼吸おいて、ところどころアバウトさを強調しながら彼らの不明点とやらに答えた。するとその担当者がこう言った。
「料理はおっしゃる通り結構アバウトでも何とかなってしまいます。ですが、読者の中には初心者やそのアバウトが苦手な方もおられますので......」
私はふと我にかえった。『そうだ!』'基本さえ押さえていれば!'と思っていたがその基本がない人も対象なのである。アバウトにできるようになるにも、その基本があってしかりなのだ。傲慢であった。『そんなどーでもいいことを不明点と言い、一大事かのように問いつめてくるとは......。』と思っていた私が浅はかで一番大切な基本を忘れていたのだ。何事においても精通すればするほど基本が当たり前のこととなり、ついおろそかになりがちである。しかし実際は、その基本たるものが物事の明暗をわけるのである。私の周りでも基本に忠実な人は成功しているように思う。
'初心忘れるべからず'この格言を新人社員さんに教えられた出来事であった。
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