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ゼロからの新人研修

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SE(男性)  2006-06-15

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ゼロからの新人研修

僕は、入社したての新入社員です。
現在は、4月から始まった3カ月の研修期間で、プログラミングの基礎を学んでいる真っ最中です。 文学部出身の僕は、SEとしての技術やプログラミングの経験はなく、全くのゼロからのスタートでした。会社としては、よけいな知識がないほうが育てやすい、 ということで文系出身者を含めた採用を行なっていました。 適性試験に合格し人事の人柄に惹かれた僕は、「この人がいる会社ならやってみよう」 という気持ちで入社したのです。

さて、研修が始まると、最初はまずパソコン内部の部品の名称を覚えることから始まりました。次に、それらのどの部品がどこからどんな命令を取ってきて、 それをどこが処理するのか、ということを勉強しました。僕にとってそれは予想どおり未知の領域で、出てくる単語の意味すらわかりませんでした。 初めて出会う知識に慣れるための1カ月を必死になって乗りきると、いよいよパソコンを使ったプログラミングの実習がスタートしました。
焦ったのは、コードの書き方などの簡単な説明を受けた後にさっそくその場で課題が出されたことです。初めての外国語に出会ったときのように、 もはや右も左もわからない僕は、何から質問すればいいのかもわからず、「いったい何をすればいいの?」と同期のA君にすがりつくように聞きました。 ここからが僕の、「教わること」です。

そのときの課題は、「硬貨を入れたらタバコが出てくる自動販売機」でした。課題の文章だけを目にしたとき、頭の中がまっっしろになりました。 なにから手をつけて、 どういう考え方をすればいいのかが、まるでわかりません。助けて!という叫び声が心のほうから聞こえて、 プログラミング経験者のA君に、大きな?マークを震える気持ちでぶつけました。
「いったい何をすればいいの?」と聞くとA君はこう答えてくれました。
「何がしたいのか、よく考えてごらん」
まるで質問の答えにはなっていないのですが、これは落ち着くのにとても効果的だな、と焦りながらも僕は深く感心していました。 この言葉を聞いて、まずは問題を読んで、意図を理解しよう、という気になったのです。 それで落ち着いて、問題を読んでから、 「"硬貨を入れたらタバコが出る"ためにはどうすればいいの?」と聞きました。 どうすればいいのかはそうそうわかりません。
するとA君は、「まずは何が目的なのかを考える。 次に、そのためにはどんな情報が必要かを考える。そのあとに判断を考えるんだ。この場合の目的は?」と聞いてくれました。
「タバコを出すこと」と僕は答えました。
「ということは何が気になる?」
「タバコの値段」
「タバコを出すにはどうすればいい?」
「コインの金額を数える」
「もしその値段を超えたら?」
「お釣りが出ます」
というやり取りを交わすと、僕は「なるほど!」と思いました。
コインを入れたあと、気が変わって買うのをやめた人のことを考えていた僕の頭の中に、 やるべきことがスラッと並べたてられて、気持が良いくらいでした。僕はそれらを紙に書き並べて、 線でつなぐと、わかりやすい大きな流れのフローチャートができあがりました。

そしてそのあとはスラスラと......
というわけにもいかずに、頭がゴチャゴチャとしてくるたびにA君に相談しました。 A君は必ず、答えを直接教えることをせず、「答えを見つけさせる」質問を返してくれました。 その質問には必ず「何が、何によって、どうなる」という流れがあり、僕はその考え方のクセをだんだんと理解することができました。 結局最後まで付き添ってもらったものの、その課題はあとから見返しても解りやすい簡潔なものに仕上がりました。

A君は3年間、中学生の塾の講師をしていたそうです。「人にモノを理解させるには、中学生(小学生?)に話すように」 というどこかで聞いた言葉が、間近で実感できた体験でした。


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