« Back | OJT体験談 INDEX | Next »
食品製造販売業(男性) 2019-04-11
私は、今の会社に16年ほど前に転職。前職と業種は全く違いましたが、仕事の内容は通販で売るものが変わっただけでしたので、ある程度皆から評価される実績を残しました。
会社の規模が大きくなり、専門のお客様対応をする部署が必要だろうとの判断で、新規事業として「お客様相談センター」的な部署の立ち上げを任されました。
もちろん一人では無理でしたので、人事にもう一名どこかの部署から回して欲しいと依頼しました。
そうはいってもどこの部署も人が余っているわけではなく、さらに優秀な人材を手放すはずもなく、結果的に私の部署に来たのは、中途入社5年目くらいで40歳半ばの技術職の男性。社内では「使えない」という評価で3部署をたらい回しにされていたということは後から聞きましたが、仕事ぶりなどは全く知らずに迎えました。
「お客様相談センター」と言いつつ、社内のVOCの取りまとめ、そこからの改善に向けた各担当部署との打ち合わせ、SNSのアクティブサポート、市場調査など求められている業務は幅広く、二人でどのように仕事を進めるかじっくり話し込んで、とりあえず分担して新しい仕事をスタートしました。
やりだしてわかったのですが、彼は今までずっと研究開発室や工場製造現場での仕事がほとんどで、お客様と接した経験がありません。歳もそれなりで立場的に課長職でしたが、接客的な仕事はほとんど出来ません。しかし部署の大命題はCS、お客様満足なのです。
毎日隣に座って業務を行いながら、業務報告を聞いたり、作成したレポートを見ると、自分の中でものすごい違和感が......。
彼は、地元ではNo1の大学の理学部を卒業して、前職も上場企業の研究開発にいたレベルなので、レポートの内容は細心精到。しかし、どこか評論家風の他人事で、違和感の原因は、その先にお客様の顔が見えていないことだとわかりました。そのような状態で、現場の販売員さんやお客様とのやり取りをすると、すぐに気づかれ信頼を失うのは、過去の経験から間違いありません。
彼に、我々の給与は、お客様からいただいているのだということを肌で感じてもらうにはどうすればいいか......を考えて、業務時間の半分は店舗や通販の現場に行き、実際にお客様とじかに触れあってもらうことにしました。
最初はプライドもあるのか、いまいち「喜んで!」という状態ではなく、ほとんど嫌々という感じで笑顔もなく、現場からは「あんな人をよこしてもらっても困る」という声も聞こえてきました。ただし彼を成長させるには、現場経験しかないと思い、私も一緒になって現場に立ち、笑顔の接客を体を張って見せてトークもいろいろ教えました。これで馴染んでくれると思ったのですが......。
彼から「こんな仕事は今までの経験も生かせず、つらくて苦痛です」との申し出が。多分今までもそのような姿勢で仕事をしていたので、ダメと判定され、たらい回しされていたのだと思われます。ここで私が見放したとすると、次の部署はあるのだろうか?と思い、最後のアドバイスをしました。
「苦しいから逃げるのではなく、逃げるから苦しいんだ」
「学生とか子供ならしたくないことから逃げるようなことも許されるかもしれないが、社会人も中堅どころで管理職にもなったら、逃げきることは無理だろう。だったら最初から逃げないと決めて取り組んだらどうだ」
その翌日から、何か吹っ切れたような姿勢で現場に立ち、お客様と笑顔で接したり話したりするようになりました。多分相当無理はしていたのかもしれませんが、自分なりに何か楽しさを見つけようと頑張っているのはわかります。
「先輩は何が楽しくて今の仕事してるのですか?」と聞かれたので、私は自信をもって「お客様の笑顔が見たいから」と答えると、「喜んでもらうにはどうすればいいのでしょう?」と聞かれたので「自分がされたらうれしいことをお客様にすればいいだけ」と教えました。
もともと頭はいいので、彼なりに考えて相手を笑わせる商品説明のトークを考えたり、後でお客様に感謝の手紙を書くようになり、その反応がお客様から帰ってくると、私に自慢して見せるようになりました。
その後の彼のレポートの向こうには、お客様の顔が見えるようになり、現場からも少し信頼された様子。何よりお客様の笑顔を喜んでいる彼の姿で職場も明るくなりました。
この春、うちの部署にもう一名女性を迎えることになりましたが、その研修は彼に任せてみようと思います。
書いて残せる「OJT実践ノート」新人を育てる確かな方法があります。
新人の成長を記録し、OJTを活性化させる「OJT新人ノート」
「OJT実践ノート」の概要をビデオで解説します。
新入社員受け入れのためのOJTリーダーを育てます。
OJT指導の見直しに効果的です。
研修の副教材や内定者向け教材としてご活用ください。