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予備校アルバイト(女性) 2011-08-02
公務員試験予備校で論文添削や答案復元のアルバイトをしていますが、この時期になると筆記試験が一段落し、面接の準備がスタートします。その一環として、面接シートの添削を行います。面接シートは面接の参考資料として使われるものですが、面接前に試験官が目を通すこと、面接以外でも評価の対象になることから、ここで手を抜くことは命取りといえます。
面接シートの添削は通常の答案とは異なり、添削者と受講生が面と向かって行います。受講生が自分で作成してきたシートをもとに、添削者が気づいたところを指摘していきます。時間が限られているので、もっとも深刻な欠点は何か、重点的に伝えるべきことは何かを意識しながら、よりよいシートになるようその人に合わせた指導を行います。その際、受講生をいくつかのタイプに分けられることに気がつきました。
志望動機を例にして考えてみたいと思います。志望動機は面接シートの要となる部分です。というのも、受験を決意した本人の思いに関わるものであり、これがしっかり書ければ、面接はおのずと明るく前向きなものになっていくからです。ありがちな志望動機では試験官の心に響きませんが、独りよがりになるとかえってマイナスの印象を与えてしまいます。そこで、「具体的な出来事は何かあったの?」、「もう少し広い視野で○○の仕事をとらえてみたら」といった投げかけを行い、軌道修正を図ります。
受講生の傾向の1つめは、スマートタイプ。こちらの言ったことをすぐに理解し「こういうことですね」と即座に代案を出してくれる人たちです。これは、添削者としても楽ですし、内心こういう子が採用されるのかな、と思わされます。しかし、芯がきっちりあるかどうかの見極めが必要です。単に口がうまいだけでは試験官に見破られてしまうため、答えづらい質問を繰り返して細部を詰めていきます。その過程で矛盾したり、ボロが出たら、「面接関係なくていいから、正直なところを言ってみて」と促し、もう一度ゼロから考えます。聞こえのいい言葉より、自分の本当の気持ちに根を張った言葉のほうが、説得力が格段に増すからです。
2つめは、頑固者タイプ。こちらの指摘に対して「自分はそういうつもりで書いたのではない」と言って変えたがらない人たちです。ここでポイントとなるのは、なぜ今のままではいけないのかを理解してもらうこと。そのためには、相手の気持ちを受けとめなければなりません。まずは相手にとことん思いを語ってもらいます。それを踏まえて「なるほど、行政に対して○○を生かして貢献したいんだね」と言い換えて相手の同意をもらってから、「でも今のままだと、むしろ××に興味があるように見える。試験官の目線に立って読み直してみて」と言ってみます。たいがい難しい顔をして「そうですかね」と渋ることが多いですが、ここは待ちが肝心です。受講生自身に納得してもらえないと、次の段階に進めません。
3つめは、おねだりタイプ。何を言っても「じゃあ、どう変えればいいですか?」とこちらに求めてくる人たちです。まずは自分がしたいことを書いてと言っても「××がいいけど、でも○○にしたほうが受けがいいですよね」、「今の状況だと○○が印象がいいですよね」と相手に合わせようとします。こちらの指摘もうんうんと聞いてくれるのですが、それを踏まえて自分なりに考えてもらうのが大変です。中には数日経ってからの指導で、指摘した点が直っておらず「どう直したらいいか聞きにきました」という人もいます。こうしたときは、もっと大きなイメージの話をします。「○○と××のどちらかを選ぶのではなくて、××も○○の袋の中に入れられるんじゃない?」だとか「××がきっかけとなって、今は○○への興味につながったのかな?」と関連付けて、相手の興味を明確にしていきます。最後は「今日話したことを踏まえて考えてみて」と問いを持ち帰らせます。
大胆にグループ分けしてみましたが、結局のところ、受講生の1人ひとりが異なる経歴と思いをもってここに来ているわけで、実際の対応は十人十色です。また、受験する試験の種類によっても違ってきます。
どの場合でも気をつけているのは、私自身がどこまで手を差し伸べていいのかという点です。私の中では「こう変えればいいだろうな」というイメージはできているのですが、それを伝えて書かせてしまったら、相手の志望動機ではなくなってしまいます。だからこそ、指導にあたって一番強調するのは「自分の気持ちに素直に、正直に話して/書いてください」という部分です。この部分があれば、常に文章を自分の気持ちと照らし合わせて、自分なりに問い直せるからです。
時間内に相手が書き直すところまで到達しないときは、仕方なく「一案として」文例を教えますが、理想はそれをもとに推敲して消化してもらうことです。納得できる志望動機が書ければ、結果が採用であれ、不採用であれ、その後の糧になるのではないでしょうか。予備校という性質上、1人でも多く合格・内定させる必要がありますが、やはり自分なりの志をもって巣立ってもらいたい。そう思って指導しています。
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