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製造業(男性) 2022-06-17
某製造会社で新入社員の教育担当をしています。
今年も新入社員たちが工場研修へやってきました。まだまだ見た目は学生のようです。その初々しさは、工場の中ではとても目立ちます。
私「おはよう」
新入社員「おはようございます!」
私「安全に気をつけて、頑張ってね」
新入社員「はい!よろしくお願いいたします!」
シャキッとしてて良いですね。返事も素晴らしいです。
私「最初に安全に関する講義があるから、ついておいで」
新入社員「はい!」
新入社員には、最初に工場の安全ルールを教えます。
走ってはいけないよ。機械を勝手に触ってはいけないよ。工場内で通路を横切るときは、横断歩道を渡ってね。
まあ、あれですね。いわゆる「普通」のことです。
でも、この普通のことが、だんだんとできなくなるのです。
<1カ月後>
先輩「おい、ちょっといいか」
私「はい、どうしましたか」
先輩「新入社員たちだけど、横断歩道を渡らずにショートカットしていたぞ」
私「はい。わかりました。注意しておきます(今年もか......)」
問題の横断歩道は、確かに不便な場所にあります。10mほど遠回りしなければならず、ちょっととはいえ、これが面倒といえば面倒です。
もちろん社員の大半は横断歩道を渡るのですが、工場には数百名の人が働いており、残念ながら何人かはルールを破ってしまう社員もいるのが現状です。
そういう人が、例えばたまたま目の前で2、3人続いてしまうと、自分も別にいいのかなと解釈してしまうんですね。なんてったって、そのほうが楽ですから。
私「面倒でも横断歩道は渡ってね。ルールを破ると、いつか怪我に繋がるよ」
新入社員「え?あ、はい......」
もちろん、横断歩道を渡らなかった彼には注意しておきます。気持ちはすごくわかるけど、怪我をさせるわけにはいきません。
<2カ月後>
新入社員たちは、まだまだ見た目は新鮮ではありますが、だんだんと工場に慣れてきて、工場のベテラン社員Aさんとも気さくに話せるようになりました。
新入社員「おはようございます、Aさん!」
Aさん「おはよう!調子はどうだ?暑くなってきたけど、大丈夫か?」
新入社員「まだまだ大丈夫です。今日もよろしくお願いします!」
Aさん「おう!最近頑張っているな!今度飲みに行くか!」
毎年、工場のいろいろな人が、新入社員を飲みに連れて行ってくれます。この関係ができてくれば、こちらも見ていて安心です。さあ、そろそろ次の段階かな。試してみるか......。
工場で新入社員と私が一緒に歩いています。私は立ち止まって、ゴミを拾いました。
私「ゴミを見つけたら拾おうね」
新入社員「はい、そうですね」
家でもゴミが落ちていたら拾いますよね。同じ気持ちでやろうねってことです。そういえば、今メジャーリーグで大活躍の大谷選手も、グラウンドにゴミが落ちていたら拾ってらっしゃいますよね。さて、私のゴミ拾いを見ていた新入社員、どうするか......。
これが、なかなか真似しないんですよね。隠れて見ていると、まどろっこしい。そのゴミ、今、チラッと見たんじゃないの?なんでそこで拾わないのよ。横断歩道のショートカットは、誰に言われなくてもやるのになあ。お、前に教えたあいつは拾ったな。よしよし。
<3カ月後>
私「3カ月間、ご苦労様でした」
新入社員「はい!ありがとうございました!」
私「みんなが怪我なく実習を終えたことが、まず一番うれしいです。工場は危険がいっぱいだったでしょ」
新入社員「そうですね。フォークリフトもトラックも走っているし、機械も勝手に動いているし。皆さん、とても安全に気をつけて働いてらっしゃるなと思いました!」
私「そうだね。何があっても安全第一だよ。みんなもルールはちゃんと守れた?」
新入社員「そうですね。ちょっと破っちゃったとこもあるけど......」
私「一人でも破っている人を見ると、自分も守らなくていいのかなって思っちゃうよね。でもね、例えばゴミを拾ったり、置きっぱなしの道具を片づけてくれたりっていう一人を見ても、真似できないことが多いよね」
新入社員「確かに。その通りですね」
私「そういう、面倒なことも真似できるようになると、きっと自分にも良いことあると思うよ」
新入社員「はい!ありがとうございました!」
多少ヒヤッとする場面はあったりしましたが、今年も無事、新入社員たちを送り出すことができました。偉そうに言っている私自身も、毎年、こうやって新入社員からOJTを受けている面もあると思います。
今年も工場のOJTは終わりです。これから各配属先に向かう新入社員たちには、将来の後輩たちの悪い手本ではなく、良い手本として面倒なことを真似できるような人になってもらいたいなと思っています。
ちょっと面倒なことでもとても大切なこと、これを3カ月という教育期間でいかに習慣づけられるかが教育担当者である私の目下の最大の課題です。
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