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派遣社員(女性) 2011-08-31
最近ある雑誌で、女性の先輩が仕事を振ってくれないという悩み相談を見かけました。私にも似た経験があります。
配属された先では、入荷処理と出荷処理に関連する事務と、手が足りないところに駆けつける雑用がおもな仕事でした。自分と同じ職種は先輩のJさんしかおらず、私はJさんに指導してもらえるものだと思っていました。
しかし、何か仕事が発生するとJさんはそれを自分で片付けてしまい、私はそれをただ見ているだけでした。確かに簡単な作業を手伝わせてくれるのですが、仕事の段取りや流れを説明してくれるわけではありません。
Jさんは気さくで優しい人という印象で、お昼を一緒に食べているときは、和やかに話が弾みました。ただ、仕事中は会話がなくなり、私が何か質問したりわからないことを正直に伝えると鋭い口調で言い返される場面が何度かありました。私自身もふてくされることがありましたが、午前中や休憩時間はまた優しく接してもらえるので、どちらが本当のJさんなのだろうと思っていました。
そのうちに、自分がJさんの役に立っていないこと、職場の役に立っていないことが悩ましく思えてきました。仕事ができないと思われるのがイヤだというよりは、お金をもらっているのに、金魚のフンのようにJさんについて回っているだけの自分が情けなかったのです。Jさんにしても先輩として私を有効に活用する義務があるのではないか、という思いが頭をもたげてきました。
そこで、自分なりに仕事を学ぼうと思い、「次は検品作業ですよね」、「このダンボールは開けていいですか?」などと積極的に声をかけるようにしました。ところが、むしろJさんは迷惑そうな感じで、「違う」、「もういいから!」と切り捨てるような調子で返すので、私としてはどうしていいかわからなくなってきました。てきぱきと仕事を片付けるJさんの後ろ姿を見ながら、悪いと思いつつ心の中で毒づいてしまうことも正直ありました。
この頃は、Jさんは私が嫌いか、気に入らないことがあるのではと疑心暗鬼になっており、お昼の会話も苦痛になっていました。
そんな感じで悶々としていた頃、Jさんと帰り道が一緒になりました。そのとき、彼女が「こんなに忙しくなければいろいろ教えてあげられるんだけどね」と明るい調子で言ってくれました。私には、今の職場が忙しいという意識がなかったので、少し驚きました。Jさんが私に仕事を教えたいと思ってくれていることにも驚きました。
そういわれてみると、Jさんは仕事中は人が変わるように見えるけれど、それは必死になっているからかもしれないと気づきました。Jさんにとっては仕事がきつく、キャパシティをオーバーしかけているからこそ、口調がきつくなるのではないでしょうか。
それ以来、Jさんの負担を増やすことはしないようにし、負担を軽くすることを心がけました。作業を中断させることは控え、質問するときも細かいことを聞くのではなく、「私にできることはありますか?」、「何かお手伝いできませんか?」と聞き、特にないと言われれば、あれこれ言わずに黙って待つようにしました。自分の性格としては、その時間を活用して別の作業をしたいところなのですが、職場をウロチョロしてJさんの気を煩わせるのは、かえって良くないと考えました。むしろJさんが私に何か頼みたいと思ったとき、いつでも聞けるようにスタンバイしておくほうが大切だと感じたのです。
もしかしたらJさんとしても、うまく仕事を振れない自分に対する苛立ちがあったのかもしれません。それからは、仕事中もJさんのほうから声をかけてくれる機会が増えました。仕事を覚えられるか当初は心配していましたが、「見て習う」気持ちで長い間見つめていると、言葉で説明してもらうのと同じくらいに仕事を理解できたと思います。
雑誌に載っていた悩み相談への回答は、指示を待っていないで自分から仕事を見つけてやってしまおう、といった内容でしたが、もしJさんタイプの先輩だったらきっとつらく感じるだろうと思います。
仕事を効率よく覚えて早く一人前になることは大切ですが、時間をかけて先輩にとっての「いい後輩」になることも、仕事のうちなのかもしれないと思った出来事でした。
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