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ナビゲート[の] 2008-10-23
私この度、第48代組長に就任いたしました。
と言うと何やら緊張が走りますが、ようは町内会の当番ってことです。この町に越してきて3年、とうとう回ってきてしまいました。半年間だけの務めですが、はっきり言って面倒くさくてイヤな役目です。しかし経験上、そういう場合にストレスを感じずに済む唯一最善の方法は、「前のめり」になることと知っています。
というわけで、未熟者ながら組長にがっつり取り組む所存でおります。いったんそう覚悟を決めると、「組を守らねば!」という仁侠心もふつふつと芽生えてくるから不思議です。しかし、もしこの役目が「班長」とか「係長」とか、まして「当番」などという肩書きだったら、ここまで意気をあげるのは難しかったかもしれません。(「番長」はありかもしれません)
ところで前任者は、歳時記歳時記「隣人のこと」でもご紹介した"ただ者でない"おじいさんです。
今から半年前、「次は[の]さんの番ですから9月に引き継ぎをしましょう」と言われていたので、それまで無関心だった回覧板なども、多少注意して見るようにしていました。すると、内容によって回覧板がアレンジされていることに気づきました。
例えば、重要な用件については、最重要部分にマーカーを引いて一枚目に挟み、しかも予め開いた状態にして回します。緊急なものは「急!」とメモが添付してあります。趣味的な案内などはそのまま回します。そのように緩急がつけられているのです。
また、おじいさんは仕事が丁寧なだけでなく合理的でもあります。例えば募金のしくみ。従来は組長が各家を回って集金するのが慣例となっていました。しかし考えてみれば、本来募金は自由意思であるべきで、組長が集金に回るのもおかしな話です。各自が組長宅に持参するという方法も現実的ですが、組長が留守の場合は出直さなければなりません。そこでおじいさんが考え出した方法は(防犯上書けませんが)画期的なものでした。本人は「横着させてもらいましてなぁ」と笑ってましたが、なかなかどうして大胆です。
もっとも、組長は持ち回り制ですから、あまりやり過ぎると後任者にとっては迷惑だったりします。効果をあげながらもトータルでの負担を軽くする、これは理想的な改善でしょう。おじいさんの仕事ぶりはそのあたりの塩梅が実にほどよく、センスの良さを感じさせてくれます。
まったくあと数十歳若かったら、ぜひとも会社にスカウトしたいところです。
さて、人生初の組長としてOJTを受けたのは9月の最終土曜日でした。
地域情報に極めて疎い私のために、おじいさんはワープロで地図を作ってくれていました。
「[の]さんも初めてだから事情がわからんでしょう。せやからこんなん作ったんですわ。でも個人情報に触れますんで、他の方には渡さないようにお願いします」そう言って最初に差し出されたのは、手作りの地図です。ワープロでうまく描ききれなかった路地は、手書きで線が加えられていました。しかもローカルなプチ情報も添えられています。例えば玄関に大型犬がいるとか、用事はヘルパーさんに依頼するとか......。これを作るのに、恐らく相当時間がかかったことでしょう。私にOJTするためだけに......。
おじいさんは、まずこの地図を示しながら主な任務と組員事情を説明し、次に組長グッズを1つひとつ取り出して重要な順に紹介してくれます。しなくてもいいことや使わなくていいものも伝えてくれました。 また、一番厄介なのは集金なのだそうですが、居留守を使う人からどうやって会費を徴収するかというコツについて、狙い目の時間帯や押さえるべき場所なども伝授してくれました。
おじいさんも私と同じ時期に引っ越してきたので、組長は初めてだったはず。でも前任者から的確なOJTを受けていたわけではなさそうです。 「これについては前任者の方もわからなかったんですわ。でもいろいろ調べてみたら、どうやらこういうことらしいんです」そんな口ぶりから、就任時の苦労が垣間見られます。 この見事なOJTぶりに敬意を表し、もちろん私はセオリー通り、メモ&復唱の誠実さをもっておじいさんを安心させてあげたのでした。
この先、私がもしちょっとした工夫をしたら、他の誰もが気づかなくても、きっとおじいさんだけは気づくはず、そんな確信が持てます。普段ほとんど話す機会のない人ですが、「この人はきっと見ている」「この人はきっとわかっている」そう思えるのは嬉しくもあり、軽いライバル心も生じ、モチベーションにもつながるというものです。ビジネスの現場でも言えることですよね。
さて、新米組長としての活動はすでに始まっています。
先日、町内会費徴収という重要任務を無事完了し、初回覧版を回し、現在は赤い羽根募金の任務にたずさわっているところで、来週末は防災訓練です。ふぅ。
まだ始まったばかりですが、実は「回覧板を回す」というだけで、すでに2点ほど問題が生じてしまいました。まさか回覧板ごときに落とし穴があるとは......。あなどれないものですね。 そこで、後任の負担にならない程度のちょっとした工夫を施すことにしました。はてさておじいさんはどう感じるのか、「なるほど。[の]さん、なかなかやらはるねぇ。ふふふ」とそんな風に思わせたいものです。
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