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元OA機器メーカー(男性) 2007-10-09
前職を定年退職してから、いつのまにか半年以上が過ぎてしまった。
前の会社で印象に残ったこと何かありますか?そう聞かれたら、多分こう答えるだろう。
「最後の出勤日に、一人の女性社員から感謝の言葉が書かれた手紙をもらったこと」
それは、会社からもらった「感謝状」よりずっとうれしい"感謝の言葉"が書いてある手紙だった。
その人(女性)との最初の出会いは1993年。もう14年も前になってしまう。
勤めていた会社は、とあるOA機器(複写機・複合機)の製造メーカー。
当時はちょうど生産拠点が海外にシフトし始めたころで、国内の工場も規模を縮小することになり人員の削減が始まった。そのため、現場にいた人たちは仕事がなくなってしまった。
一方、私のいた部署は仕事の規模が年々拡大し、人員が足りない。そのような関係から、配置替えで私の部署へも多くの人が配属されてきたのだが、その中に彼女もいた。そして一緒に仕事をすることになった。
私がいた部署は自社製品の評価(テスト)をする部署。
仕事の内容は、パソコンと自社製品をつなぎ、実際の印刷データなどを流して「正常にプリントできるか」「動作などに不具合はないか」などを検証していた。
私はこの部署の中で、時々派遣社員の人に手伝ってもらうことがあっても実質一人で仕事をしてきた。しかし今回の配置替えで人員が増えたため、当然私が教える立場になった。
異動してきた人の中には、工場で製品の組み立てをしていた人もおり、その人たちにとっては全く未経験分野であった。もちろん?彼らはパソコンをさわった経験もゼロ。それゆえに、まずはパソコンの使い方から教えなければならない。その上で実際の仕事の進め方も教えていかなければならなかった。
次から次へと出てくる新製品を一定の期限内に評価を終わらせないといけない。
仕事(評価)は待ってくれないから、新しく人が入ってきたからといってゆっくり教育をしている暇などない。
「人材育成も上司の役目」というが、上司という意識もなく、(もちろん?そんな役職にも就いていない)人材育成がどうのこうのと言っているよりも、とにかく早く仕事のやり方を覚えてもらい、戦力になってもらいたい。それだけしか頭にはなかった。
今にしてみればそれがOJTというものかもしれないが、その時はそんな意識は全くなかったので、まともな教育資料なんていうものはもちろん準備していなかった。それに、何をどう教えて行くかもあまり深く考えず、計画も立てていなかった。
あるのは自分がやってきたことや、ここではどんなことをやっているのか、何をしなければいけないのかを簡単に書いた手順書のようなものだけ。あとは口頭で説明をしていくことになった。
人に何かを教える。そんな経験はそれまでほとんどなく、"人に説明してやってもらうより、自分でやった方が早い"そういった考え方をもっていたため、おそらくあまりうまく教えられなかったと思う。説明も下手だっただろう。だが彼女はどんどんと喰らいついてきた。
どこで、どんな時に言ったのか今となってはもう覚えていないが
「だって悔しいじゃないですか」
その言葉だけが今でも耳に残っている。
みんなができること・みんなが知っていること、それが自分ではできない・知らない・まだ十分に仕事ができない、だから悔しい・もっと知りたい・もっと覚えたい。たぶんそのような想いからその言葉がでてきたのだろうが、そのとき"あ!この人はすごい人だ"と思った。その印象が強く残っている。
その後、組織が変わったりして一時期疎遠になったこともあったが、それでも何度となく一緒に仕事をする機会があった。
一緒に仕事をするたびに成長し、新しい知識を吸収し、そして彼女自身でもずいぶんと勉強もしているようだった。もしかしたら、私以上の「知識」「ノウハウ」を身につけていたかもしれない。
手紙は「初めは、何もわからずご迷惑ばかりおかけして......」で始まり、「いろいろありがとうございました」で終わっている。
教えられたのは私の方だったのかもしれない。
彼女の言った「だって悔しいじゃないですか」その一言に励まされ私もがんばってこれたのだから。
ところで、その手紙は?もちろん大事にとってあります。
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