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教育ソフトウエア制作(女性) 2004-07-01
私は、上司や先輩から何かを教わったという経験はしているはずなのですが、心に残っているものは残念ながらあまりありません。
「教える」「教わる」ということとはちょっと離れるのですが、忘れられない先輩とのエピソードを書かせていただきます。
1994年3月のことです。私は、社会人教育をする会社に勤務していました。
部署は、企業内教育の企画をするセクション。頭脳明晰でいつも課員を守ってくれる頼もしい存在である反面、とてもかわいらしいといころもある女性の課長と、いつも温和な男性の先輩、「自分」をしっかり持っている女性の先輩に囲まれ、忙しいながらも楽しい環境で働いていました。
同じ所にとどまることをよしとせず、常に新しい教育方法や経営手法などに興味を持って勉強会を開くなどして、充実した時間を過ごしていました。
ところが、会社の業績が思わしくなくなったため、男性の先輩が突然リストラの対象になってしまいました。
課員を大事にする課長は激怒、女性の先輩は、以前から持っていた会社への不信感もあいまって、二人とも会社に見切りをつけ、リストラされる男性社員と一緒に辞めることになりました。
そうなると、もう私の所属していた課は課として成り立たなくなります。結果として、課は消滅、企業内教育の企画は営業担当者が兼ねることになり、私は、教材作成や受注管理の仕事をすることになりました。
それらの事務的な仕事は、以前からやっていたことではありましたが、「企画をする」という仕事は、私の中からなくなってしまったのです。
しかも、私はその年の5月に結婚式を控えていました。
当然のように、いつもお世話になっている課長や先輩を呼ぶ予定だったのですが、結婚する相手は同じ会社の先輩。相手が呼ぶ客人のリストには、同じ会社の部長や取締役の名前が連なっています。
そのため、課長と先輩からは「前の会社の人がたくさん出席するだろうから、私たちは辞退したい」と出席を断られてしまい、とてもさびしい気持ちになりました。
突然の課の消滅で、企画の仕事はなくなり、プライベートでも祝ってほしい方々が結婚式に出席できない、そんな打ちひしがれた気分で教材のコピーをとっていた時です。営業セクションの女性の先輩が私の横を通り過ぎるときに、肩をぽんぽんとたたいてくれました。
営業成績は常にトップクラスで、いつも周りをなごませてくれる明るく優しい女性です。気の利いた言葉はいくらでも言えるはずなのに、そのときは「あなたのつらい気持ち、よくわかるよ、がんばって」という目をして、何も言わずにうなずいて去っていったのです。
課がなくなってしまうとわかったとき、たくさんの方々が「たいへんなことになったね」「がんばってね」という言葉をかけてくれました。でも、それらの言葉は私の心には染みてきませんでした。
私の気持ちなんてわからないくせに、という思いがあったのだと思います。
私の心にいちばん触れたのは、無言で肩をたたいてくれた先輩のまなざしでした。
それは、私の気持ちを「わかって」「ちゃんと受け止めてくれている」という安心感を私にもたらしました。
私はそのとき、「人を励ますのは言葉だけじゃないんだ」ということを実感しました。
もし私に後輩ができて、その人がいたたまれない状況に陥ってしまったとしたら、軽々しく「がんばって」と言うよりも、まず気持ちをわかってあげよう、私はそう思っています。
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