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メーカー(女性) 2004-05-13
私は新卒で某メーカーに事務職として配属されました。
実家を離れ、初めての一人暮らしがスタートしたこともあり、
「これからは自分1人の力で生活するぞ」
「仕事をばりばりこなして稼いでいこう」
と意気揚々と東京のオフィスに向かって進んでいきました。
いざ目的地に到着し、まず迎えてくれたのは同じ課の先輩社員にあたるAさんという女性でした。右も左も分からない私を優しい笑顔で案内してくれたのは今でも覚えています。
真新しい制服に身を包みいよいよ社会人としての第一歩です。
この部署での新入社員は私1人だったこともあり、緊張しつつ朝礼で挨拶を済ませた後、いよいよOJTが始まりました。先程親切に案内をしてくれたAさんが私の担当のようです。
「それではまず、みんなのカップを覚えてください。朝・昼食後にお茶をお出しましょう」
「はい!」
「次にそれぞれの好みの飲み物がありますので覚えてくださいね。△△課長はコーヒーブラックで、××代理は......」
「......は、はい!」
「あ!役員の方がいらっしゃったのでそちらを優先でお持ちして!コーヒーブラックです」
「......は、はいぃ!」
慣れない私はメモ帳を片手に悪戦苦闘です。しかもこんなに大量のカップがあるなんて......。
お茶を入れる役員・部長・課のメンバー分を合わせたら合計20個以上になり、飲み物の好みもさまざまです。
これをまず朝出社したときに素早く出し、そして昼食後戻ってきたタイミングで出します。
普段は愛らしいカップのキャラクターもこのときばかりは憎らしく思えてきました。
なんとか頭を整理しつつ必死にまとめていたら、すでにお昼の時間です。 興奮さめやらぬ中ご飯を噛みしめながら、
「こんな仕事もあったのか......」と困惑したのを覚えています。
入社前に抱いていた、ばりばり仕事をこなす社会人のイメージがもろくも崩れていきました。
OJTも進み半年が経過し、ようやく担当の仕事ができたにもかかわらず例のお茶出しは続いています。 当時の朝の作業としては
定時の時間の40分前には出社。
制服に着替えた後、大量に送付されてくるFAXや資料を整理(課の人が定時から仕事が始められるように準備をします)。
その間役員・部長・課のメンバーが出社したらその都度作業をやめお茶を出す。
といった具合です。
始めは黙々とこなしていましたが、徐々に「なぜ私が?この時間を自分の仕事に回せたら......」という疑問がわいてきました。
とうとうそのわだかまりを抱えきれなくなりAさんにその気持ちを恐る恐る告げると、予想外の回答が返ってきました。
「これも仕事のうちと割り切ればいいのよ」
Aさんは新卒で社長室に配属になったそうです。そこではお茶だけでなく他の社員のお弁当を買いに走り回ったりしていたことを教えてくれました。
そこで「どこかで誰かが喜んでくれる。これも私の大切な仕事」と考えたそうです。
実に単純明快な答えでしたが、私にとっては大変衝撃的でした。
今まで私の仕事とは......と自分中心で考えていたことに対してほんの少し異なる視点から見ることができた瞬間でもありました。
それ以来不思議と自分の担当以外の事を頼まれても、全く動じなくなった気がします。
この1つの行動で喜んでくれる人がいる。
今思えば、お茶なんてものは各自が飲みたいときに飲みたいだけ入れるものだと思っていますし、 お茶は新入社員が入れて当然!という方も困りものだとは思います。
※人任せにするのではなく、ちょっと仕事場を離れてお茶を入れることもいい気分転換になるものです。
しかし当時はこのAさんの言葉1つで少し心の重みが和らぎました。 もちろんお茶だけではなくて生活全般においてこのAさんの言葉は教訓となっています。
お茶くみという仕事の是非はともかくとして、ほんの少しの心のゆとりで生活が変わってくるということを実感したOJTでした。
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