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弁護士事務所(女性) 2021-05-12
弁護士事務所の受付スタッフとして働きはじめた頃のことです。それまで事務所では複数の派遣会社を通して受付スタッフを雇用していましたが、人によってスキルやサービスにばらつきがあり事務所内外からの評価は芳しくありませんでした。そのため、業務拡大による事務所移転を機に私が所属していた派遣会社から即戦力となる人員をインソーシングして受付チームを置くこととなり、立ち上げ要員として私ともう一名(Aさん)が派遣されることになったのでした。
私はそれまで数社の企業で数年間受付業務を経験しており、Aさんは受付や営業、接客業の経験が豊富な女性でした。
移転後2カ月ほど経ち、スタッフも増員され、いよいよ新たなチームとして本格始動するにあたって、チームリーダーを置くこととなりました。
チームリーダーには、経験豊富でリーダーシップもあり私より年上のAさんが適任だと思いましたが、選ばれたのは私でした。
受付を管理する広報部いわく、「Aさんはリーダー職の経験もあるしテキパキしていて積極的だけど、〇〇さん(私)のほうが仕事が丁寧だし、真面目で信頼できそうだから。Aさんにはサブリーダーとしてサポートしてもらいましょう」とのこと。
Aさんに対し申し訳ない気持ちと、自分に務まるだろかという自信のなさで不安でしたが、選ばれたからには頑張ろう、と引き受けました。また、経験豊富なAさんがサブリーダーとして支えてくれることへの安心感も後押しとなりました。
業務は決して楽なものではなく、英語での接客や事務作業、クレームを含む代表電話対応、VIP対応、弁護士秘書のサポート、急な会食セッティングなど、スキルやスピード、柔軟な対応や忍耐力を求められる場も多く、また事務所内の人間関係にも神経を使う必要があったため、せっかく入ったスタッフがすぐに辞めてしまうということが続き、Aさんと私は頭を抱える日々でした。
せめてチーム内は人間関係を円滑にして居心地よくしたいと、私は新人スタッフへのOJT時にはできるだけフランクに優しく接するよう心がけ、一人ひとりの性格やスキルに合わせて教え方を変えたり、一方的に教えるだけでなく質問や意見が言いやすい雰囲気作りにも努めました。また、厳しくしすぎて嫌気がささないよう、多少のミスには目をつぶって自分がフォローしたり、難しい業務は代わって対応するようにしていました。
一方、Aさんは持ち前の明るさやユーモアを発揮して新人と打ち解けつつも、ささいなミスや勘違いに対しても厳しく叱責したり、複雑な業務を短時間でこなすよう要求したりすることがあり、私は「あれでは辞めたくなってしまうかも......」と内心ヒヤヒヤしていました。
ようやく新人スタッフも馴れはじめてきたので、Aさんと私は交代で初めての休暇を取ることにしました。
リフレッシュして業務に戻り、不在中のフォローに対するお礼をAさんに伝えたのですが、Aさんはムスっとして目を合わせず、一言も口をきいてくれません。わけがわからないまま、結局その日は全く会話ができずに一日を終えました。
翌日、ようやくAさんと話ができたのですが、怒っていたのは私の新人教育が原因だと判明しました。
「〇〇さんがいない間、何もできない新人のフォローに追われて業務が全然進まないし、それが原因で別のミスが発生したりして大変だったんだよ!一体何を教えてきたの?」
ハッとしました。チームの雰囲気作りにばかり心を砕き、一番大切で基本的な「即戦力となる人材を育てる」ことができていなかったのです。
OJTは行ってはいたものの、新人スタッフが実践する機会を奪い、そのせいでAさんに迷惑をかけていたのです。また、Aさんが新人に厳しく接することにより自分は悪者にならずにすんでいたことにも気づきました。
なぜもっと現状をしっかり見つめて適切に対応できなかったのだろう?と考えたとき、自分に自信がなかったからだと思い当りました。辞められたくなくて、嫌われるのが怖くて「理解ある優しいリーダー」を演じ、自分とも相手とも向き合うことから目を背けていたのだと思います。
チームのためと思ってやっていたことが自己満足、自己防護にすぎなかったことに愕然としました。
その後、試行錯誤を繰り返し、少しずつ真の意味での良いチーム作りができるようになっていきました。
わかりやすい研修マニュアルの構築、十分なコミュニケーション、快適な環境作り......どれも大切ですが、加えて「自分に自信を持ち、厳しい言葉も受け入れてもらえるような信頼関係を築くこと」がとても大切だと感じています。
人材を育てることは、自分が育てられることでもあります。これからも、自分と向き合い、自分も成長しながらより良いチーム作りを目指していきたいと思います。
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