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施設管理事務(女性) 2020-07-27
入社して数年が過ぎ、ようやく私もOJTリーダーとなって新人指導を行う立場となりました。もともと社内にはOJT制度があり、私も入社して1年間は、しっかりとOJTを受けました。当時、OJTリーダーから『OJT計画書』を渡されたときの緊張感と嬉しさは今でもよく覚えています。
社内サーバーに保管されている『OJT計画書』を確認すると、最後に他のスタッフのOJTで使用したのは3年前となっていました。システムや技術は日進月歩で3年前の指導項目のままでは不十分であったり、必要のない項目も混ざっていました。
まずは、指導項目の整理を中心に行いつつ、入社する新人(Aさん)のわずかな情報を頼りに『OJT計画書』を作成しました。社内のスタッフにも協力してもらい、万全にOJTがスタートしました。
Aさんは、他社での経験もあり何事も理解が早く、指導は予定よりも早めに進んでいきました。一見、順調そうに思えたOJTですが、OJTリーダーの私としては、コミュニケーションの面で悩むことがありました。
まず、気になったのはAさんの発言です。
OJTを行ううえで、Aさんはいつもはきはきと受け答えをします。その一方で、「これ非効率じゃないですか?」「これやる意味あるんですか?」そんな言葉をよく口にしていました。
「そうだね、長年このやり方が定着しているから、改善案があったら提案してね」と対応しつつも毎度ちょっとしたことにつっかかってきます。
最初は、社内のやり方が古いとも思われたくないので、なぜそのやり方をしているのかを自分なりに整理して、ときに上長にも相談しながら、Aさんの疑問に答えられるよう努力しました。ところが、日に日にAさんの挑発的な発言が目立つようになり、私はだんだんAさんに何か言われることに億劫になっていきました。
そして、もう一つの悩みは、Aさんの「報連相」の仕方でした。
Aさんは、社内の連絡手段でチャットをよく利用します。世代的にもメールよりチャットの方が慣れているということもあるかもしれません。チャットは便利ではありますが、これはあくまでも簡略化した連絡手段。やや長文になるようであれば、メールか内線もしくは対面で連絡をするのが一般的だと思います。
ところがAさんは、隣の席の私に対しても何かとチャットで連絡をしてくるのです。
ちょっと声をかけてくれればよいことがチャット経由となることで変な距離を感じ、またあるときは依頼していた原稿が長文で送られてくるなど、返答に困ることがありました。
仕事においては、てきぱきとこなすAさん。その姿は目を見張るものがありました。
そのため、コミュニケーションで多少違和感を感じても、これは私の受け取り方の問題であって他の人にとっては何でもないことなのかもしれない。あえて注意するほどのことではないのかもしれないと自分に言い聞かせ、AさんのOJTを進めていきました。
しかし、その後も違和感は解消されることがなく、心の中でモヤモヤが募っていきました。
ある日、Aさんの進捗状況を上長に報告したときのことです。
計画書どおり順調に進んでいると報告したあとに、思わず「実は......」とコミュニケーションで悩んでいることを打ち明けました。
親身に話を聴いてくれた上長からのアドバイスは、「コミュニケーションが円滑にできることは仕事を行ううえでとても大事なこと。あなたが感じていることは、Aさんのためにも伝える必要がある。伝えない限り、Aさんはずっと気づけないまま。新人のときに注意されずにそのまま過ぎてしまっては、今後、あとから直すことはきっと難しい」とのことでした。
上長のアドバイスを受けて、やはりAさんに伝えなければ!と決心した一方で、急に気が重くなりました。これまでもちょっとしたことを注意することでさえ、毎度気が重くなり、なぜこんなふうに感じてしまうのだろうかと自問自答を繰り返してきました。
結局のところ......、私は怖いのです。自分の発言に対して相手にどう思われるかということに。また相手の反応で自分が傷つくことにも。そのため伝えにくいことを伝えるということに対して躊躇してしまう自分がいます。
OJTリーダーとなった今、まさに私は自分の弱さと向き合わざるを得なくなり、「自分がどう思われるか」ということよりも「相手のことをどれだけ思えるか」ということの大切さを思い知らされました。
その後、Aさんとの面談の機会に上長のフォローも受けながら、これまで感じてきたことについて、言葉を選びながら慎重に伝えてみました。
するとAさんは、意外にも不機嫌そうな表情も見せず、「はい、わかりました」とすんなりと受け止めてくれました。まずは伝えることができたことにほっと胸をなで下ろし、今後、Aさんの変化を見守っていきたいと思います。
このような経験を通して、かつて自分に指導をしてくれたOJTリーダーも私に対してどこまで伝えるべきかと悩んでいたのかもしれません。そう思うと、惜しみなく指導をしてくれたことにあらためて感謝の気持ちでいっぱいです。Aさんにとって頼りになる先輩となれるよう私も日々努力していきたいと思います。
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