OJTコーナー

この春、入社3年目の女性総合職が異動してきました。
私の部署は住宅ローンを扱う営業部門。男性が多い職場のため、女性の後輩が増えることは大歓迎です。隣の席で電話応対をする彼女の受け答えを聞いていると、言葉も丁寧でなかなかしっかりしています。それもそのはず、彼女は入社以来、顧客からの電話応対を主業務とするコールセンター部門にいましたので、電話の受け答えはしっかりと身に付いているようです。
「電話の受け答えを聞いていたけど、言葉使いも丁寧だし、いいね。あなたの強みだね」
「ありがとうございます。新しい業務も頑張ります！」
住宅ローン業務、ましてや不動産業者や個人客への営業経験はないものの、明るくやる気のある彼女に私はこれからの活躍を期待していたのでした。

それから数日後。私の期待がもろくも崩れ去る出来事が発生しました。
ある法人取引先から、ローン申込書を5部程送ってほしいという依頼がありました。
隣にいる彼女は、ちょうど手が空いています。どんな取引先があるのかを把握してもらうためにも、彼女に対応をお願いすることにしました。
「この取引先に、申込書を5部送ってくれる？送り状を付けて、宅配便で送ってください。この紙に住所と送り先が書いてあるから、このとおりに伝票に記載してね」
「はい、わかりました！すぐにやります」
数分後。
「送っておきました」と、彼女から報告がありました。
「え？もうできたの？」
依頼してたった数分で、もうできたのでしょうか？送り状を作成して、宅配便伝票に送り先を記入して、申込書を奥のキャビネットから取り出して梱包する作業が、たった数分で終わるとは思えません。
念のため宅配便boxを見てみると、伝票の宛先欄には住所と個人名しか書かれていません。会社名・部署名が抜けています。送り主欄に目を移すと、そこには住所と会社名・部署名だけで、担当者名の記載がありません。
しかも、封筒の口に貼ってあるテープは乱雑な切り口になっています。私はその状況に驚きながら、すぐに彼女のもとに向かいました。
「法人に送るのに、宛先に会社名も部署名も書かないで送るなんて、失礼でしょ。それに、送り主欄に担当者名の記載がないなんて、相手に失礼だよ。送り状は付けてくれたのよね？」
「あ！送り状は付けていません。」
「え？送り状も付けないで送るなんて、本当に相手に失礼だよ。当社の信用を無くしちゃうよ。」
「すみません。すぐにやり直します。」
彼女は慌ててやり直し作業にかかりました。

入社3年目。法人取引先へ郵送物もまともに送れないなんて。新入社員でさえきちんとできることなのに。相手先が法人であれば、会社名・部署名を宛先に書くのは常識なのに。こんな常識も知らないなんて......。
私は心の中でこうつぶやきながら、彼女の活躍に期待を寄せていただけに、ひどく落胆したのでした。

私にとっては常識的なこと。でも、彼女にとっては常識ではなかったのでしょうか？
もう3年もキャリアを積んでいるわけだし、当たり前にできると思っていたことなのに......。いったい常識ってなんなのでしょうか？20代の彼女。40代の私。世代間ギャップもあるのでしょうか。

さて、これから具体的な業務を教えていくにあたって、私はどこからどう進めていったらいいのか、大いに悩んでしまいました。
皆さんは、こういう経験、ありますか？