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産業資材卸(男性) 2016-12-06
28歳のとき、新卒で入ったAさんのOJTトレーナーを受け持ちました。Aさんは真面目な性格で、最初はとてもやりやすかったと思います。
私達は、生産資材の調達部門で、各拠点とサプライヤーさんの間に入って、発注・購買、在庫の調整などを行っていました。
取り扱う資材の種類が多く、取引先も国内外多岐にわたるため、一人前になるには3〜4年はかかると言われています。なので、課長からも「3年間は面倒をみるように」と言われていました。
Aさんは慎重でミスも少ない反面、応用がきかないところがありました。
少し物足りなさは感じていたものの、経験をつめばそのうち慣れてくるだろうと、気長に待つように心がけました。
2年目を迎えた春、中堅社員が1人退職したため、Bさんという女性が異動してきました。Bさんは、ある拠点で事務を担当していましたが、課長がその仕事ぶりを見込んで引き抜いたカタチでの異動でした。
Aさんよりも1年後輩ですが、拠点で実務を担当していただけに飲み込みが速く、職場にもすぐになじんだようです。
私は、AさんのOJTとともに、BさんのOJTも担うことになりました。ただ、ひと通りの業務はすでにAさんができるようになっていたので、多くはAさんが指導を担当できます。これは楽でした。人を育てるってこういうことなんだなぁ、とつくづく実感しました。
そんなふうに順調にすべりだした2人目のOJTでしたが、3カ月も経ったころから、Aさんの様子が少し変わってきたのです。
あるとき、取引先の工場のトラブルで資材調達ができなくなり、急きょ代替品を調達しないといけなくなったことがありました。
そういうときは、真っ先に私に報告・相談すべきところ、Aさんは独断で新規のサプライヤーに見積りを依頼していたのです。
「○○社からの見積りが届いたんですが、これで発注しようと思うんですがいいですよね?」
「え?どういうこと? 」
「あれ? リーダーにもメールがCCで届いていますよね? 工場トラブルの件ですが」
「何それ?」そこで初めてことの次第を知りました。
確かにメールを見落としていた私も悪かったのですが、そういうトラブルが発生したときは、必ずAさんから直接報告があったので、安心しきっていたのでした。
「そういうことはちゃんと口頭で報告しないとだめだろう。Aさんらしくないな」
「はぁ、でも代替資材が見つかったので、解決ですよね」
「そういう問題じゃないだろう。それになんで○社なのか、理由を説明してよ」
「......ネットで調べて、評判がよくてコスパもよかったから」
「実際に担当者に会ったの? 審査部は通したの? 他はどこをあたったの?」
「それは......」
これまで、ちょっとしたイレギュラーでもすぐに指示を仰いできたAさんだけに、急に独断で、しかも浅はかな判断をしたことに、私はあきれてしまいました。
またこんなこともありました。
拠点間の在庫調整が必要なとき、本来ならエリア内の一番近い拠点から移動すべきところ、別のエリアから移動処理をしたのです。
「そちらに多く余っていたので」というのがAさんの理由です。
「あのさぁ、数の問題だけじゃないでしょう。拠点の販売状況とか、移動の経費とか、ルートの効率とか、他に考えないといけないことがたくさんあるでしょう」そんな調子でした。
単純な「ミス」というわけではないので、表立って問題になることはなかったのですが、Aさんの判断は、ことごとく短絡的に思えました。またその非効率な判断をもとにBさんに指示を出して、余計な仕事を増やしてしまっていることが、ますます私をいらつかせました。
しかし、いくら言ってもAさんの判断が修正されることはなく、そのうち私は面倒くさくなって、Aさんと距離をおくようになったのです。Aさんも私のことを煙ったく感じていたことでしょう。
会社にとっては損失だけど、いくら言ってもムダだし、自分が嫌われ役になるのもばかばかしい。もうOJT期間も過ぎたことだし、知るもんか。......そんな気持ちでした。
Aさんとの間が、なんとなくぎくしゃくしたまま、私は新素材のプロジェクトメンバーに抜擢されて異動になりました。
その後のAさんがどうなったかわかりませんが、まだ同じ部署にいるようです。
自分の中では、もやもやと中途半端な気持ちが残ったOJT経験となってしまいました。
会社の損失に対して、見て見ぬふりを決め込んだことについても、少々後ろめたさを感じています。
あの頃、いったいAさんの中で何が起こっていたのか、私はどう対応すればよかったのか、今だによくわかりません。
それとも、能力の問題だからしかたないのかな、という気もしています。
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