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ホテル勤務(男性) 2016-10-18
私が最初に入った会社では、Gさんという4つ年上の先輩からOJTを受けました。
その会社はホテル事業を手がけており、毎年新しいホテルを続々とオープンさせていました。私は営業企画部門に所属しており、Gさんと同行し、立ち上げ前後の1か月間は、現地でオープンの支援活動をしていました。
支配人のサポート、現地採用スタッフの教育、清掃チェック、施設内点検、フロント業務の支援などなど。
Gさんは、1日中本当によく働く人でした。
実務以外にも、宿泊客が残したメッセージノートにもよく目を通し、すべてのコメントに丁寧に返事を書いていました。
それだけでなく、ネットでホテルに対しての書き込みを毎日チェックし、逐一コメントをしたり、とてもタフで熱心で細かい心配りをする人なのです。
そんなGさんに、私はついていくのがやっとでした。いや、とてもついていけていませんでした。
Gさんに代わって私がメッセージノートにコメントした日は、必ず「まだまだ気持ちがこもっていないね」と言われて書き足されます。
清掃チェックや施設内点検なども、Gさんから見たら不完全で、ゴミ箱やタオルの位置まで細かく指摘が入ります。Gさんは小さな異変も見逃しません。
こんな風に書くと、すごく厳しい人のように思われそうですが、決していじわるではなく、むしろ私を一生懸命育てようとしてくれていました。Gさんは宿泊客のメッセージだけでなく、私のOJT日誌にも毎日目を通してコメントをくれるような人でした。
1か月間、出張先でほぼ毎日Gさんと一緒に過ごします。
食事を一緒にとることも多かったのですが、その間も、Gさんは熱くホテルの運営について語ります。
そして必ず「今日はどんな発見があった?」「もっとお客様に利用していただくためにどうしたらいいと思う?」などと聞かれました。
しかし、そんなに毎日発見があるわけではなく、私の答えはいつもGさんの期待外れだったと思います。Gさんの表情に落胆の色が浮かぶことがよくありました。
1店舗が軌道にのると、また次の現場へと、休む間もなく移動します。そして1か月間ほぼこのような閉鎖的な環境でGさんと過ごすことになります。そんな生活が半年過ぎた頃、私はうんざりしてきたのでした。
いや、仕事がイヤだったわけではないのです。私だってやる気はあります。オープンに向けて気持ちも高揚するし、自分が関わる以上成功させたいとも思うのです。決して手を抜きたいわけではないのですが、なぜかGさんが熱く語れば語るほど、どんどん引いていく自分がいたのです。
Gさんと一緒にいると、エネルギーを吸い取られるような、そんな気分にすらなってしまったのです。
Gさんは、私のことを「自分の後継者だ」と言って期待してくれていました。私達の関係はとてもうまくいっていると思っていたようです。
Gさんは、きっといいOJTリーダーなのです。
それだけに、Gさんに引いてしまっていることが、なんだか申し訳ないような......。でも、逃げだしたい気持ちは徐々に募っていました。
1年間のOJT期間が終了すれば、この生活は終わるだろう、そう自分に言い聞かせて我慢していました。
ところが、OJT期間が過ぎても、特に何が変わるでもなく、これまでと同じように出張同行が続き、これまでと同じようにGさんの指導も続きました。
そんな生活が2年間続いた頃、私はGさんの顔を見ただけで、胃がむかむかするようになってしまったのです。
できるだけ夜勤のシフトを入れて、Gさんと顔を合わさないようにしましたが、露骨に避けるわけにもいきません。
やがて、不規則な生活も重なって体調を壊してしまった私は、思い切って管理部門に異動を願い出ました。Gさんは「せっかくここまで覚えてきたのに」と、とても残念がっていました。そんなGさんに私は本当の理由は言えませんでした。
別にGさんに問題があったわけではないと思います。むしろOJTリーダーとしては実によくやっていたと思います。
だから、これがOJTケースの記事として適切なのか、わかりません。
なぜあんなに嫌気がさしたのかについても、よくわかりません。
ただ、Gさんとの関わりの密度が濃すぎたようにも思うし、お互いのエネルギー値のバランスが取れていなかったような気もします。また、OJT期間がいつ終わるのかが明確であれば、精神的にはもっと楽になった気がします。
それとも、ただただ私に根気がなかっただけ、なのでしょうか。
その後、私も後輩指導を受け持つ立場になり、改めてOJTリーダーの大変さを思い知りました。Gさんにはつくづく申し訳なかったなと思います。でもあのとき異動を願い出て、本当によかったと思っています。
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