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卸売業 男性 2014-10-27
私はB to Bの卸営業をしている。得意先の窓口は主には総務部だ。
今、OJTリーダーとの距離の取り方というか、自分の立ち位置で悩んでいる。OJTリーダーは仮にA先輩としておこう。一言でいうととても泥臭い人だ。
A先輩は、右も左もわからない学卒新人の私を、ずいぶん可愛がってくれて、ビジネスマナーやコピーの使い方、伝票類の書き方、Excelの使い方など、何でも丁寧に教えてくれた。それは本当に感謝している。
そして、A先輩は「お客さま第一」を地でいっているような人でもある。例えば、お客さま先で行事があると、真っ先に手土産をもって駆けつける。お客さまの誕生日などもすべてメモしている。取引先の人事異動はもちろん誰よりも先にチェック。近隣に災害があれば、すぐにお見舞いに駆けつける......。そうした行動は見習うべきところも多い。最初はA先輩のきめ細かさと徹底ぶりに、さすがだなぁ、と尊敬の念を持って見ていたほどだ。
でも3カ月もすると、良きにつけ悪しきにつけ全体が見えてきてしまった。その頃から、A先輩の営業スタイルには、違和感を感じ始めたのだ。
確かに売上はそこそこ上げている。お客さまからも頼られている。でも、反面では、お客さまの言うなりになっており、値引き交渉などにも安易に応じすぎているような気がする。また何より、努力すべきところが違っているように思うのだ。「お客さま第一」も度を越している、というか、本当にそれがお客さま第一の姿勢なのか、わからなくなってきたのだ。
ある日のこと、A先輩からこう声を掛けられた。
「Xさん、今度の土曜日空いてる?」
「ええ、まぁ、特に予定は入ってないですが」
「じゃあ、ちょっと付きあってくれないかな。得意先の○○社のxx周年記念式典があるんだけど、その受付の補助をやってほしいんだ」
「え、受付ですか?(しかも休日に!?)」私は、うそでしょうと思った。業者とはいえ、なぜそこまでしないといけないのか。その気持ちが顔に出てしまったのか、A先輩は、
「人員が足りないみたいなんだ。頼むよ。でもその後は立食パーティにも出られるから食べ放題だよ」と付け加えた。
......なんか違うんじゃないかなぁ、そう思ったが、そのときはまだ逆らえなかったし、立食パーティにも心がひかれた。AさんはAさんで、「式典の記念品は何がいいかって相談されちゃって、今ネットでいろいろ調べているんだけど何がいいかなぁ」などと言って忙しそう(そして楽しそう)にしている。
そんなことは他にもいろいろあった。得意先で引っ越しがあったときなども、要員として借り出された。得意先の社員旅行のために、見どころ一覧をまとめさせられたこともあった。
またあるときは、取引先の部長の娘の見合い写真を差し出されたときもあり、さすがにそれは辞退したが、先輩はしばらく見合い相手探しに奔走していたようだった(なぜか自分自身は対象外のようだったが)。
きっといい人なのだ。頼まれるとイヤとはいえない、というかむしろお世話するのが好きなのだ。しかし私はあんなふうにはなりたくない。個人的なつながりで仕事をもらうのは、コンプライアンス的にもどうなのか。
「こんなのは、本来の営業ではない。というか邪道だ」私の心は、だんだんとOJTリーダーから離れていった。
一方で、まったくスタイルの違う営業をしているB先輩がいた。B先輩は合理的で、システマティックな考え方をする人で、その営業スタイルはとてもスマートに見えた。A先輩とB先輩は当然ながらソリがあわず、会議でもよく対立していた。私は心の中で、ついつい論理的なB先輩のほうの肩をもってしまっていた。
半年過ぎた頃からは、OJTリーダーのA先輩よりもB先輩に相談することが多くなり、A先輩をできるだけ避けるようにすらなってきた。
しかし、OJTリーダーを無視できないし、A先輩に嫌われたら仕事もやりづらい。そしてさらに困ったことに、課長もどちらかというと泥臭いタイプで、A先輩に目をかけている人だった。当然ながら課長もB先輩とはソリがあわなかった。
あるとき私にとってショックなことが起きた。B先輩が「こんな前時代的な営業はもう通用しないよ。こんなところに長くいたらダメになってしまうよ」と言って、辞めていってしまったのだ。
私は、唯一モデルにしていたB先輩がいなくなってしまい、今途方にくれている。もう今さらA先輩の方針には従いたくない。とはいえ、まだA先輩を無視してやれるほど、営業として力があるわけではない。B先輩のいうとおり、自分も転職したほうがいいのだろうか。それともここで頑張るべきなのか。
そんなことを迷いながら、気の進まない思いで会社に通う毎日だ。
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