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サービス業(男性) 2014-05-26
私はある居酒屋チェーンでエリアマネージャーをしています。
以前、私が店長だったとき、2人のアルバイトスタッフのことで、育て方とか適性のようなものについて考えさせられました。
大島君と佐藤君はともに20代前半で、ほぼ同時期に採用しました。居酒屋のアルバイトは、大きくキッチン(調理)とホール(接客)の2つに分かれます。最終的には1人で両方こなせるようになってもらいたいのですが、大島君は居酒屋でのバイト経験があり、料理も得意なようだったので、最初はキッチンで働いてもらいました。一方、佐藤君は販売員の経験があり、人なつっこい感じだったので、まずホール中心に働いてもらいました。2人とも働きぶりは真面目で、公私ともに仲が良く、私にはいいコンビに見えました。
1年後、私が本部へ異動になったとき、大島君が店長(マネージャー)に昇格しました。推薦したのは私です。その頃、大島君と佐藤君はキッチンとホール両方をこなすバイトリーダーとして、店長の私を補佐してくれていました。大島君には、頑固というか、ちょっと融通の利かないところもありましたが、彼の場合、そこが堅実な仕事ぶりにつながっていてミスもほとんどなく、そのときは店を任せられそうだと思ったのです。
ところが、店長就任後1か月ほどして、大島君が突然「辞めたい」と言い出しました。本人は一身上の都合と言いましたが、他のスタッフの報告では、その前日、開店準備中の店舗で、大島君と佐藤君が大ゲンカをしたそうです。
佐藤:「宴会予約が7組入ってるのに、なんで2人でホール回さなきゃなんねーんだよ!
もう1人来るはずだったバイトはどうした!」
大島:「しかたないだろ! 急にインフルエンザになったんだから!
他のスタッフも都合つかないって言うし。
今日はキッチンも途中から俺一人になるんだ。そっちも何とか
やってくれよ!」
佐藤:「ふざけんな! おまえ店長やる気あんのか!?
こないだだって、仕入れミスで品切れ続出だったろうが!
お客さんから文句言われるのはホールなんだぞ!」
大島:「なにー! 自分のことだけ考えてればいい立場のおまえに何がわかるんだ!」
口論はどんどんエスカレートし、あやうく殴り合いになりかけたところを周りのスタッフたちが止めたそうです。
後で本人たちに聞いたところ、大島君は、店長になってから精神的にだいぶ追いつめられていたようです。店長は、通常のホールやキッチン以外にも、シフト管理や売上管理などをしなければなりません。もちろん、店長研修で一通りの指導はしています。ただ、もともと一つずつ着実にやりたいタイプの大島君は、バイトリーダーのときは問題なかったものの、突然店長という役割が回ってきて、処理が追いつかずパニックになっていたようです。その結果、以前はなかったような凡ミスも頻発していましたし、店舗全体のマネジメントを考える余裕などありませんでした。
一方、佐藤君は佐藤君で、同期の大島君に出し抜かれた気がして、ずっとイラ立っていたようです。私としては、彼はホールに向いているから、しばらくは大島君を補佐していってほしいと思っていました。優劣ではなく、単に役割の違いなのですが、本人はそう思えなかったようです。
結局、辞職を願い出た大島君はとどまり、処遇に不満をもっていたらしい佐藤君のほうが辞めていきました。大島君は、ひとまず規模の大きい近隣店舗の副店長にして、店長からみっちりとOJTを受けさせました。半年後、元の店舗に配属され、現在はなんとか順調に店長をやっています。
今思うと、私はスタッフの一面だけを見て、勝手に安心していたように思います。大島君なら店長でも大丈夫だとタカを括っていましたし、彼と佐藤君は仲がいい、そうとしか思っていませんでした。いや、確かに仲はよかったはずですが、自分が店長だったから成り立っていたバランスであったことには全く気づいていませんでした。ただ正直、当時は、私自身が異動になったことで頭がいっぱいで、そんなことを省みる余裕はありませんでした。
でもこの一件で、人と状況をできるだけありのままに捉えたうえで、段階的に事を運ぶことの重要さを再認識しました。この反省は今も肝に銘じています。
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