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金融業(男性) 2014-02-12
学生の頃、コンビニでアルバイトをしていた時のことです。
売上金の着服事件がありました。
事件の2、3カ月前から時々、レジ締めの際に金額が合わないことがあり、その報告を何度か受けた店長が、あるスタッフに問いただしたところ、着服が発覚したのです。
どうやって突き止めたかというと、店長は最初の報告を受けてすぐ、スタッフに内緒で複数の隠しカメラを設置し、レジの手元を撮影し始めました。そのカメラで半月ほど監視していると、レジ締めの時にお札をポケットに入れているスタッフが映っており、犯人が特定されたわけです。深夜シフトで働いているフリーターのAさん(仮名)でした。
夕方シフトだった私は普段、自分が退勤するとき、ちょうど出勤してきたAさんとバックオフィスで顔を合わせ、あいさつや世間話をする仲だったので、事件を知ってショックを受けました。
実は、事件の半年ほど前に店長の交替がありました(※上に述べた「店長」とは、新店長のことです)。前店長と新店長では、店の運営方針がだいぶ違いました。例えば廃棄食品の処分方法1つとっても違っていて、Aさんの犯行動機はそれと関係があったようです。
前店長の頃は、お弁当やパンなど賞味(消費)期限が切れて廃棄扱いになった食品をスタッフが食べたり持ち帰ったりすることが容認されていました。スタッフの中にはフリーターが少なくなかったため、廃棄食品の飲食容認は、「スタッフが少しでも食費を節約できれば」と考えた前店長の、いわば温情でした。実際、Aさんも「食費が浮いて助かる」と言っていました。また、前店長はどんなに自分の業務が忙しくても、なるべくスタッフ全員と顔をあわせる機会を作り、日頃何かと声をかけていました。
それに対して、新店長は特に何の説明もなく、廃棄食品の飲食と持ち帰りを禁止しました。新店長の考え方は合理的で、「自分がフロアに出ていたらアルバイトを雇っている意味がない」と言って、お店にいるときは大抵バックオフィスでじっとパソコンに向かっていましたし、必要がなければ極力お店には来なかったので、深夜シフトのAさんたちと顔をあわせることもほとんどありませんでした。
新店長のやり方も当然といえば当然なのですが、Aさんはこうしたやり方や上記の禁止令に不満を募らせていたらしく、その腹いせに店の売上金を盗ったようです。新店長も事を大きくしたくなかったので警察には届けず、結局、盗ったお金の返済とAさんの解雇ということで話がつきました。
そして、事件をきっかけに設置された隠しカメラは、そのまま監視カメラとして以後も公然と据え置かれました。ついでに、バックオフィスにもカメラが設置され、スタッフの挙動を絶えず見張るようになりました。
この監視カメラの設置に、私はやや違和感をもちました。それ以前はなかったものだし、自分が事件を起こしたわけでもないのに、これからは自分たちも「不信の目」で見られるんだと思ったからです。
たしかに、スタッフを信用しなくなった新店長は、そうでもしないと不安だったのでしょう。また、今では、カメラが従業員を常時監視している職場はめずらしくありません。現在私が勤務している職場でも、IDカードと暗唱番号なしには、入口はおろかどんな部屋も出入りができないほどセキュリティが厳しい。だから、不正が起こらないように環境(仕組み)を整備するという発想自体は決して否定するつもりはありません。それに、もともと個人の善意やモラルを当てにはできないから、環境や仕組みによって不正を制御するという発想が生まれてきたのでしょう。
ただ、そうした発想にも限界はあります。どんなに監視を強化しても、起こるところでは不正は起こるのです。そんなとき肝心なのは、やはり個人の内面的な部分なんじゃないかと思います。
当時、新店長は事件の被害者であり、私も大いに同情します。と同時に、彼が頭ごなしに決定事項を通達するようなやり方ではなく、もう少しスタッフとのコミュニケーションを心がけていたらとも思います。Aさんが辞めた後しばらく経って、私が禁止令の理由を訊ねたところ、新店長は当然といった感じで「廃棄食品を食べたスタッフが食中毒にでもなったら大変でしょう?」と答えてくれました。何が正解だったのかは私にもわかりませんが、この言葉をAさんが新店長から直接聞いていたら、結果はもう少し違ったものになったのではないかという気がしています。
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