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会社員(女性) 2013-08-09
昔昔、社会人3、4年生だった20数年前、私は都内のある建築資材メーカーの製造管理部署に所属していました。
私はその部署でたった1人の女性社員。以前は女性の先輩がいたのですが、出産で予定よりも数年早く退職してしまい、その後は女性を補充することなく紅一点のまま数年を過ごしました。
ちょうど、「男女雇用機会均等法」が浸透してきたころで、その影響もあるのか「女性は補助的な仕事」から少しずつ「女性も男性と対等な業務を」という上司の意識もあり、1人になったことをきっかけに、それまで女性だけで行ってきた朝の机の清掃や来客へのお茶出しも「しなくてよい」という指示が出ました。
男性よりも先に出社して全員の机を拭かなくてもいいなんて、早起きがつらい私にとって非常にありがたいこと。これ幸いと上司に従ったのですが。
かといって、誰かが代わりに机を拭いてくれたわけではありません。
会社は清掃会社と契約しており、ゴミ捨てや床の清掃などほとんどのことはしてもらえるですが、机など機密情報があるような場所には一切触れないこととなっており、そこは社内の人間がやらない限りどんどん汚れていきます。
私が清掃をやめてしばらくすると、自分の机にもほこりが溜まり目に付くようになりました。
よく使う中心あたりはなんとか清潔さを維持できるのですが、机の端や電話機の下など、どんどん汚れてきます。周りの机を見ても同様の状態。
「掃除をしなくてよい」という指示は上司から私にこっそりと出たものだったので、何も知らない男性社員は「掃除をさぼってるな」と思ったことでしょう。とはいえ、上司の命令に背いてまた机の掃除を再開すると「男女均等にすべく、せっかく仕事を楽にしてやった気持ちを無下にするのか」と思われるのも面倒です。ここは見ぬふりをしよう......。
しばらく経ったある日、「机を拭かなくてよい」と言った上司にまた呼び出されました。
「あのね、確かに『これからは机は拭かなくていい』とは言ったけど、放っておくとやっぱりどんどん汚れるよね。そこは仕事とは別の分野として、女性として気を利かせて、時々拭くってことはできんのかね」と諭すように、しかし厳しく言われました。今ならジェンダー差別にあたるような発言ですが、当時は普通の感覚だったのかもしれません。
しかしまだ若かった私は、本当に驚きました。「え?拭かなくていいって言ったのはあなたですよね。なのに『そうは言っても......』がつくのですか?では何を信じて行動したらいいのでしょうか......」
頭の中は混乱しましたが反抗する勇気もなく、その後は週に1、2度は机を拭くようにしました。
そして、「上司に言われたことは、それが全てではなく、なにか別の意味があるのでは?と深く考えるのも必要なんだ」と痛感したのです。
その後、私の業務量はどんどん増えていき、臨時でアルバイトの女性が入ることになりました。その女性は4月から入社予定の大学4年生であり、いずれ入社することを考えると長期を見据えた指導となります。
通常業務については淡々と指導を進めることができたのですが、机の清掃については悩みました。
「この部署では基本的には男女の差がなく仕事をしているの。来客時のお茶出しも、手が空いている人なら男性でも出すようにしているんだけどね」
「でもね、机の清掃だけはね、ここは女性として気を利かせることにしてるのよ。負担にならない程度でいいから、時々拭いてもらえると、みんなが助かるんだけど、いいですか?」と自信のない、なんとも曖昧なOJTとなりました。
「結局、拭くの?拭かないの?どっち?」と突っ込まれるかとドキドキしましたが、そこはうまく雰囲気を読んでくれ、清潔を保てる適度な間隔で机の清掃を実施してくれました。
今回はなんとか伝わりましたが、自分の中で納得ができていない内容を人に指導することは難しいと感じた出来事でした。
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