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飲食店のOJT

残念な辞め方

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出版社(男性)  2012-06-26

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残念な辞め方

大学生の頃、喫茶店でアルバイトをしました。ひとつには小遣い稼ぎのためですが、「一度喫茶店で働いてみたい」という憧れがあったからです。
しかし実に情けないことに、これが全然続かず、2カ月ほどで辞めてしまいました。
続かなかった一番の原因は、仕事に対する意識の持ち方にあったと思います。

ビジネス街の店舗だったため、平日はかなり忙しい一方で、土日祝日は比較的ゆとりがありました。スタッフは店長と副店長が1名ずつ、その他アルバイトが7、8名くらいでローテーションをしていました。
新人の私に仕事を教えてくれたのは、もっぱら副店長のAさんです。彼女は一見して昔やんちゃだったとわかる感じの豪快な方でした。アルバイトから正社員になり、店長候補として将来を嘱望され、ご本人もやる気に満ちていました。

仕事はホールでの接客・給仕とキッチンでの調理に分かれており、私はまずホールを担当しました。Aさんは指導熱心な方で、接客時のあいさつの仕方や、使用済み灰皿を洗浄するコツなどを親切に教えてくれました。
ところが、私が入って1カ月が経ち、ホールの仕事にも慣れてきた頃、Aさんとの間に(今思えばささいな)いざこざが起こりました。
ある日の営業がほぼ終わり、私は初めてレジの締め処理をすることになりました。レジの前にAさんと並んで立ち、指導が始まるかと思いきや、

Aさん「じゃあ、ちょっとレジ締めやってみて」
私  「すみません。レジ締めは今日が初めてでわからないのですが、
    やり方を教えていただけますか?」
Aさん「ああそう、しょうがないな。じゃあ、これからやるから見てて」
   (普段している通りの速さで、処理の半分ほどを終わらせる)
Aさん「わかったでしょ?じゃあ、わたし向こうに行くから、残りやっといてね」
私  「あの、今のちょっと速くて覚えきれなかったんですけど...」
Aさん「なんでわかんないの!?あんた大学生でしょ!?自分でなんとかしなよ!」
私  「......」

以上のようなやり取りになりました。私は状況がよく飲み込めず、戸惑いながらも謝罪したのですが、できないものはできません。Aさんはすっかり気分を害してその場を離れ、結局レジ締めは他のスタッフが行いました。
Aさんが激昂した理由としては、例えば私の態度が積極的でなかったとか、たまたまAさんの虫の居所が悪かったなど、いくつか推測することはできます。しかし、ご本人からは何の説明もありませんでした。
この件以来、Aさんとの関係は気まずくなり、私は辞職を決意しました。その意思を伝えると、店長はAさんの側の(指導者としての)非を認めましたが、状況に耐え切れなくなっていた私は、その1カ月後に店を去りました。

でも、今なら私はこう思います。教えてもらうことを単に待つのではなく、自分から興味をもつこと。また、仮に教わっていないことでも、やるとなったら、なんとか手がかりを探してやってみること。こうした意識があれば、Aさんが怒った後でも、いくらでも挽回することはできたでしょう。
しかし、残念ながら当時はそう思えませんでした。そのため、そうした意識の持ちようがおそらく当時の態度にも少しは表れていたのだと思います。


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