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有限会社日華 中国ビジネスコンサルタント 汪陽 2002-11-11
子供のころから本が好きでした。娯楽の極端に少ない20年前までの中国にいては「教わる」欲求を一番満たしてくれたのは、本でした。もちろん。ここでいう本は、教科書なども含めてです。
当時の中国には、テレビもパソコンも携帯電話もなく、テレビゲームやビデオ、CDもありませんでした。 絵本はもちろんのこと、本そのものが少なかったのです。知人や友人から本を借りるために、そのかわりとして、大切にとっておいたものをあげたり、やり終えた宿題のノートを見せたりして、よく取引をしていたものです。
そんな環境の中で少し大げさにいえば、今の子供にとっては勉強用の「本」は、当時の私には絵本や漫画がわりで、算数や数学、物理などの本を読むのはクイズやゲームをするようなものでした。
もちろん、本や先生から頭で教わるだけでなく、水泳を習ったり、工場に行って機械を操作したりなど、体で教わることも、それこそ、当時の私には遊びそのものでした。
親の禁止令を無視し、川の流れの怖さも乗り越えて水泳を習ったことが度々あり、親に気付かれないために、木の枝でハンガーを作り、ぬれたパンツを干しながら帰り道を歩いたこともありました。
教わりたくても、恥ずかしさで人には教えてもらえなかったものが1つありました。それは「セックス」に関する知識でした。 どの本を見ても、肝心なところで「同房」としかなく、少年の豊かな想像力をもってしても、やはりうまく理解できませんでした。
それから、教わることを強いられましたが、大の苦手だったのは、親に教わった礼儀作法と、学校で教えられた党や国の方針を示す文章でした。生まれつきの拒否反応でしょうか。
それでも教わりたい強烈な欲望に押されて、教わる環境の悪さも「苦」にならず、ほとんど自ら進んで、喜んで教わっていました。
博士号を取得し教わるフルコースを終えたことで、教わることはこれで終わったと思い込んでいましたが、社会に入って仕事を始めると、それは、これまでとは内容の異なるものを教わることの始まりだと気付かされました。頭と体だけでなく、心でもって教わることの難しさ、また教える立場に立つと、これまた教え方を教わらなければならないことも思い知らされました。困ったことに、それまでの教わる欲望はなぜか急速にしぼみはじめ、代わりに心を支え、尻を叩いているのは、義務感と自尊心と面子(メンツ)からくる重いプレッシャーでした。教わることはもはや「喜んで」ではありませんでした。教わるものを少なくするために、無意識に「厳選」し、少しでも「楽」にと「方法」にこだわりだし、しまいには、教わらないことを自分に納得させるために、「忙しい」という言葉を重宝するようになる始末。
もちろん、教わるにも良い先生も、適切な教材もなく、やむを得ず自らの体験、それもほとんど失敗の体験を本能的に、あるいは「反面教師」と仰いで教わるはめになることがほとんどでした。
今となっては、教わることの終わりは命の終わりではないか、と悟りめいた境地を開いたような気がしています。
となれば、少年のころの自分のように、楽しみながら教わったほうがいい、よく考えてみれば、心構えを一つ変えれば済む話です。そう思い、いざ実践しようとすると、なんと、心構え一つ変えるにしても、教わらなければ、簡単にはできないのです!
しかし、私には、いくら教わっても、一向にうまくいかないものがありました。それは「恋」でした。
理解できない言動への戸惑い、理解されないいら立ち、思い通りになってくれない悩み、失敗からくる落胆、将来への不安、もちろん失恋の苦しみ......それらに関する知識、体験、教訓、名言など、人類の長い歴史の中で掃いて捨てるほど積んできたはずです。周りに「先生」になりたがる人もたくさんいました。本にでも、誰かにでもきちんと教われば、それらが少なくて済んだはずです。しかし、体の中に祖先の知識や体験を遺伝的に一滴も受け継いでいないようだし、教われば教わるほど、悩みや不安が深まるばかり。
しかし、この「恋」に、もし、戸惑い、いら立ち、落胆、悩み、不安、 苦しみがなければ、またそれらをなんとかしようと必死に教わったり実践したりすることがなければ、恋ってそんなに魅力的なものでしょうか? それらがすべてなければ、肉欲の一時的な満足を除けば、 恋の喜びなど果たしてどれほどあるものでしょう。
一番教わりたい、しかし、人や本からよりも、実践で教わるほうが一番楽しいのは、この恋かもしれません。
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