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看護師(女性) 2017-03-22
某病院に看護師として勤務していたときの話です。この病院は2件目の職場でしたが、そこに勤務して3年目に、新人看護師Aさんのプリセプター(OJTの指導担当者)を担当しました。
前の病院でも一度OJTを担当したことがあったのですが、科や病院が違うとOJTの仕方もまったく違います。
今度の病院はベテラン2人が同時に辞めてしまったこともあり、全体に余裕がなく、OJT期間も5か月間と短めでした(以前の病院では1年間でした)。
そこで、最初の3か月間はできるだけ日勤や夜勤のシフトもペアで行い、臨床の現場で直接指導する機会を多く作るよう努力しました。
Aさんは、宮城から上京してきたばかりで、素直で明るく、覚えも早いほうだったと思います。
3か月もすれば、業務そのものはひと通りマスターしました。
優先順位のつけ方や、患者さんとのコミュニケーションはなかなか難しいようでしたが、それは現場の経験を通して慣れるしかないかな、とも思っていました。
5か月経ってOJT期間を終える頃は、もう担当の患者さんを持ち、シフトにも普通に入ったので、私と顔を合わせる機会は少なくなっていきました。
もうひと通りのことはできるようになったと思っていたのですが、半年経った頃から、Aさんがミスを頻発するようになってきました。
体温計を回収し忘れたり、患者さんに足湯をしたまま忘れていたり、一度は血糖値を測り忘れたこともありました。
「他の患者さんから用事を頼まれて、......つい忘れてしまいました」
「私達の仕事は一歩間違えば命に関わることなんだから、忘れましたでは済まないでしょ」
「......はい。すみません」
「記憶だけに頼らないで、チェックリストにチェックするようにね」
「......はい。わかりました」
また、患者さんとのコミュニケーションでも問題が起こりました。
Aさんがある患者さんから「食事のメニューが間違って出てきた」という指摘を受けたとき、その後のAさんの対応がまずかったらしく、「私が間違ったというの!? 人をぼけ老人扱いして!」と、さらに怒りをかってしまったのです。
Aさんとしては、患者さんが間違ったなんて言ったつもりはなかったのですが、方言のせいもあり、うまく伝えることができなかったようです。
それからは、患者さんとコミュニケーションをとるのも恐怖に感じるようになった様子でした。
ミスをするたび、インシデントレポートを提出することになるので、残業も増えます。
Aさんの顔からだんだんと笑顔が消えていきました。
このままだとまずいなと感じた私は、ある日、Aさんを食事に誘い、とにかくAさんの話を聞くことにしました。
Aさんは、最初はあまり話したがらなかったのですが、そのうち涙目になり「辞めて宮城に帰りたい」とぽつり。
「上京して周りには知り合いも少ないし、一緒に上京した友人とは休みも合わなくて......」
どうやら、Aさんは日々孤独感をつのらせていたようです。
特に夜勤明けの非番の日は、起きるとすでに夕方になってしまっていることも多く、カーテンを開けて夕陽が見えると「いったい何やってるんだろう」と切なくなる、と言うのです。
それでもOJT期間のうちは、ペアでやれていたので不安も少なかったし、患者さんに感謝されることもあったのでヤリガイも感じたけど、今はナースコールが鳴るたび恐くてパニックになってしまい、ミスはするし、患者さんからは怒られるし、寮に帰っても1人だし......。そんなふうに言って、とうとう泣き出してしまいました。
私は「わかった。師長さんと相談してみるから、もう少し一緒にがんばってみよう」と言って、なんとか思いとどまらせました。
ただでさえ人員が足りないのに、ここでAさんに辞められてはたまったものではありません。それに、Aさんの気持ちは、私自身わからないわけではありません。
その後師長さんと相談して、しばらくAさんの夜勤を減らし、もう少しOJT期間を延長してもらうことにしました。少ない人数でシフトを変更すると他の人に負担を強いることになりますが、師長さんが理解のある人だったので助かりました。
他の職場ではどうなのかわかりませんが、ミスの背景には、ホームシックや孤独感といったメンタルの問題が隠れていることもあるのだな、と気づかされた一件でした。夜勤があると生活リズムも乱れるので、一層メンタルに問題が生じやすいのかもしれません。
人手不足の現場では、自分のことで精いっぱいになりがちですが、OJTでは早めに異変に気づくことが大事だと思います。また、忙しいからといってOJT期間を短くしたって無理がたたるだけ、ということも痛感しました。
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