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ミスが多い後輩へのOJT

ババを引いたOJTリーダー!?

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マーケティング会社(女性)  2013-02-14

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ババを引いたOJTリーダー!?

今度の新人はハズレだ、正直そう思った。そして彼のOJTリーダーになってしまった私はなんてついていないんだろう、と。
調査部に配属された新人のA君。事務処理は遅く、人の3倍は時間がかかり、あげくのはてにミスが多い。
そんなに難しいことをさせているわけではないのだ。例えばアンケート集計。回答をシステムに入力するという比較的単純な仕事なのだが、なぜかかなりの確率で入力ミスがある。きわめつけは、アンケートの枚数と登録したレコード数が毎回合わないこと。たった100枚程度の枚数を照合するだけで30分くらいかかってしまう。
また、アンケートには必ず受付印を押すことになっているのだが、必ず数枚は抜けている。
1回言った指示がその通りに実行されることはありえない。もちろん教科書通り、復唱させ、メモをとらせている。なのに抜けるのだ。
指導して、やらせてみて、チェックしてがく然とし、時間がなくなって結局自分でやり直す。そんな不毛な日々が続き、私もほとほと疲れ果てていた。
自分の仕事は山ほどあり、そのうえ、A君の面倒も見ないといけない。ちょっと気を抜いて任せていると、ミスに気付かないまま会議に提出してしまうこともあり、そんなとき、上司から小言を言われるのは決まって自分だ。
「なんだこれは。ちゃんと教えてるのか?え?指導してるって?じゃあなんでできてないんだ。Tさんが自分でやってしまうから覚えないんじゃないか。最後まで本人にやらせないとダメだろう」
ええ、ごもっともです。でも、やってますし、言ってますってば。最後まで自分でやらせた結果がこれなんですよ。これ以上どうしろと言うんですか。......そう心の中で反論した。
なんで?どうしてそうなるわけ?日々イライラがつのり、つい新人にきつくあたることも多くなっていた。
当の新人はというと、反省しているんだかいないんだかさっぱりわからない。神妙な顔つきで素直に聞いているときもあれば、話が少し長くなると居眠りしているときもあり、その態度がますます私の神経を逆なでするのだった。
なんでA君の指導担当が私なんだろう?これは課長の嫌がらせ?そんなふうにさえ思えてきた。
たまらず同僚に愚痴ると、「確かにA君は問題多いよね。でもさぁ、Tさんも完璧主義だからなぁ。神経質になりすぎじゃない?もっと大らかに長い目で見てあげたら?説教中に居眠りなんて、A君って相当大物なんじゃないの?ま、がんばってよ」と笑う。
......人ごとだ。完全に人ごとだ。私は新人に対するストレスと、周囲に理解されない孤独感を感じていた。もう嫌だ、OJTリーダーって、なんて損な役回りなんだろう。
私は毎日憂鬱だった。自分以外のOJTリーダーはうまくいっているように見え、A君以外の新人は、OJTを通して順調に育っているように感じた。上司から「Tさんは仕事はできるけど、これからは指導力も身に付けないと」などと言われると、「でも、私だってA君でなかったら上手くできますよ!」などとひがみっぽく反論したくなる。
そんな頭の痛い日が半年近く続いた頃、上司がアンケートの設計会議にA君も同席させようと言い出した。ある観光都市についての満足度調査を行うための会議だった。
案の定、1時間を過ぎた頃からA君の目の焦点が合わなくなってきた。頭がゆっくりと揺れている。飽きてきて眠くなってきたのだ。私は冷や冷やした。議長も見逃すわけはなく「Aさん、この案についてどう思いますか?」とすかさず名指しした。
A君はハッとしてちょっと頭をかき、「......えーっと、このアンケートは何だか既存のサービスありきで質問している感じがするんです。自分もこういう施設はよく利用するんですが、利用する人の生活スタイルや時間帯が、例えば学生と社会人とでは全然違うと思うんです。だから同じ項目でとらえていいのか、と思うんです。むしろこんなふうに聞き方を変えたほうが......」などと鋭い意見を話し出したのだ。
最初は、またピント外れなことを言い出したと思って聞いていたのだが、最後まで聞いてみるとなかなかどうして的を射た鋭い意見なのだ。私は目が点になった。
会議が終わって、上司からも「彼はなかなかいいものを持っているじゃないか」などと肩を叩かれた。
そして彼はその日から大変身した......わけはなく、やはりミスは多いは、仕事は遅いは、大抵の意見はピントはずれだは......、相変わらず頭の痛い日が続いた。あの会議での発言は奇跡だったのだ。たまたま気まぐれに神が降りてきたのだ。しかしそのおかげでA君の評価は上がり、そんな"見どころのある"新人を育てられない私は、ますます指導力が問われてしまうではないか。ああ、いまいましい。
しかしそんなことも言っていられず、私はその奇跡にかけてみることにした。彼は自分が経験したことや興味のあることならできるのではないか。
今まで私は、入力したり押印したり枚数を数えたり、などという基本的なことすらできないのに、設計や分析などの高度なことができるわけがない、と思い込んでいた。しかし分野を絞って、A君の興味のありそうなテーマのものを設計段階から参画させるようにしてみた。
これは想定以上にうまくはまった。彼は自分のイメージの及ぶ範囲のことであれば、能動的に取り組んだ。設計から入力、分析までを通して経験させることで、途中の入力プロセスでのミスも少なくなった(ゼロにはならなかったが)。そして10回に1回は、なかなかいい意見も言うようになった。なんといっても顔が明るくなり居眠りをすることがなくなった。結果が出てくると、知らない分野のことでも興味を持つようになってきた。

人間って不思議だ。相変わらずミスはゼロにはならなくて、基本的な処理は苦手なのだが、何かに関心を持つと、それに引っ張られて全体が底上げされてきたように感じる。
人の能力も指導の仕方も決めつけてはいけないな、とつくづく思った体験だった。あんなに嫌だったOJTリーダーという役割も、今となっては私をステップアップさせてくれる大きなチャンスだったのだ、と思えないこともない。
A君は今、5人のチームのリーダーとして活躍している。ときどきミスを後輩に指摘され、頭をかきながら。


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