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アミューズメント施設(女性) 2008-12-26
接客業のトレーナとして働いていたときの話です。
私は、上司からアルバイトで入社したKさんの指導リーダーを担当するよう指示を受けました。入社してから初めの数日は、トレーニングの期間があります。その間に、接客の業務内容はもちろん、「相手の気持ちを考える」「率先して自分から動く」というサービス業として大切なことも伝えなければなりません。
トレーニングを始めて間もなく、彼女の行動が気になりました。他の人と比べると彼女の動きはまるでスローモーションなのです。業務内容を伝えるだけでも、予想以上に時間がかかってしまいました。シフト制で働く仕事なので、時間の管理は常に気にしてほしいところですが、作業を覚えるのもご飯を食べるのも、とにかくゆっくりマイペース。
今はトレーニング中なので許される部分もありますが、このままではチーム全体の作業時間が長くなり休憩時間が短くなってしまうなど、周りが困ってしまいます。 これまでの彼女を見ていると、どうも周りの人の動きと自分の動きの違いに気づいていない様子です。これではお客様に満足してもらえるサービスを行うまでにはほど遠く感じてしまいます。
このままではいかん。
私は、仕事や休憩など、開始と終了の時間を伝えて絶対厳守するようそこだけは強調して伝えました。
ところが、その後も彼女は相変わらずのマイペース。全く時間を気にしません。
どうしたら、周りのペースと自分の違いに気づかせることができるだろうか。困った。どうしたらいいんだ......。
しばらく悩んだ揚げ句、まず全体的な流れを見てもらうことにしました。仕事の手順を教えるのではなく、それぞれの動きを時間に合わせて説明し、どのようにチームの皆が動いているのかを目で見て感じてもらうことにしたのです。1人ひとりが違うことをしていても、皆が時間を意識して動いていること。そして常に周囲を見て働いていることを......。
チームの皆は、周りの状況に素早く動いています。だからこそ、お客様から「笑顔」と「ありがとう」のプレゼントがもらえるのだということを感じてもらったはずだったのですが......。
まいりました。
反応も伝わった感触も全くありません。この作戦も失敗か。トレーナーも楽じゃない。残り2日のトレーニングで、どう伝えていこうかと頭を抱えてしまいました。作業内容はいずれ覚えられると思いましたが、ともに仕事をする皆の動きすらわからないようでは、お客様に満足してもらえる接客なんて到底望めません。これが伝わらないと、Kさんはこの仕事に向いていないのかもしれない。指導担当者として、チーム全体のことを考えると他の部署へ異動させてあげるよう上司へ相談もしなければならない状況です。でも、指導担当者としては、なんとかKさんをチームのメンバーとして一緒に仕事ができるよう指導がしたいのも本音です。Kさんがリタイヤしない以上、何とかしたい!これは私に対する試練だと腹をくくりました。
とは言うものの、なんの解決策も見つからないまま翌日に......。
ところが、びっくり。
昨日の復習と指導を始めると、 なんとKさんの動きがいままでの2倍速になっています。「速い!どうした!?何があったんだ〜!!」
どうやらKさんには、昨日の全体的な流れを見るという時間が、仕事の理解度を早めたようです。そしてさらに、自宅で復習までしたようです。昨日まで持っていなかったノートを持ち、「ここではこの作業ですよね」と自分から質問をし、率先して動くようにもなりました。また、仕事に対するやる気が出たせいか、時間管理が前よりもできるようになっていました。そして常に時計を気にして、少し前に休憩を切り上げ早めに交代に行くという行動を起こすまでに。突然の"覚醒"です。これには本当に驚かされました。
結局、Kさんのトレーニング期間は予定期間よりもオーバーしてしまいましたが、その後予定どおり私のチームに配属されました。トレーニング終了後のKさんは、いつのまにかお客様との会話を楽しみながら仕事ができるまでなりました。
一つのことを伝えるのにもいろいろな方向があり、相手に合わせたかたちで伝えるということが大事なのだと実感しました。そして、相手の気持ちを考え、自分から率先して動くということは、サービス業だけに限らず人に何かを伝えるというときも必要だということを逆に教えてもらいました。
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