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メーカー(女性) 2007-06-29
初めて私がアルバイトをしたのは大学1年のころでした。
大学の環境にもだいぶ慣れ、アルバイトを始めようと、毎週土日に新聞とともに入ってくる求人広告に目を配っていました。
そんな折り、近所のしゃぶしゃぶ屋に立て看板が立っているのを発見しました。
「ホールスタッフ・調理スタッフ募集!時給780円〜」
時給は求人広告に掲載されている他店と同等程度でしたが、最寄り駅の近くにあるという立地条件は、下校途中に直接アルバイトに向かおうと考えていた私にとって好都合でした。そして、すぐにこのお店に応募し、採用されました。
ホールスタッフ採用となった私は、真新しい制服に身を包み、期待と不安を胸にアルバイトを開始しました。
教育担当であり社員のAさんという2〜3歳年上の女性に、オーダーの取り方、生ビールの注ぎ方、タレの説明など一から教えてもらいました。
アルバイトは全くの未経験だったこともあり、要領よく理解できないことも多かったですが、Aさんはとても親切に指導をしてくれました。
ほどなく、お客さまの前で注文をとり、物怖じせず料理の説明ができるようになり、自分でも順調に進んでいると感じていました。
そう、あることに気付くまでは......。
いつものようにお客さまからの注文や、次々に出来上がる料理を運ぶために忙しく店内を回っていたある日、一つ気になる点を発見しました。
レジの周りだけ、壁が部分的に崩れ、レジの足下にあるゴミ箱がぼこぼこに変形しているのです。
「......?」
真新しいテーブルやいすなど清潔な印象の客席から比べるとそのレジ周辺のいたみが余計に目立ちます。
アルバイトを始めてすぐのころには自分のことで精一杯だったこともあり、全く気になりませんでしたが、周囲を見る余裕が出てくると同時にどうしても気になってきました。そこでAさんに尋ねてみました。
「あ〜。あれね!レジって店長が担当しているでしょ。店長ってほんっと気性が激しいから計算が合わなくなると辺り構わず暴れまくるんだよね。だからレジの周りだけぼろぼろなんだよ〜」
レジ周辺のいたみの原因は店長でした。
確かにそういわれてみれば、たまに厨房から店長の怒鳴り声が聞こえてくることもあり、それがお客さまが食事をしている店内にまで響くこともありました。
スタッフの雰囲気も店長がいるときはピリピリした雰囲気に変わり、活気がなくなります。
店長が休みの日には、スタッフたちがここぞとばかりに店長の悪口を言い合い、特に休憩時間はその話で大いに盛り上がります。
例えば、厨房にいた同じくアルバイトのBさんという男性は、調理の盛りつけを間違えたことで店長から罵声とともに首もとに包丁をつきつけられたそうです。
幸いにも(?)Bさんは、けがなく済んだようですが、そのような話がでるたびにスタッフからため息が漏れます。
スタッフの店長に対する不満は限界にきているように感じました。
スタッフの勤続年数をみても、1年以上勤めている人は社員のAさんともう一人のアルバイトの女性だけでその他のスタッフは全員1年未満でした。店内の雰囲気から辞めてしまう人が後をたたないようです。
だんだんと私も、ミスをしないで店長から注意を受けないことが第一優先で、お客さまにおもてなしの心を持って接し、料理を楽しんでもらえるようにすることは二の次になっていきました。
そして、このアルバイト先で勤め上げようという気が全くおこらず、ただひたすらその日その日が無事に(?)終業時間を終えるのをただ祈るという日々でした。
どうしても店長に報告しなければいけない場合を除いては、なるべく店長から離れ、機嫌を損ねないように、まるで腫れ物に触れるかのように接していました。
数カ月後、結局私はアルバイトを辞めてしまいました。後日連絡をとっていたAさんの話によると、同じくアルバイトだった厨房のBさんも辞めてしまったとか......。
再び店頭には、
「ホールスタッフ・調理スタッフ募集!時給780円〜」
と、立て看板が立てられていました。やがて、その立て看板はしまわれることなく、常に出ている状態になり、その数年後、そのテナントからはしゃぶしゃぶ屋はなくなり、美容院がオープンしていました。
今から考えると、アルバイトを辞めてしまうという選択は正しかったかどうかわかりません。
しかし、立て看板や求人広告に書かれているような賃金や仕事の内容だけではなく、人間関係や職場環境などが重要だということを、このアルバイトを通して実感できたということは、とても貴重な経験だったと思います。
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