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たぁのLOTUS BLOOM通信(筆者のサイト) 2002-11-26
自慢じゃないけど、人の入れ替わりがとっても多いウチの会社。約2年前に入社した私がもう序列では半分よりウエになってしまっている。社長も、それに経理や総務の責任者も、みんな私の「後輩」、しかも異業種からの転職組。その人たちが現場になじみのないまま、MTMと称した幹部会の中で制度やルールを決めていくもんだから、タチが悪い。
4月の初め、クライアントへの納品の窓口を一つの部署に一本化しよう、という話が持ち上がった。経理上の管理をしやすくしよう、というのがその目的だとか。そんなルール冗談じゃない、とウチのグループは大反対。私たちの業務の実情にはまったく合わない。
ウチの会社の主力商品である「年間契約」の場合、どんなタイトルのレポートがいつ届くかは、契約した時点でクライアントさんも了解済み。だから「ご査収ください」と記されてる定型の文面に完成版レポートのPDFファイルを添付して送ることで何の問題もない。だけど、ウチのグループが担当してるのは、クライアントさんの要望に合わせた情報を提供する「受注生産」で、「カスタム調査」と呼ばれているもの。扱ってる調査の内容はそれこそ千差万別。一言で「納品」といってもその形態はプロジェクトの性質やクライアントさんの希望に応じて異なってくるし、1回ですんなり済むことはまずない。中間納品、最終納品と何回かに分かれていることがほとんどで、中には十数回、なんていうのもある。一度の納品が1回で済むとも限らない。できたものから順に送ってほしい、一旦送ったものを修正して再納品してほしいなどなど、パターンというものすらないくらい。それをクライアントさんとの普段のやりとりや、プロジェクトの進捗状況の様子を見ながら、私たちプロジェクトマネージャーが調整しているのだ。「これが納品物ですから出荷してください」と担当部署に依頼書を書いて終わり、なんて既製品の販売みたいなワケにはいかない。事情をまったくわからない人が納品のみを担当したところで、その人も、それから誰よりもクライアントさんが混乱するのは目に見えてる。
ある日、上司が夕方その経理の責任者とミーティングをするというので、「だったら現場の声を聞いてもらうために私たちも参加させてください。」と、同じグループのスズキさんと私も同席させてもらうことにした。まず、上司の指示で私が白板にカスタム案件の納品の特徴を個条書きに書き出して説明。
「まず、年間契約やレポート販売とカスタム案件とでは、まったく性質が異なってることをわかってください。」
「でも、会社としては出荷状況を管理するために、窓口を一本化したほうが効率的だし、経理としても計上しやすいんだよね。」
「納品するときの添え書きというか、説明しなきゃいけないことだって結構あるんですよ。それはどうするんですか?」
「転送してもらったものを出荷の担当者がコピー&ペーストして送ればいいんじゃない?」
「そんなの現実的じゃないですよ。クライアントさんの立場に立ってくださいよ。今は電子ファイル納品がほとんどですけど、いきなり知らない名前の人からメールが送られてきたら驚くし、混乱するじゃないですか。」
「だったら、これが『納品』っていうものを決めて、そのときだけ前もって連絡して出荷担当を通すようにして......」
「どの程度の修正を何回要求されるかなんて、正直言って私たちにも読めないくらい、何がどうなるかわからないのがカスタム案件なんです。スズキさん、この前の案件、最終納品用のフォルダー、たくさんありましたよね? あの最後のヤツのフォルダー名って、『ホントのホントの絶対の最終』でしたっけ?」 「ううん。『絶対の』まではいかなかった。『ホントのホントの最終』で済んだから、あれが最後。」
約1時間の話し合いの後、「もう一度考えてみます」って言ってたけど、業務を何もわかってない人が、自分たちの負荷を軽くするためのシステムを頭の中だけで描いていることが丸わかり。こうなったら、私たちの業務を身をもってわかってもらうしかない。納品関係のメールはすべて経理責任者にCC焼夷弾だ。
その直後にあった私からクライアントさんへの納品。全3回中の2回目なのだけど、まず、今回のデータが前回のものと一部異なるので、その説明が必要。それに、今回提出すべきデータは本来なら2種類のはずが、事情があって1種類しか出せない。その理由と謝罪。もう1つのデータの提出予定期日。それに今回提出のデータについて、検証後の修正・再提出の可能性の示唆。添え書きの文面にはそれらを含んだもの。こういう複雑な案件の納品を、背景も前後関係も何もわからない部署が機械的に扱うことが会社としていいことなんですか?という思いを込めて、送信。
あれから約半年。この件に関するルールは従来どおりで何も変わってない。
「スズキさん、『オヂさんのOJT』は、あれで成功したのかなあ?」
「何も動きがないところを見ると、そう思っていいんじゃない。」
「やっぱり現場の役割と業務内容をしっかりと理解してもらわないと、やりにくくてしょうがないですよねえ。」
「その調子で社長も営業もアナリストも、社内の教育係は任せた。頼んだよ。」
何か問題が起こるたびに首を突っ込み声高に訴える私を「たぁさんは熱いですねぇ」と人ごとみたいに言ってるけれど、それはアナタに業務の実際を教えるため、あえて騒いで見せてるのです。そこのところ、どうかわかってくださいませ>オヂさんたち。
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