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ティー・エム・システムズ(株) 2002-09-04
入社して3年目、そろそろ仕事にも慣れたころです。私は突然 全く新しい業種の関連会社に営業職として 出向し、転籍となりました。元の会社でたいした成績をあげていたわけでもなかったので、「これも新しい展開」とばかりに喜んで異動をしましたが、実はこれが地獄の始まりでした。
私の教育係は同期の男性でした。課内には平社員の先輩はいなくて、同期かそれ以降に入社してきた人ばかりだったため、必然的に彼が私の教育係となったわけです。同期だからといって私が特別気にしていたわけではありません。しかし彼は恐るべき嫌なヤツでした。
とにかく言い方がイヤミ。
歯に衣着せぬ物言い。
毎日のように叱られ、イヤミを言われました。
「何で売れないの?」「毎日何してんの?」「なんだぁ〜〜?」
会社内での人脈もなく、情報もなく、やり方もわからず、やる気もうせている私を、管理するでもなく、指導するでもなく、ただ泳がせていた彼。
一番つらかったのは、後輩と比べられることでした。私よりも後輩のほうが実務もでき、この業界でのキャリアも人脈もあります。私が転籍で来たことを知らない他部署の後輩は、とりあえず私にいろいろ聞きにくるのですが、何を聞かれてもわかりません。次第に「ほら、この人は」「ああ、あの人はねー」と "仕事のできない先輩"というレッテルを貼られてしまいました。
教育係の彼はそんな私を相変わらずネチネチといびり、言いたいことだけ言ってとっとと帰ってしまいます。「『どうしろ、こうしろ』というアドバイスなしに人が育つもんかぁ!」と思っていました。
少し慣れたかな?と思い始めてからまもなくして、彼は私に隣の部の朝会議に出るように命令しました。「なんでですか?」「出ろよっ」......と。私は結局会議に出るはめになりました。会議の内容はチンプンカンプンでしたし、誰も私には期待してません。私は毎日退屈な会議に出席していました。
その上、私の担当はみんなが嫌がる"売れないもの"でした。
「この売れないやつ、お前に任せるからな」「みんなが売れないものなんて私には売れないですよ」「お前が担当なっ」
また他部署から質問が来ると私に回してきます。「あいつに聞けよ」と。そして私が案の定、答えられなくて「わかりません」と困り果てていると「しょうがないなぁ」とばかりに出てきて、パパッと解決するのです。私はねー、あんたの引き立て役じゃないのよ!
しかもこうした彼の言い方や表情は非常にイヤミたっぷりだったので、誰の目にもいじめに見えたようです。
......その結果ですか?うまくいくときには全てがうまく動いていくものです。
毎朝の会議もだんだんと内容がわかり始め、他部署のこともわかってきました。そうすると他部署との連絡もスムーズにできるようになりました。
担当させられたものは、他の人がさじを投げたものです。おかげで、周りの人にも助けられ、1つ売れたときには通常の何倍もの評価を得られました。おまけに「これが売れるなんてスゴイ」と皆から注目されるようにまでなりました。
質問にも答えられるようになり、人間関係もスムーズになり、自信もついてきました。
一番良かったのは、実は彼のそのイヤミたっぷりな言い方です。おかげで、同僚や上司からは「かわいそうになぁ」とものすごく同情され、それとなくカバーしてもらえるようになり、励ましてもらったり、わからないことを教えてもらったりと、私がノビノビと仕事ができる環境が作られたのです。彼は決して嫌われ者でもないですし、他の人に対しては嫌なヤツではないのですが、私は周りからしっかりと同情されていました。
自分が指導する立場になったとき「私はあんなふうにイヤミで意地悪にはならないぞ」と決心し、彼とは全く正反対の指導係になりました。しかし10年以上たった今、彼の指導は良い指導だったと思えます。
当時まだ20代であった彼がそこまでイヤミになれたのは、たぶん元々の性格もあったのでしょうが、早く私に一人前になってほしかったのでしょう。 そこまで嫌われ者に徹することができた彼はすばらしい指導係だったのではないでしょうか?
「後輩が冷たいんです」「こんな厳しいことを言ったら嫌われそうで」と言う人に出会うたびに、彼のイヤミたっぷりの話し方を思い出します。上司や指導係の愛は親の愛と一緒です。嫌われることを恐れていては伸ばしてあげられないし、見返りの愛情を求めちゃダメなんですよね。最近ますます実感しています。
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