公開日:2025年03月03日
OJTのしくみは、目的や手順などの枠組みを決めることに加え、OJTを実施するためのツールもセットにすることで、より機能するようになります。ツールが提供されることで、指導担当者はより充実した指導を行うことができるようになり、OJTを進めるための必要な準備も最小限で済ませることができます。そこで、OJTのツールを整備するためのポイントについて4回に分けて解説します。
OJTのツールでまず思い浮かぶのは「OJT計画書」と「OJTマニュアル」です。ただし、これらは必須というわけではありません。
目標管理制度を活用したOJTでは、「OJT計画書」は準備されません。また、新人に対するOJTでも「OJTマニュアル」は作成せずに、OJTリーダーを対象に研修するだけの企業も少なくありません。
一方、この2つのツールだけではなく、その他のシート類や指導用の教材など、多様なツールが準備されているケースもあります。そこで、OJTのしくみで活用されている多様なツールを整理してみました。
分類 | 概要 | 例 |
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シート類 | OJTの計画や進捗を管理するツール |
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指導手順書 | 指導担当者が参照する教え方のマニュアル |
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指導教材 | 対象者に教える内容を記述したもの、レジュメ、仕事のマニュアル、仕事の道具 |
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案内文・報告書 | 事務局(教育スタッフなど)と指導担当者、所属長と指導担当者などのコミュニケーションのツール |
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OJTの計画や進捗を管理するためのツールと位置づけます。「OJT計画書」が代表例ですが、計画書はなくても何らかのものがあったほうが、管理がしやすくなります。
一般に「OJTマニュアル」と呼ばれるもので、OJTの指導担当者が参照します。OJTのしくみの概要や指導手順を解説したツールで、可能であれば準備したいところです。
教える内容そのものが記述された文書や仕事の道具などを指します。各部門や職種ごとに個別性が高いこともあり、そこまで手が回らないことが多いですが、これが整備されているかどうかは指導の質に大きく影響します。
事務局(教育スタッフなど)と指導担当者、所属長と指導担当者などのコミュニケーションのツールなどを指します。補助的なものになりますが、定型的なものがあるとよいでしょう。
OJT制度を導入した企業で比較的よく聞かれる問題があります。それは「計画書を作っただけで終わってしまった」「非常に手間がかかるわりには肝心な指導は進まない」といった問題です。
さまざまな原因があるとは思いますが、特に「OJT計画書」など、義務づけられているシートが煩雑で実際の場面で活用しにくいと、これらの問題が生じやすいようです。
OJTのツールは、本来、より工数を少なくし、効率を上げるためのものであるはずですが、それと逆行する結果になってしまっていることになります。
OJTを実施すれば、実際に教えている時間以外にも、準備や管理といった工数が多く発生します。質の高い指導を行うためには、こうした時間は必要ではありますが、それ自体が何かの効果を生んでいるわけではありません。
OJTのツールは、本来、きめ細かく確実な指導を促すことに主眼が置かれています。しかし、それと同時に、余分な時間を最小化することに貢献できるものでなければ、期待した効果を発揮することは難しいでしょう。
では、どのようなOJTのツールが望ましいのか。次回は、シート類について掘り下げて考えていきます。