公開日:2023年11月17日
コミュニケーションにおいて、各人が相手の言葉や情報を自分なりに取捨選択し意味づけすることで、そこから飛躍のある結論に至ってしまうことを「推論のはしご」といいます。その結果、同じ事実に基づいて話をしていたはずなのに、しばしば意見の食い違いや誤解が生じることがあります。
例えば、ピント外れな部下の場合、推論のはしごによって思いもよらない結論に達している可能性があります。
上司は「できるだけ前回の書類と体裁を合わせてくれ」と伝えたはずなのに、部下が前回のものと全く違う体裁の書類を作ってきたとします。上司からすると「なんで前回と同じようにしないんだ」と怒りたくもなりますが、部下は部下なりに、以下のような思考を踏んでいる可能性があります。
上司は、前回の書類と体裁を合わせるように言っていた。しかし「できるだけでいい」と言っていたし、具体的な指示はなかった。
実際のところ体裁には特にこだわっていないのだろう。むしろ内容をわかりやすく表現することが期待されている。
前回の書類は踏まえたうえで、できるだけ前回よりわかりやすいものを作ろう。
上司は体裁よりも内容を重視しているので、よりよく作り変える分には問題ないはずだ。
人は日頃、推論のはしごを意識することはほとんどありません。そのため、思い込みを事実と混同したり、相手を偏った見方で評価してしまうことがしばしば起きます。
指導場面においてお互いの意見が食い違ったときは、事実から結論に至るまでの筋道を順番に確認していきましょう。これにより、どの部分の認識が食い違っているのか、なぜ食い違いが起きたのかを明らかにすることができ、意見の調整がしやすくなります。