OJTの対象者であるトレーニーのレベルに応じた指導を行うために、適宜「質問」をしながら進めましょう。
相手が知らない言葉や概念を使ってとうとうと話しても、何も伝わりません。
指導は、一方的に伝えるだけでなく、相手の習得状況や理解度を確認しながら行います。
以下は、確認のための質問のバリエーションです。
トレーニーの状況を確認するための質問
指導の内容を、相手に合わせて調整するために、相手の経験や知識レベルを確認します。
- 「~については導入研修でやりましたか?」
- 「~という言葉は聞いたことがありますか?」
- 「~の作業はやったことがありますか?」
- 「~というサービスを受けたことがありますか?」
注意としては、相手が萎縮することなく素直に答えられるように、ニュートラルな聞き方をするということです。
以下のような聞き方は、言外に『知っていて当然だよね』というメッセージを送ることになり、トレーニーはプレッシャーを感じて、率直に答えられなくなってしまいます。
<悪い例>
- 「~については、導入研修でやったはずですよね?」
- 「~という言葉は知っているよね?」
- 「~の作業はアルバイトでも経験してると思うけど」
- 「大学では○○が専門だったんだよね。ならわかると思うけど......」
問題意識を喚起するための質問
説明を始める前に、まず考えさせることで話に引き込みます。
- 「これから会社の事業内容について説明します。ところで『ここは何の会社?』と聞かれたら何と答えますか?」
- 「この商品は、どういうところで使われていると思いますか?」
- 「○○のサービスについて、どういうイメージを持っていますか?」
- 「○○の競合商品って、何か思いつきますか?」
注意としては、トレーニーが考えるための時間を十分にとること。もし時間をかけても答えられなかった場合は、質問が抽象的すぎるかもしれません。もう少し具体的にブレークダウンし、答えやすくしてやりましょう。
<良い例>
- 「○○のサービスについて、どういうイメージを持っていますか?」
「......」
「では、△△さんがこのサービスを受けたいと思うのは、どんなときですか?」
- 「○○の競合商品って、何か思いつきますか?」
「......」
「では、もし○○が品切れだったら、かわりに何を買いますか?」
理解度を確認するための質問
説明を終えたあとに質問を投げかけ、理解度を確認するとともに振り返りを行います。
- 「最初に△△について説明しましたね。△△って何でしたか?」
- 「この操作を行う前に、準備しておくことは何でしたか?」
- 「今説明した要点を、復唱してください」
注意としては、あくまで理解の確認であり、相手の理解度を評価するものではないということです。
理解できていないことを責めるようなことをしたり、矢継ぎ早に質問をしては、トレーニーが萎縮してしまい、頭が働かなくなってしまいます。
理解が不十分なところは、もう一度根気よく指導します。理解が不十分ということは、指導の仕方が相手に合っていなかったり、それを理解するための知識が不足していることも考えられるので、相手のレベルにあわせて伝え方を工夫しましょう。
また、学んだことを消化するまでに時間を要する場合もあります。その場ではうまく答えられなくても、自分で復習することで深く理解するタイプの人もいるので、そういう場合は復習の時間を十分に与えてから、その後で振り返りの時間をとるようにします。
<悪い例>
- 「最初に△△について説明しましたね。△△って何でしたか?」
(トレーニーの反応に対して)→「いやいやそうじゃないよね。聞いてましたか?」
- 「この操作を行う前に、準備しておくことは何でしたか?」
(トレーニーの反応に対して)→「はぁ(ためいき)」
- 「今説明した要点を、復唱してください」
(トレーニーの反応に対して)→「全然わかってないですね」
<良い例>
- 「最初に△△について説明しましたね。△△って何でしたか?」
(トレーニーの反応に対して)→「ノートを見てもかまいませんよ(確認させる)」
- 「この操作を行う前に、準備しておくことは何でしたか?」
(トレーニーの反応に対して)→「安全のために行うことが3つありましたね(ヒントを出す)」
- 「今説明した要点を、復唱してください」
(トレーニーの反応に対して)→「では1つずついきましょう。最初の工程は覚えていますか?(細分化する)」