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企業と人材 第43巻965号2010.03.20

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特集 作る! 活用する! 研修テキストとOJTツール

「研修・OJT教材を独自開発するときの作成術と活用法」

<以下掲載内容(抜粋)>

6.分かりやすさの工夫

「分かりやさ」は、「美しい」や「かっこいい」ほどではないせよ、かなりの個人差がある。受講者によって知識レベルも違えば、思考プロセスも違うためだ。
そのため、全員に分かりやすく、ためになる教材を作るのは簡単ではない。制作者がいろいろ工夫し、余分な装飾を加えると、表面的には評価が高まるが、肝心な情報があまり伝わららなくなる場合もある。
学習者が「分かりづらい」というとき、教材全体を総合的、客観的に見て評価しているとは限らない。初期段階になんとなく感じた主観的な印象だけで語っていることも少なくない。
学習者には、自分の知らないことを学習するというだけで一定のストレスが生じている。そのため、自分にとって違和感のある記述に引っかかると、そこで学習をやめてしまう人や学習動機を低下させる人が出てしまう。動機が弱いまま学習を続けるとストレスが増し、分かりづらさを増幅させてしまう。
そこで制作にあたっては、学習者の負担やストレスをできるだけ小さくするを意識して進めるようにする。これが案外、分かりやすいという評価につながる場合が多い。
例えば、ページを開いただけで圧迫感のあるものや、何度も読み返したり、あちこちのページをめくったりする動作が発生するものは、学習が継続されにくく、理解度も上がらない。誤字や脱字はできるだけつぶしておきたいし、文章も短かめにし、平易な日本語を使うように心がける。
全体の構成としては、できるだけシンプルにすることが重要だ。特に個人学習の教科書タイプの教材は、リニアに構成してしまう。つまり、先頭から順番に学習でき、直前の章とのつながりが自然で、段階的に理解が深まる流れにしていく。
各ページでは、教材全体の情報の配置、記号やフォント使い方に一定のルールを持たせると理解しやすくなる。これは記述されている情報を理解する労力が小さくてすむためだ。レイアウトデザインは控えめにし、教材の中身が主役になるようにする。また視線をあちこち移動させると思考が途切れてしまい、理解度が上がらない。教材の場合は、素直に上から下へ、左から右へと配置するほうがよい。 文字フォントはメリハリをつけたほうが情報を把握しやすくはなるが、フォントの種類を増やすと雑々した印象となる。重要な情報を目立たせるには、詳細な情報を目立たないように「落とす」ことも有効だ。例えば、モノクロの教材でも20%程度の網文字を使ったり、フォントサイズを小さくしたりし、最初は目に飛び込まず、読もうと意識したら読めるようにしておく。小さなフォントを使うには、行間を広めにとったりすると読みづらさは軽減される。
作図も適度に配置するのが望ましい。ただし、作図はできるだけ本文と同じページに配置する。また、文書の途中で「図表3のとおり」のように作図を参照させるのは避け、区切りの良いところまで読み終えてから作図を参照できるようにする。
作表は情報の整理方法としてはすぐれている。ただし、同じスペースでの情報量が多くなる傾向があるため、あまり情報を詰め過ぎないように注意し、空白部分が残る程度にしておきたい。
なお、制作過程では制作者の思い込みが入りやすいため、必ず第三者に目を通してもらうことが肝心だ。

7.社内でつくるか外部委託するか

自社独自の教材を開発する場合、社内で開発するか、外部業者に委託するかが検討ポイントになる。一般的には、個別専門的な内容で対象者が少ない場合や教材ボリュームが小さいものは社内制作が向いており、対象人数が多い場合や教材ボリュームが大きい場合は外部を活用するとメリットが出やすい。
外部委託すると高額な費用が発生してしまうが、社内で開発する場合もそれなりに社内リソースを消費する。特にプロジェクトチームのような体制を組んだ場合は、打合せとやり直しで膨大な労力を費やすだけで、いつまでも完成しないというケースもある。そのため、社内の人件費も含めた総コストで比較すると専門業者に委託したほうが安い場合も多く、短期間で見栄えのするものが完成するはずだ。
しかし、業者によっては調査やヒヤリングという名目で高額の費用を上積みしていたり、制作費と別に利用のたびにロイヤリティが発生したり、ちょっとした改定でも多額の費用を請求される場合もある。逆に、非常に廉価で請け負う業者もあるが、なかには専門性や制作技術が十分でないこともあるため、開発案件に対応できるかどうかの見極めはしっかりしておきたい。
教材開発業者は、編集制作の技術だけでなく多くの経験とノウハウを持っている。そのため、これから独自教材の開発に着手しようとする場合、教材全体の体系の設計やメディアの選択、制作後の維持管理の方法などでもアドバイスがもらえるはずだ。もし、開発を委託するなら、一番基本になる教材や教材全体の体系に関係する部分の開発を委託すると効果が大きい。ここがしっかりできていれば、そこから派生する教材は社内で開発しやすくなるし、異なる担当者が別々に教材を開発しても、整合性がとれたものになりやすい。
委託する際は、提供可能な社内資料を準備してから依頼するのが望ましい。力量のある業者なら資料だけで素案を起こしてしまうことが可能なはずなので、ヒアリングなどの周辺費用を小さくすることができる。また、改訂のサイクルや方法、発生する費用などもあらかじめ確認しておくと、維持管理にかかる総合的なコストも低く抑えることが可能となる。

「企業と人材」43/965号 より

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