第2章:目標管理の今日的な展開〜1990年代の取り組み〜
更新 2002.09.01(作成 1999.10.24)
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中間管理職の苦悩
ここまで、目標管理の導入段階、さらに導入後に起きる一般的な傾向について触れてきました。
これは、制度の設計に段階で、先々のことまでイメージを持っていたほうがいいと感じるためです。
その意味で、最後にもう1つだけ是非とも触れておきたいものがあります。それは目標管理の運用の核となる中間管理職についてです。
■多忙な中間管理職
情報化が進展し始めたころから、中間管理職はいなくていい存在のように言われています。
実際にリストラに踏み切った企業もありますし、処遇のための肩書きだけは残しても実質的にポストから外れる人を多く作っている企業もあります。
ポストに残った人も、これまで以上に具体的な成果をあげ、存在価値を示し続けることが求められるようになってきています。
一方、市場が成熟化し始めた企業ではよりきめ細かな管理を指向するようになります。各管理セクションが、新しい制度、帳票、会議、システムを作り、次々に導入されます。それらを作るセクションは別々でも、その運用では1人の管理者に全てが要求されることになります。
こうして中間管理職は、大きな成果を求められると同時に、膨大な管理事務を要求されている存在となっています。
今日、多くの企業で、中間管理職はそのような状況の中に置かれています。
そこへ新たに目標管理を導入し、運用の核となることを求めるわけですが、実際には新たなものを引き受け完璧に運用していく余裕などはないのです。
しかし、実はここに非常に大きな成功のポイントがあります。
目標管理を導入すると確かに帳票や面倒な手続きは増えます。そしてそれが自分の本来の仕事と無関係で、余分な作業が増えただけと感じられてしまうと、ライン管理者は真剣に取り組んではくれません。
逆に、従来からやってたことをより楽にするものであれば、またより成果が期待できると感じれば、決してそれを拒否することはありません。
■相対的なパワーの低下
目標管理を導入すると中間管理職で悩み始める人が多くなります。
それは従来持っていたパワーは相対的に低下するためです。これには3つほど原因が考えられます。
第1は、職場状況などを公開することによって、部下との情報格差がなくなること。
第2は従来のように上司の命令というようなポジションパワーが使えなくなること。
そして第3は、ちょっと残念なことですが、新しい制度を上司と部下が同時に説明を受けたときに、上司より理解が早い部下が何人か出現してしまうという点です。
このようなことが重なって、中間管理職の一部には、自分の目標を部下に提示するのをためらったり、どうやっていいかわからないと自信をなくしてしまう人も出てきます。
特に部下との面談を初めて義務づけた場合などは、自分は面談してもらった経験がなく、他の人の面談の進め方を見ることもできず、面談を受ける部下の数倍緊張し、ストレスを抱え込んでしまう人も少なくありません。
中には、目標管理が直接の原因ではないにしても、目標設定や評価の時期に自ら命を絶つ管理者がでたという話も、複数の企業で耳にしました。
残念ながら、これまでは、このような中間管理職の苦悩に対する配慮は十分ではなかったようです。
目標管理の推進スタッフは、目標管理をうまく運用できない管理者を無能呼ばわりするだけでなく、相談窓口を設けたり、本当の悩みを解決できる研修会などを企画するなど、十分な支援を行っていくことを絶対に忘れてはいけないと思います。
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