業務の棚卸しから体系化までのステップについて、当社の推奨する方法についてご紹介します。
業務の棚卸しというのは、どんな業務や作業があるのかを洗い出して一覧に並べることです。
そして、業務の体系化というのは、混とんとした業務を秩序だてるということです。
業務の棚卸しから体系化まで
前回のTips No.67で解説したように、当社は業務体系を大中小・大中小の2階建てでとらえています。
業務の棚卸しもこの枠組みに沿って行います。業務の棚卸しから体系化までの方法は1つではありませんが、当社が推奨する方法は以下のとおりです。
1.大きな業務を洗い出す(俯瞰図)
図の2階部分の大きな業務を洗い出して、業務の関係を俯瞰図で表します。
2.業務項目までを一覧にする(業務体系表)
洗い出した業務項目までを一覧表にまとめます。これを業務体系表とよんでいます。
3.業務項目ごとに作業を洗い出す(業務分析フォーマット)
業務項目ごとに作業を洗い出します(図の1階部分)。当社はここを「業務分析フォーマット」というスプレッドシートを使用して整理します。
*「業務分析フォーマット」について詳しくはこちら。
4.業務項目を見直す(範囲と名称)
あらためて業務項目ごとの範囲と名称を見直し、粒度をそろえます。必要に応じて業務項目を分離、統合、変更します。
5.全体の体系を調整する(業務体系/作業体系)
1から4を繰り返し、業務項目という柱を揃えつつ、最終的に業務と作業の体系を調整します。
大きな業務を洗い出す(俯瞰図)
以下に、2階部分の大きな業務を俯瞰図で洗い出す例をご紹介しましょう。
例えばある事業について業務を整理する場合、まず事業活動全体の俯瞰図(事業マップ)を作成します。事業活動を行うために、どんな機能があるのか、大きな枠組みでとらえてみます。これを業務の最上位(事業区分)ととらえます。
事業区分を洗い出す(事業マップ)
事業マップは事業活動に必要な機能を表すため、多くの場合、結果として各部門名に近くなります。組織の形はさまざまですが、オーソドックスに、まずはライン機能とスタッフ機能に分けてとらえてみるのが考えやすいでしょう。単一事業を行っている組織であれば、この1つひとつの四角が事業区分に該当します。
*なお、事業活動をどういう切り口でとらえるべきかは、マーケティング戦略の領域かと思いますので、ここでは触れません。
ライン機能とは直接的に付加価値を生む組織本来の働きです。ラインは、市場に近い営業機能からバックヤードへと順に並べるイメージで描きます。
スタッフ機能は、人事や経理のように、ラインの活動を支える機能です。これは下に配置して支えているイメージにするとよいでしょう。
ラインの中にも、販売管理機能などのようにスタッフ的に関わるラインスタッフがあります。これらはひとまずラインの中に位置づけます。
全体を統括する管理機能は、ラインとスタッフの両方にかかるように描きます。
これはあくまで一例です。このようにして事業活動を構成する最上位の機能(業務)を配置していきます。これが事業区分に当たります。
それぞれの位置づけが一目でわかるよう、できるだけ大枠の機能をとらえ、細かくならないように注意します。
なお、複数の事業やサービスがある場合、ラインは複数のグループに分かれます。例えば、市場が法人と個人に分かれている場合や、直販と通販で分かれている場合などは、それぞれの事業について個別に機能を配置していきます。
事業活動によって、機能が完全に分かれているものと共通のものがある場合、それも図に表します。例の場合でいうと、営業機能や販売管理機能は分かれていますが、仕入れ・購買や物流は共通です。このように、機能が共通か別かがわかるように配置します。
複数事業を展開する場合でも、共通する機能が多い場合は、これを1つの事業マップとするとよいでしょう。
事業区分の内容は変化するとしても、このような業務の俯瞰図を作成しておくと「常にここから考える」というスタート地点を共有できます。さらに新任の担当者が業務を理解するのにも、おおいに役立つでしょう。
組織図を重ねてみる(体制図)
ちなみに、当社はこの事業マップに現在の組織図を重ねてみます。これを「体制図」とよんでいます。事業区分は実際の部門に近くなると述べましたが、必ずしも一致するわけではありません。
例図でいうと、事業Aの販売管理業務は業務部が担当しているけど、事業Bの販売管理業務は第2営業部がしているなど、各機能をどの部門が担うのかは別の問題です。
業務区分・業務項目を洗い出す(業務マップ/業務項目マップ)
事業マップで設定した1つの事業区分に焦点をあてて、業務マップを作成します。
そして次に、1つひとつの業務区分について、それを構成する業務項目を流れに沿って洗い出します。
もし事業マップ、業務マップと展開していくのが考えにくい場合は、先に業務項目を洗い出して、それをグルーピングしていくように、業務区分を設定すると考えやすいでしょう。
各業務項目は、基本的に、複数の担当者がモノや情報を受け渡しながら進める一連の工程です。業務項目の1つひとつが、図のような業務フロー図としてあらわされることを想定しています。
業務区分で調整する
業務の工程があまり複雑でない場合、事業区分、業務区分、業務項目と階層を下げていくと、各業務項目の単位が細かくなりすぎることがあります。そのような場合は業務マップは作成せずに、直接業務項目を洗い出してもよいでしょう。
逆に、もし、業務区分の中に大きな区分がある場合(ここでいう「大きさ」というのは、業務量や難しさではなくパターンの多さや工程の深さを指します)。
例えば、図の受託開発における「制作」という業務区分のように、他と比べて大きいものはもう1段階展開しましょう。これにより、他の業務との粒度をある程度揃えます。
基本は、業務項目の粒度を揃えることを前提に、業務区分で調整します。
業務項目までを一覧にする(業務体系表)
大きな業務を洗い出したら、その階層を一覧表(業務体系表)にまとめます。その際、各業務項目に定義を設定しておきましょう。
業務項目の洗い出しを進めると、項目の括り方を変更したくなることがあると思います。そうなれば定義も変わるでしょう。しかし、その都度業務項目を定義すること、つまり各業務の内容について文書化することが重要です。
業務体系全体の柱となる業務項目について熟考する過程を通じて、業務の全体像が明確になっていくからです。
なぜ図で洗い出すのか
最終的に一覧表(業務体系表)にまとめるなら、最初から一覧表で整理すればよいのでは?と思われるかもしれません。
確かにそれで十分な場合もあります。しかし、多くの業務は単純な階層構造だけでは表現しきれないものです。特に、大きな業務ほどその傾向が強くなります。
例えば、左の図の受注、手配、納入といった一連の業務があるとします。これらの業務に加えて、すべての業務に関連する横断的な業務も存在します。「情報更新」がその一例です。このような業務は、一連の流れの中に組み込むことが難しく、複数の業務と並行して行われるものです。
また、納入方法に複数のパターンがある場合、例えば右の図のように配送、営業持参、顧客引取りなどのパターンがある場合も、一連の流れの中に組み込みづらいものです。
業務体系表だけでは、こうした業務間の関係を適切に表現するのが困難です。そのため、最終的にこのような一覧表にまとめる前に、まずは俯瞰図で業務相互の位置づけを表しておくと、整理しやすく、理解も深まります。
なお、「3.業務項目ごとに作業を洗い出す(業務分析フォーマット)」以降の整理については個別性が高く、迷うことがたくさん出てくるはずです。ここではとても書ききれないので、以下の講座をご受講ください。きっとヒントが見つかるはずです。
Youtubeでも関連情報を解説していますので、あわせてご覧ください
author:上村典子