少々間が空いてしまいましたが、前回に引き続き、業務の棚卸し方法について解説します。
今回は「2.時間軸に沿って洗い出す方法」についてです。
時間軸で洗い出す方法とは
時間軸に沿って洗い出す方法とは、例えば標準的な1日の業務を始業から終業まで順に書き出していくやりかたです。1日の単位で洗い出せる業務のほか、月間、四半期、年間などの一定期間のサイクルでスケジュールが設定されている仕事があれば、そのスケジュールに照らしながら業務を洗い出します。
なお、ここで洗い出す業務とは「業務項目」のイメージです(Tips54を参照)。
日次単位で洗い出す
店舗業務の場合は日次単位で洗い出しやすいタイプといえます。図はスーパーマーケットの例です。
開店と閉店を基準にして、開店前、営業中、閉店後に区切って、それぞれに発生する業務を洗い出します。
例:スーパーマーケット
なお、時系列で業務を洗い出すとは、スケジュールを立てることではありません。スケジュールに照らしてどういう業務が発生しているのかをピックアップすることです。
まずは1日のスケジュール(日程表)を立ててみて、以下の順で洗い出すと考えやすいでしょう。
- 毎日、一定の時間帯に行うこと(開店、陳列、朝礼など)
- 毎日、発生都度行うこと(接客対応、品出しなど)
- 毎日ではないが、時々行うこと(売価変更、レイアウト変更、POP作成など)
そして、上記の3つに挙げられる業務を日常業務ととらえます。
担当ごとに洗い出す
当然ながら、担当が異なるとやることが異なるため、担当ごとに時系列で洗い出していきます。
例えば開店前に行うことでも、売り場担当であれば、荷受け、売価変更、などが挙げられますが、レジの場合であればレジ設定、売価設定、釣り銭準備などが挙げられます。
また各担当に共通の業務もありえます。図には記載していませんが、朝礼などは全員で行う場合もあるでしょう。
ここで注意したいのは、全担当分を一度に洗い出そうとしないことです。どういう立場で洗い出しを行うかにもよるのですが、まずは1つの担当分ずつ明らかにしていきましょう。優先順位はフロントエンドからバックエンドへが基本です。
業務の単位を調整する
業務を一通り洗い出したら、開店前、営業中、閉店後のいずれにも繰り返し発生する業務(例えば清掃など)は1つの業務としてまとめます。逆に1つの業務とするには大きいと感じるもの、例えばチェックアウト業務のように、現金、電子マネー、クレジットカード、商品券など、さまざまなパターンが存在するものは、パターン別にさらに分解します。
そのうえで、1つの業務としてくくる範囲を設定します。これについてもう1つ例を挙げておきましょう。
例:デイサービスの1日の流れ
これはあるデイサービスの1日の流れです。朝ご利用者を迎え入れ、夕方に送り出すまでの間に行う業務を時系列で洗い出したものが左の図です。
その上で、何度も登場する業務や似た業務については、1つの業務項目にくくります。
例えば朝の迎え入れと夕方の送り出しは、業務の大部分が同じになるため「送迎」という1つの業務としてくくれそうです。 逆に大きい業務については切り分けます。例えば機能訓練は、3つの訓練に切り分ける、といった具合です。
このように時系列で業務を洗い出し、似たものは1つにくくり、大きいものは分解します。これらの業務項目を一覧にすると、右図の「日次の業務」のようにまとめられます。この1つひとつの四角(水色)を業務項目としてとらえます。
週次、月次、年次等の洗い出し
そのほか、週次や月次単位で行われる特売や、季節単位のキャンペーンなどもあるでしょう。あらかじめスケジュールが設定されている日常業務以外のイベントについては、その準備にかかる業務、実施中の業務、事後の業務についても、洗い出します。
バックエンドの管理業務、例えば経理業務などは日次の締め処理のほか、月次・年次の締め処理や決算業務もあります。店舗に限らず、経理や総務などのスタッフ部門の業務は、日次よりも月次、四半期、半期、年次単位で動く業務が多くなるでしょう。
今回例に挙げたような店舗業務の場合は、日次単位の時系列で洗い出しやすいタイプといえます。
しかしそうでない業務であっても、時系列で洗い出せるものはたくさんあります。まずはフロントエンドの日次業務から洗い出してみる、次に月次で洗い出してみる、と考えると取りかかりやすいのではないでしょうか。参考にしてください。
author:上村典子