第1章:目標による管理の基本概念
更新 2002.09.01(作成 1999.10.24)
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一般的なマネジメント理論としての浸透
ここまで、目標管理の最も基本的な概念について触れてきました。
目標管理の最も基本的な部分は、まず担当者が自ら目標設定し、自己統制しながら仕事を進め、その結果を評価するという活動であること、そしてそれを会社全体で整合性をとりながらやっていこうという部分です。
こうして振り返ってみるとわかるように、目標による管理の中で主張されている内容は、今から考えると特別な経営手法というほどのものではありません。むしろ、一般的なマネジメント理論として認知されているものとほとんど差が無いといってもいいくらいです。
しかし、一般的になってきたということは、経営手法を商品として販売している産業教育機関やコンサルティング機関、あるいは出版業界にとっては、目標管理の商品性が薄れていったことを意味します。そのため、目標管理の普及に努めようという動きは、一時はほとんど無くなってしまったようでした。
■方針管理の陰に隠れて
1970年代の後半から80年代前半にかけては、TQCとともに普及してきた方針管理の陰に隠れてしまいます。
方針管理とは、どこに重点化して改善活動を進めていくのか、その方針を経営トップからロアマネジメントあたりまで展開(ブレークダウン)していくことで効率的な経営管理を行っていこうとするものです。
目標管理は、いったん目標を設定してしまうと安易に修正できず、活動が硬直化したり、目標達成が無理とわかると意欲が低下してしまう傾向があります。
それに対し方針管理では、方針に沿った範囲であれば修正を加えながら最後まで努力し続けられるという傾向があります。方針管理が注目されたのは、目標管理の欠点を修正する意味もありました。
しかし、方針管理も従来の製造業の市場の成熟化とともに下火になってきます。方針管理は、安定した環境の中での経営の効率化には威力を発揮したものの、急激な環境変化には弱く、企業革新を生み出さないという傾向が顕著になってきたためです。
その後1986年の円高不況からバブル期にかけては、戦略経営、CI、イノベーション、CSなど、次々に紹介される経営手法や経営用語が脚光をあびるようになってきました。
このような中で、目標管理はもはや古くさい、古典的な手法というイメージになってしまったようでした。
■企業の中でノウハウの蓄積
しかしながら、目標管理の考え方はその後のマネジメント理論に影響を与え、多くのマネジメント教育の中で利用され続けました。
また、『目標による管理』という手法がことさら強調されないまでも、多くの企業の中に断片的であれ、浸透していき続けました。
最初のブームのころに目標管理を導入した企業でも、マンネリ化したり、形骸化したところはあっても、完全に廃止したところは少なかったようです。なかには制度の名称を変えたり、利用する部分を限定したりするところもあったようですが、いずれにしても地道に活用し続けられてきたようです。
こうして目標管理は、教育機関やコンサルティング機関ではなく、実務家の人たちによって工夫や改善が加えられ、実態のある管理手法として、企業の中にノウハウが蓄積されていきました。
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