No.60

業務の棚卸し(4.担当者ごとに洗い出す方法)

category:業務の整理・標準化


公開日:2023年 03月 03日

前回に引き続き、業務の棚卸し方法について解説します。
今回は「4.担当者ごとに洗い出す方法」についてです。

作業項目の洗い出し

例えば庶務系など、細かい作業が多岐にわたる仕事の場合、あるいは業務が属人化している場合などは、図のようなシートを使って各人が受け持っている作業項目を洗い出す場合があります。
つまり「○○さんは何を受け持っているのか」を把握するための1つの方法です。さらにシートをグループ分けして「職場にどんな仕事があるか」を整理することもあります。
注意事項としては、範囲を絞って行うこと。そうでないと後で収集がつかなくなります。この問題については後半で解説します。

作業シート_作業項目の洗い出し

*図のシートはカード型ですが、リストにしてもかまいません。

作業シートの項目例

  • 作業名:仮でかまいません。洗い出した後であらためて粒度や名称を見直します。
  • 担当名(氏名):役割の名称です。それを担当している人の氏名もカッコ内に書いておきます。
  • 概要:作業内容の概要です。
  • キーワード:担当者が自由に設定します。関連作業を分類する際に役立ちます。
  • サイクル:年、月、週、日次、半期など
  • タイミング:締め日、発生のタイミング、イベントを基準に何日前、何日後など
  • 使用ツール(システム等):システム(画面名)、クラウドサービス、共有ドライブ、アプリなど
  • 使用帳票・ファイル:その作業で使用(または作成)する帳票やファイルなど
  • 関連処理:前後の工程や並行処理

例に挙げた図は事務系を想定していますが、業種、職種によって記入項目はアレンジします。
ただし記入項目はあまり細かくしないこと。担当者が迷わずに書ける程度の項目数にします。
キーワードや関連処理をいれておくと、あとで分類するのに役立ちます。
使用帳票や使用ツールは、実物や画面ショットを揃えて付番し、作業シートの番号と紐付けておくとよいでしょう。
この段階ではまだ手順は書き出さなくて構いません。業務/作業項目を整理した後に手順を整理します。

業務/作業の階層化

洗い出した作業シートはグループ分けして親の業務項目を設定し、業務/作業を階層化します。以前ご紹介した「1.機能展開による洗い出し」とは逆方向の演繹的なアプローチといえます。
この方法は、範囲を限定して行うことをお勧めします。ときどき、これに似た方法で全社の業務を一斉に洗い出そうとしているケースを見かけますが、お勧めはしません。
洗い出した作業をグループ分けしても、適切な業務項目になるとは限らないからです。

作業シート_グループ分け

作業のグループ分けが難しい理由

粒度と重複

1つは粒度の問題。作業を洗い出す単位は人それぞれなので、どうしても大小バラつきがあります。
また、バラつきがあるということは、重複する作業もあるでしょう。これらは複数の担当者が洗い出すと必ず起こる問題です。が、解決できない問題ではありません。
もう少し厄介な問題に、「切り口」と「括り方」の問題があります。これらについて例を挙げて説明します。


切り口の問題

1つの作業シートの中に複数の業務(親)が混じっている場合があります。
例えばある人は、毎月末に「仕入先への振込」「本社送金」「社員口座への振込」を行っていたため、「月末振込処理」という項目で作業シートを作成したとします。
自分があるタイミングで行っていることを切り取って「1つの作業」ととらえると、こうなります。

作業シート_複数の業務

しかし、「仕入先への振込」は買掛業務の一環、「本社送金」は売上管理業務の一環、「社員口座への振込」は精算業務の一環だった場合、担当者が1つの作業と認識していたことは、実は図のように3つの業務とのマトリクスになります。
業務や作業がマトリクスになることは珍しいことではありませんし、「月末振込処理」も1つの切り口として間違っているわけではありません。ただ、作業をグループ分けしようとしたとき、途端に悩まされることになります。


括り方の問題

同様のことは業務項目(親グループ)のレベルでも起こります。
例えば「給与書類の保管」や「給与データ取込み」「賃金証明書作成」などの作業項目があった場合、何となく給与に関係していそうなので、これらを括って「給与業務」とラベリングしたくなるかもしれません。しかし、実は「給与書類の保管」は入社の業務で、「給与データ取込み」は月次給与の業務で、「賃金証明書作成」は再雇用の業務だったりします。
いったん業務名が与えられるとそれが前提として認知されるので、矛盾に気づきにくくなります。


多くの場合、現場の担当者が自分の担当を超えて業務を俯瞰することは困難です。(教育のあり方によるかもしれませんが)
そのため「担当者ごとに洗い出す方法」を使って、広い範囲の業務を階層化するのは相当な遠回りになるでしょう。そして目指す所に辿り着けるとは限りません。
今回ご紹介する方法を活用する場合は、ある程度のフレームワークを作ったうえで、範囲を絞って検証していくことをお勧めします。もし既に収集がつかなくなっていたら……、プロに任せましょう。

業務/作業の棚卸は、やはり川上と川下両方から検証していく必要があるのだろうと思います。
これまで4回にわたってご紹介した方法を参考に、状況に応じて手段を使い分けていただければと思います。

author:上村典子kamimura

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