業務マニュアルを受託開発する際にいつもやってきたことが、社内での業務標準化にも役立つかと思い、したためることにしました。これまで断片的に書いてきたことが少しつながるのではないかとも思います。あくまでも当社の進め方ですが、参考にしていただけたらと思います。
業務マニュアルの作成ステップ
当社が業務マニュアルを作る際の大まかなステップは図の通りです。
ベースとして用語集を作成します。それを土台として1.仕事の整理、2.マニュアルの設計、3.コンテンツの作成という3つのステップを辿ります。 プロジェクトの仕事としては、事前のコンセプト設計や資料整理、作成後の更新・改修というものがありますが、純粋に業務マニュアルを作成するためのステップは、1から3です。 今日ご紹介するのは、「1.仕事の整理」のステップです。
このステップはさらに、1.業務の棚卸し、2.体系化、3.標準化という工程を踏んで進めていきます。
1.業務の棚卸し
業務の棚卸し方法にはいくつかあります。
- 組織の基本目的(ミッション)から機能展開していく方法
- 時間軸に沿って洗い出す方法
- 仕事のサイクルに沿って洗い出す方法
- 担当者ごとに洗い出す方法
当社では、概ね機能展開をベースに、業務の内容に応じてその他の方法を組み合わせます。 以下に当社の基本的な棚卸し方法をご紹介しましょう。 演繹か帰納かでいうと演繹法になるかと思います。
1)業務の俯瞰図
最初に業務の俯瞰図を作ります。業務の位置関係を図にしたものですが、これを当社ではマップと呼んでいます。社内にありそうでないものの1つと言えるかもしれません。業務体系の出発点になるため、ぜひ作成することをお勧めします。最初はラフで構いません。業務を整備しながら調整していけばよいのです。
2)3つのマップ
図はラフなイメージですが、当社では縮尺率の違いによって事業マップ・業務マップ・業務項目マップの3種類を作成します。一番縮尺率の高いものを事業マップと呼んでいると考えてください。 事業活動全体を俯瞰するものがこれにあたります。
単一事業を行っている組織であれば事業マップを省くこともありますし、複数事業を展開する組織では、複数レイヤーの事業マップが必要になることもあります。
このようなマップを作ることで、マニュアル化する範囲を明確にします。 なお、業務マニュアルを受託する場合、これらのマップは当社にて案を作成します。これがないと全体の見通しが立たないので、できるだけ早い段階で作成し共有することが大事だと思っています。 作成したマップは基本概念の解説でも活用します。
各マップのサンプルをもう1つお見せしましょう。
以下は介護事業における例です。事業活動によって内容はさまざまですが、考え方は同じです。
2.業務の体系化
1)業務項目を定義
事業マップを構成する、業務の大きなまとまりを「事業区分」とします。業務は入れ子になっていますが、一番大きな括りととらえてください。
事業マップの一部を展開したものが「業務マップ」で、その業務マップを構成する要素を「業務区分」とします。
この業務区分を構成する要素を洗い出したものが業務項目です。業務の内容によっては、マップというよりもリストに近いかもしれません。
業務マニュアルを作成するにあたり、この業務項目を定義します。
そして、各業務項目の工程を掘り下げます。なお、当社では業務プロセスというとき、この工程のことを指します。
2)業務の工程を整理
業務項目ごとの工程を掘り下げるとは、業務項目を構成する作業を、流れに沿って分解しながら整理することです。
この工程の整理に使用しているのが、たびたびこのTipsでもご紹介している『業務分析フォーマット』です。
受託開発する場合は、このフォーマットの使い方を社内のプロジェクトメンバーの方にレクチャーし、社内で作業を洗い出していただくことが多いです。 ときには、当社がヒアリングしながら作成することもありますが、いずれにしても現場の人に確認しながら作成していきます。
このようにして、業務と作業を洗い出します。
なお、この段階で、簡単な業務フロー図も作ります。これは 前回のTipsでもご紹介した簡易フロー図のレベルです。あくまでも業務整理段階の業務フロー図ですので、プロジェクト内で検討しやすく変更しやすいものにします。ユーザー向けの業務フロー図は、マニュアルとしてまとめる段階で作りましょう。
3.業務/作業情報の標準化
1)名称をつける
体系化したら、業務項目/作業項目が適切な名称になるよう調整します。親子関係が逆転したり、異なる作業に同じ名称をつけたり、同じ作業なのに名称が変わる、などということのないよう留意してください。
名称のつけ方については、 Tips16、 Tips17も参考にしてください。
2)手順を決める
標準となる作業手順を設定します。
基本と例外を切り分けます。
3)範囲を決める
業務項目/作業項目が、どこからどこまでの処理なのかを明確にします。
以上が業務(情報)の標準化です。
このあと、業務マニュアルというドキュメントにまとめることによって、標準化された業務を、誰でも"見える"状態にします。
いかがでしょうか。
当社の場合は、あくまでも業務マニュアルの作成をゴールとしており、『業務分析フォーマット』も、分析とはいえ業務マニュアルに情報を落とし込むためのツールです。業務改善を直接の目的としたものではありません。
よって、動作分析までは行いませんし、工程に要する時間も計りません。 それでも、一定レベルの標準化・見える化までが比較的短期間に行えますので、結果として改善箇所も発見しやすくなるかと思います。 参考にしてください。
Youtubeでも関連情報を解説していますので、あわせてご覧ください
author:上村典子