前回まで、業務フロー図について書きました。
業務フロー図の一番のメリットは、業務全体を俯瞰できることです。業務の各工程がどう関連づいて流れるのかを把握できるのが業務フロー図のよいところです。
しかし、業務フロー図では表現しにくい要素もあります。それは"期日・期間"についてです。これらの概念を中心に伝えたい業務(特に作業レベル)では、ガントチャートの表現が参考になるかと思います。
ガントチャートとは
ガントチャートは、複数の人がかかわるプロジェクトの工程管理などでよく使われます。
例図のように、1つの業務は複数の作業項目(タスク)からなりますが、ガントチャートでは以下をあらかじめ明確にして計画を立て、進捗を共有するために使用されます。
- 作業項目(タスク)
- 役割分担
- 目標とする期日(開始日・完了日)
このように、工程管理に使用されるガントチャートではありますが、業務マニュアルの中でも、期日・期間の概念、つまり"どの作業をどのタイミングで、どのくらいの期間で行うべきか"を解説するのに、ガントチャートの表現が有効な場合があります。
例1:採用業務における期日・期間の概念
例えば、人事部門の「採用業務」を考えてみましょう。例であげた業務は最終面接~入社までの事務ですが、ここでは3つの「基準日」(最終面接日、内定面談日、入社日)が存在し、そこから起算する2通りの作業(以下)があります。
- 基準日の後に行う作業
- 基準日の前に行う作業
1)基準日の後に行う作業
この例としては、上図の「内定連絡」が該当します。最終面接を行ってから3日以内に内定連絡を行うという作業です。
なお、「内定面談」も1に該当し、最終面接から6日以内に行うという作業になりますが、6日間のどこで行うかは流動的です。このような場合は、矢印の線上にポイント(図の「▼面談」)を設けて、そこがトリガーとなって次の行動を起こすことを表現するとよいでしょう。
2)基準日の前に行う作業
この例としては、「入社案内送付」が該当します。「入社日」とは、前工程の進捗に影響を受けることのない確定された期日です。その日を基準に10日~5日前に行う処理が「入社案内送付」です。
*なお、工程管理で使用するガントチャートの時間軸は左から右に進み、矢印(あるいは棒)の長さは作業に要する期間を表します。
例であげた業務の期間とは、作業期間というよりも「実行までの猶予期間」の意味合いが強くなります。通常、猶予期間を表す場合は、両矢印(⇔)を使うことも多いのですが、ある時点から未来に向けての期間なのか、遡っての期間なのかがわかりやすいよう、ここでは右向きと左向きの矢印を使用しました。
例2:通信販売における期日・期間の概念
期日・期間の概念がキーとなる業務について、もう1つ例をあげましょう。下図は、通信販売における受注確定後のお客さまへの連絡業務です。この業務では「受注確定日」と「お届け日」が基準日となって、各作業を行うタイミングが決まります。
「事前確認」は「受注確定日」から逆算して決定します。「確定案内」や「発送案内」は「お届け日」から逆算します。「到着確認」や「フォロー」もやはり「お届け日」が基準日となりますが、基準日の後に行う処理になります。
他にもこのように、期日や期間の概念が重要な業務は数多く存在しますが、これまで、わかりやすく描かれていた例を知りません。このようにガントチャートを応用した図で表現することで、理解の手助けになるのではないでしょうか。作成のコツは、基準日(トリガー)を明確にすること。基準日から未来に向かうのか、過去に向かうのかを明確にすること、の2点です。なお、矢印は方向によって色分けするとよりわかりやすいかと思います。お試しください。
author:上村典子