業務マニュアルを作る場合、ゼロから作ることもあれば、既存のコンテンツをもとにして作ることもあるでしょう。
元ネタがあるほうが楽に思えるかもしれませんが、荷物を背負って作るのは、ゼロベースで作るよりも面倒な場合があります。
そこで今回は、すでに社内に存在しているコンテンツ類の整理方法について解説したいと思います。
1.項目別にマニュアル類を整理する
まず、社内に存在する関連コンテンツを洗い出します。
旧バージョンのマニュアルや資料、通達、社内研修で使用している教材、各部門で作成しているローカルマニュアル、あるいはシステムの操作マニュアルなど、とにかく関係していそうなものをすべて集めます。そしてそれらを項目別に一覧にします。
*なお、ISOを取得している場合は、当然ながらISO文書を踏まえてください。
*また、内部統制の管理対象である場合は「業務記述書」等を確認してください。
*上記に該当しない場合でも、 関連諸規程は必ず押さえておく必要があります。
例えば下図は、「店頭販売員の教育」を想定した場合の、関連コンテンツの整理表(サンプル)です。
それぞれのコンテンツにどういう情報が記載されているのかを、項目別に俯瞰できるようにしています。メインとなる情報には◎、サブ的な情報には○、部分的な情報には△、などの記号を付してもよいでしょう。
この場合、軸とする項目をどう設定するかに悩まれるかもしれません。似たような内容でも、コンテンツによって項目の切り口が異なるだろうからです。例えば「クレーム対応」に関する記述が、あるマニュアルでは「クレーム対応業務」という括りで解説されているのに、あるマニュアルでは商品別の括りの中で断片的に語られている、などとということはよくあります。
そこで、暫定的に項目を洗い出したうえで整理するか、あるいは、既存マニュアルの1つをベンチマークとして、その項目(≒見出し)に照らしながら整理する、という方法をとるとよいでしょう。
なお、この段階では情報のありかがわかればよいので、項目自体の良し悪しについて神経質になる必要はありません。ただ、項目間にダブりや漏れがないよう、ひと通りMECEを検証しておくと分類しやすいでしょう。
このように一覧にしておくことで、内容の重複や欠落の状態も把握できますし、コンテンツ間の整合性も検証しやすくなります。
また、一覧表を作成したら、さらに項目ごとに情報(データあるいは紙でも可)を集約しておくと、このあとの作成過程において、便利に活用できます。
2.目的別にマニュアル類を位置付ける
さて、項目ごとに内容を整理したら、さらに教育目的(あるいは利用目的)に照らして再整理するとよいと思います。
例えば入社後の成長プロセスを想定して、どのタイミングで何が必要なのかを検討し、今あるマニュアルや教材をプロットしてみます。これは教育体系を作ることにも似ています。
この整理をしておくと、どこに偏りがあり何が不足しているのか、また、それぞれのマニュアル類が目的に沿った作り方になっているか、などを検証することもできます。
このようにして全体を俯瞰することで、既存マニュアル類の改定や統廃合の方向も見えてくると思いますし、これから開発する業務マニュアルの位置付けやコンセプトも、より明確にできると思います。
作成に取りかかる前に、ぜひ周辺を見渡して、関連コンテンツを整理してみてください。
author:上村典子