リストラの波が引いて久しく、世間の景気は上向いて、採用に積極的な企業が増えました。
さぁここで一気呵成に拡大路線へ、と思われる企業には、ぜひ今のうちに業務を整備することをお勧めします。なぜなら、景気が悪かったときに業務が煩雑化している可能性が高く、その煩雑さを引きずったまま組織を拡大しても、後々効率が悪いからです。
景気が悪いと営業が頑張る。営業が頑張ると......
そもそも、なぜ景気が悪いと業務が煩雑になるか、ということを考えてみます。
限られた市場の奪い合いで、当然営業活動は厳しくなります。営業に課せられる目標は前年比○%増というものが多いと思いますが、景気が悪い中でそれを達成するには従来通りに活動していてはダメなわけです。もちろん商品力を高めることが一番でしょうけれど、それが難しい場合、営業は「あの手この手」を使わねばなりません。よく言えば創造性が必要です。
実はこの創造性の発揮のしかたが問題で、現体制に負荷をかけることなく市場を掘り起こしていくのが本来なのでしょうけれど、現実には逆が多い。社内に無理を持ち込むような解決策がとられることが多いようです。
例えば、新しいチャネルを開拓したり、これまでにない利用法を提案したりなどは本来の努力といえるでしょう。一方、その場限りの納期対応、その場限りの特別サービス、個別の取引契約、商品パッケージ内容の変更などなど、通常の業務に乗らない個別対応は業務の体制を崩します。ようはイレギュラー処理を作ってしまうわけです。
......気持ちはわからなくはないのですけどね。
もちろん、納期短縮や高付加価値なサービスをめざすことは悪いことではありません。しかしそれは全体のしくみとして改善した上で実現すべきことでしょう。その場しのぎの無理な対応はどこかにムダを発生させます。
業務の品質を維持するには、正確性、スピード、コストが重要な要素ですが、1つのイレギュラー処理が、全体の効率を落とし、業務の品質を落とし、結果として他のお客さまに迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
そしてこうした状況を助長するのが、往々にして業務を知り尽くしたベテラン諸氏のようです。
本来は、営業に対して「NO!」と言わなくてはならないところを、なんとかやりくりしてあげてしまうのです。業務を熟知しているだけに、業務を操作することに快感や自負心を覚える人も、残念ながら少なくはないようです。
また、そうした中では不正も起こりやすくなります。
このように、営業が"売上をつくる"ために頑張ったことが、組織として逆効果になってしまっている例を時々見かけます。
今のうちに足元を
一度崩れた業務はなし崩し的に崩れていきます。
際限なく事務の枝分かれが発生し、それを補うためにシステムは継ぎはぎを重ね、本来の設計思想がどうであったのかが見えなくなってきます。
そして不正を防ぐためのルールも増え、1つの処理を行うための手順が煩雑になり、ますます営業のフットワークが落ちることになります。
時代の流れと経緯を知る人たちは、「なぜそれをしないといけないか」について理解できるかもしれません。しかし経緯を知らない人や新人にとっては、そのような業務は難解に映るでしょう。
リストラをし、少ない人員で煩雑な業務をこなす毎日を経て、なんとか不景気を乗り切ってきた。この数年は景気も上向いてきたし、さあいよいよ......、そんなはやる気持ちをおさえて、足もとの業務を今一度見直し、マニュアル化してみませんか?
マニュアルを作るということは、業務を標準化しそれをドキュメント化するということ。人員を増強して組織を拡大しようとしたとき、人材を短期戦力化できるかどうかが最大の鍵になります。そのためには、業務が標準化されていなければなりません。
これからの数年間を軽やかに乗りきろうと思うなら、今マニュアルを整備しておくことは、決してムダな時間にはならないでしょう。
......でもその作業は思うほど易しくはありません。そんなときはナビゲートにご相談ください。
author:上村典子