Tips07で、マニュアルがわかりづらいことの一因として「そもそも仕事の整理がついていない」ことをあげました。今回はこれについて考えたいと思います。
なぜ仕事の整理がつかないか
「名選手、名監督ならず」といいますが、実務に長けたベテランもマニュアル制作となると多少勝手が異なるようです。
日ごろやっている仕事なのになぜ整理がつかないか......、
それは日ごろやっている仕事だからこそ、と言い換えることもできるでしょう。何か1つ整理しようとしてみると、次から次へ、あれもこれもと思いついてしまい、収拾がつかなくなるようです。
一方、カナメとなるような大事な仕事は、もうすでに「当たり前」のことになっていて、見落とされてしまいがちです。あるいはまた、日ごろ自分が行っている手順が果たして理にかなっているかどうか、そこが怪しい場合もあります。
ある業務についてマニュアルを作るためには、いきなりマニュアルを作り始めようとするのでなく、いったん仕事を整理する必要があると思っています。これはつまり、道案内をする前にまず地図を確認するのと同じことです。
仕事の地図を描く
まずは以下のようなことを整理されるとよいでしょう。
- その業務で取り扱うものは何か(商品の種類等)
- その業務に関係する場所はどこか(本社、営業所、取引先、車中など)
- その業務を行うための関係者は誰か(担当者、上長、事務、顧客など)
- 情報を伝達するための手段として何があるか(情報システム、帳票類など)
業種によってはこの他にも押えるべきことがあるかと思います。例えば運搬や加工の道具、マシン環境やアプリケーションなどがあげられる場合もあるでしょう。要は「それがないことには仕事が始まらない」というものを洗い出してみることです。
基本要素の流れを押える
仕事を行うための地図が整理できたら、その上で動くものの流れをつかみます。
一般に、仕事を行うための基本要素として、人・モノ・金・情報があげられます。業種によって何が中心になるかは異なりますが、要素の1つひとつについて、それがどう動くのかを確認していくとよいでしょう。"1つひとつ"というところがポイントです。多くの場合、まずはモノの流れから押えると考えやすいと思います。
タイミングに沿って組み立てる
基本的な要素を洗い出したら、それらがどういうタイミングで発生するのか、"時間"という観点からとらえ直してみるとよいでしょう。例えば半期単位で行うもの、月次で行うもの、毎日行うもの、都度行うもの......、といったように、処理のタイミングによって仕事を分類してみます。 さらに時間軸に沿って(例えば1日の流れに沿って)業務の流れを組み立てます。これによって、時間に関係する作業と時間には直接関係しない作業との切り分けもはっきりしてくると思います。
いかがでしょうか。以上のような整理をすることで、仕事の全体像がかなりすっきりするのではないかと思います。
さて実は今回、解説の中で「仕事」と「業務」と「作業」という言葉を無造作に使いました。いざマニュアルを作ろうとするとこの辺の切り分けを意識しておく必要があるでしょう。そうでないとキリがなくなるからです。
この概念については後日また改めて。(なんだか後回しが多いですね......)
author:上村典子