業務マニュアルを作るときに一番大事なのは「使う人の目線で考える」ことでしょう。
誰がどこでどのように使うか、それをイメージすることが大事です。
(以下は2001年時点の内容です。ご了承ください)
使いやすさの要件
使う人にとって使いやすい業務マニュアルであるためには、3つの要件があると思います。カタチ(媒体・形態)、構成、表現です。
カタチとは完成品としてのカタチのことです。大きくは、紙媒体にするか電子媒体にするかという問題があります。これは"使い勝手"に直接関わります。構成と表現は内容についての要件で、"引きやすさ"や"わかりやすさ"に関わってきます。 さて、どういうマニュアルが使いやすいのかは、取り扱う業務内容と利用場面によると思います。以下の点について吟味されるとよいでしょう。
内容に関すること
目的は?
そもそも何(の業務)をするためのものかということです。 Tips01でも触れましたので、参照ください。
内容の性質は?
- 抽象度:抽象的な概念か、具体的な作業か。
- 専門性:汎用的な内容か、専門的な内容か。
- 煩雑性:シンプルな業務か、煩雑な業務か(場合分けが多いなど)。
- 普遍性:普遍的なものか、頻繁に改訂されるものか。
*1つの業務の中で、相反する性質をあわせもつ場合もあります。
利用場面に関すること
利用者は?
- 社員全員
- 派遣社員
- パートタイマー
- 在宅社員
- 特定の階層(管理職、新人など)
- 特定の職種(営業、事務、技術など)
- 特定の拠点(海外拠点など)
- 関連会社(グループ各社、子会社、など)
- 取引先(販売代理店など)
利用頻度と時期は?
- 日常的に利用されるのか。
- スポット的に利用されるのか。
- 定期的に利用されるのか。......など。
利用場所は?
- 社内で利用されるのか。
- その場合はどこで?
- 一定の場所で利用されるか?
- 社外で利用されるのか。
- その場合はどこで?(客先?家庭?)
- 一定の場所で利用されるか?
以上を踏まえると、どのような作り方が良いのかが見えてくると思います。
参考までに、カタチについての検討例をあげておきます。(ちょっと乱暴ですが)
例1:人事制度や考課マニュアルなど
全社員に共通する概念部分と、個別的な処理の2部構成が想定されるので......、
- 基本概念や原則など、普遍性が高く抽象的な部分については冊子にして全員に配布。
- 部門や職種で手続きが異なる部分や改訂が頻繁にある部分については、イントラネットを活用。
例2:営業、メンテナンス業務などは
利用場面が一定でなく、時間的な余裕がないことが想定されるので......、
- 基本的な作業手順については、持ち運びしやすいバインダー式の手帳を使用。
- 顧客情報、特殊な問題への対応など、個別情報についてはPDAに入力、イントラネットを利用して情報を共有化。
例3:福利厚生、能力開発制度などは
- 情報量が豊富で多岐にわたり、しかも個別性が高い場合(履歴によって受けるサービスが異なるなど)は、データベースを作成し社内で共有。
- 社員の家族が利用する可能性がある場合は、小冊子にして配布。
例4:事務処理などは
- デスクワークで使用する場合は、ページが開きやすい形式の冊子、またはバインダーを使用。
- ほとんどがパソコンを使った作業の場合は、部分的にオンラインヘルプも併用。
- また、帳票類や文書をPDFなどにし、必要なときにダウンロードできるようにしておく、など。
もちろん、物づくりに制約はつきものです。コストや環境条件の問題を無視するわけにはいきません。でもとりあえず後回しにしましょう。まずは心をピュアにして、使う人になりきって使う場面を描くこと。制約条件に照らすのはその後にします。
*カタチを決めるためには各媒体の特性を知っておく必要がありますが、これについてはまた追って。
author:上村典子