弊社では3年前に目標管理制度を導入し「管理者教育:目標管理のしくみ・目標設定スキル・目標設定面接・達成度評価面接スキル」、「一般社員のための目標設定と目標管理面談」などを実施してきました。
しかし、思うような成果が出ません。本年度のフォローアップをどのように実施すればよろしいのでしょうか?例えば、事業戦略・計画との連動、評価結果の活用など考えられますが、実践的手法・ノウハウはあるのでしょうか?
思うように成果が出ない点について
いただいたご質問を考えるにあたっては、3つほどポイントがあるようです。
1)目標管理制度で目指した成果とは何か。
2)その成果はどのようなステップを経て出るのか。
3)成果が出ない(あるステップより先に行かない)原因は、何にあるのか。
目標管理によってどのような成果を求めるのかは、企業によってさまざまです。業績の向上を狙う企業もあれば、コミュニケーションの活性化とか、
人材育成とか、評価の透明性の確保などを狙う企業もあります。もし、人材育成を目的として制度を導入したのであれば、人材が育ちはじめたかどうかを目標管
理の成果と捉えるべきということになります。
話を単純にするために、ここでは企業業績の向上を成果と位置づけることにします。仮に目標管理を完璧に運用したとしても、企業業績が上がるかどうかは景気
動向やその他の諸条件の影響を大きく受けてしまいます。
参照 *Q&A
「目標管理を導入して成功している例はありますか?」
仮に環境要因を除いたとしても、目標管理制度の導入で企業業績が上がるようになるまでには、いくつかのステップを踏む必要があります。以下はその一例で、
カールパトリックの教育評価のステップに当てはめて整理したものです。
i)目標管理制度が全社員、役員に前向きに受け入れられる。
ii)目標管理の考え方、手順などを理解し、習得する。
iii)目標管理制度の導入によって各個人、各職場の行動や動き方が変わる。
iv)行動の結果として業績に反映される。
最後に上記のようなステップのどこかで行き詰まっているとしたとき、その原因はどこになるのかがポイントになります。それによっても打つべき手 が違ってきます。 原因の所在を大きく分けると、以下の3つほどに分類されます。
a)制度そのものの欠陥。
b)説明会や研修などの定着・普及活動のまずさ、弱さ。
c)従業員、役員の意識や制度を使いこなす能力。
一般的には、「制度を導入しっぱなしで定着のための活動をしていない」「運用に十分力を入れていない」ということが指摘されています。しかし、
私どもの経験からすると、制度そのものに矛盾、論理的な飛躍、煩雑さなどが多く、機能しようがないというケースも少なくありません。
貴社におかれましても研修にはかなり力を入れてこられたようですし、導入後3年が経過しているようですので、制度そのものを点検してみられることをお勧め
します。
フォローアップについて
「今年度のフォローをどのようにすれば良いか」という点について記述してみたいと思います。
まず1つ目の着眼点として、目標設定(および評価)の手順や手続きが定着しているかという点があります。特に面談が100%近く実施されているかという点
です。それができていなければ、期待する成果も現れようがありません。その場合、基本的な研修や啓蒙活動を繰り返し実施すべきかと思います。ただし、導入
時と同じプログラムだと受講者も飽きてしまいますので、プログラムに変化をつけるような工夫は必要かと思います。
1例ですが、職場ミーティングや面談が定着しなかった企業で次のような研修を実施しました。研修には、部長クラスの方とその部下である課長クラスの方、数
名のチームで参加していただきます。そこで部の目標≒部長の目標をチームで作っていくというスタイルです。でき上がった部長の目標は社内ネット上で公開す
ることにし「部長に恥をかかせたら課長の責任」としました。また、研修の中で模擬的な職場の目標設定ミーティーングを実施し、部長がやったんだから必ず課
長もやること、言い訳無用、としました。この年は、それまで数年間定着しなかった職場ミーティングや面談が、ほぼ100%実施されました。
他にもいくつか例はありますが、ここでのポイントは問題状況に応じたプログラムを工夫していくことかと思います。
次に、手順や手続きは定着しているんだけど、行動が活性化されなかったり成果に結びつかないという段階があります。このときの研修のポイントは、目標の中
身を精度の高いものにしてやることに焦点を当てていきます。具体的には、目標設定段階では現状分析と課題形成、実施段階では問題解決や交渉力などがテーマ
となります。
ただ、これは簡単ではありません。通常、目標設定の手順などは、全社で標準的・汎用的なものが1つだけ提示されているケースがほとんどです。しかし、実際
にはそれぞれの部門の性格に応じた分析方法や課題設定方法が必要なはずです。
例えば営業部門では市場分析や顧客分析の手法がありますし、製造部門では品質、作業、原価など管理分析手法があります。そのような各部門に応じた分析手法
を用いないと精度の高い目標はできません。また単なる手法の学習だけでなく、データ取りや情報の蓄積管理など、地道な活動やしくみづくりができている必要
もあり、それらに根気強く取り組み、積み上げていく必要もあります。
また、基礎的なビジネススキルが欠けているために精度が高い目標が作れないとか、運用がうまくいかないということも少なくありません。そこで、計数管理、
情報操作(コンピュータや統計など)、問題解決、交渉力などの基礎的なビジネススキルの強化プログラムも準備していく必要があります。研修のスタイルでい
くと、職種別、部門別に目標設定の研修を実施したり、基礎力強化のプログラムを体系的に準備するということになります。
加えて弊社でもう1つ推奨しているものに、ワークショップスタイルのMBO研修があります。これは目標設定期間の半年とか1年にあわせて、1グループの受
講者に3会合から6会合くらいの研修を組み、その会合に沿ってMBOのサイクルを回していくというものです。一度に実施できる人数に限りがありますが、一
定の成果も期待できますし、何より参加者が目標管理についてしっかりと理解し、周囲にも細かいアドバイスをするなど普及役となってくれるという副次的な効
果も確認できています。