間接部門(総務、経理、人事等)での目標設定は難しいとよく言われていますが、どういう点が難しいのか、またどう対応すべきかについて教えてください。
間接部門の目標設定が難しいといわれてきた理由は、従来の目標管理で強調されてきたことと関連が強いようです。
まず第1は、目標はできるだけ定量化すべきであるという点との関連です。営業部門などは売上や受注件数などの数値目標が立てやすいが、間接部門の業務は数値化できるものが少なく、定量的な目標が立てづらいという点です。
第2は、目標には定常業務を取りあげるのでなく、改善改革の業務にしぼって目標設定すべきと強調された点です。そうした場合、伝票処理などの定常業務を中心に担当している人は、自分の仕事の中心的な部分では目標がつくれなくなります。
そのため、無理やり何かの改善課題を探して目標を設定してみるものの、実際には手が付かずに終わったり、ほんの少しの時間で達成できた小さな改善によって高く評価されたりということが起きていました。
第1の目標の定量化という問題に対しては、2つの対応がなされています。1つ目は定量化が難しいものについては、無理に定量化しなくても構わない、という考え方の変更です。
定量化しないかわりに、定性的な表現を用いて、達成状態のイメージをできるかぎり明確に表すようにします。この場合、評価が曖昧になり易いという欠点はあ りますが、定性的な目標の表現方法を工夫したり、目標設定時点での面談で、達成状態のイメージのすり合わせを十分に行なうことである程度はその欠点もカバーできます。
2つ目は、数年かけて、職場の主立った指標のデータ採取を行ない、数値目標が立てやすい状態にしていくことです。例えば、遅延日数、残業時間、ミスの件数、クレーム件数、問合せ件数と処理件数などです。それらの基礎データが整ってくることによって、定量的な目標設定もやりやすくなっていきます。
第2の定常業務でなく、改善業務を目標設定にすべきという問題についても、対応策は2つほどあります。
1つ目は、その人が定常業務を中心に担当しているのであれば、定常業務を目標に掲げることを認めるという方法です。こう言ってしまうとあたり前のようですが、定常業務は簡単な仕事であり、価値の低い仕事という考え方の強い組織も多く、なかなか認められないケースも少なくありません。
しかし、実際には事業を支えているのは地道な定常業務です。定常業務に穴が開きそうになれば、必ず他の業務より定常業務を優先し、時間や人を割り当てるはずです。であるとしたら、定常業務が目標に掲げられることは決しておかしいことではありません。
しかしながら、定常業務でなく、改善業務を目標に掲げようという考え方には、業務自体を常にレベルアップしていかなければならず、そのための改善に時間を 割いていこうという意図が含まれています。
そのことを重視し、もし全員に改善活動を求めるなら、改善テーマを見つけやすくしたり、改善活動に時間を割けるように、担当する仕事自体を組み替えてやる 必要があります。
これが2つ目の対応です。各担当者が細かく分業化された部分的な仕事で、繰り返し業務だけにならないように、各人ができるだけ一連の、一塊の業務を担当で きるように担当変更を行います。それによって、改善目標を掲げやすく、かつ現実に取り組めるように してやることができます。
以上、間接部門の目標設定は難しいという前提で、その理由と対応策を述べてきました。ところが実際に目標管理に取り組んでいくと、最初は取っつ きやすいと思われた営業部門などでマンネリ化やモラールダウンが早く起きてくることが珍しく有りません。
これは、営業部門などでは、目標の項目が売上高、粗利、新規開拓件数などと固定化されてしまいがちで、その目標数値だけの設定となってしまいがちなためです。その結果、何期かやると繰り返しとなってしまい、しかもその数値もほとんどノルマに近い状態なために目標設定でどれだけ低い数値を認めさせるかだけが 関心事となってしまうようです。
これに対して間接部門では、最初は目標設定が難しいように感じられても、目標の項目もレベルも自由度が大きいため、何年か創意工夫を繰り返すうちに非常に うまく使いこなすようになる職場もでてきます。