各企業では、目標管理のどういったところに困っていますか?
目標管理を導入した後に発生する問題や悩みは企業によってさまざまです。ここでは、一般的に見られる傾向についてお答えします。
まず目標管理の導入直後に見られる問題は、管理者からの反発や抵抗です。「忙しい」「時間がない」「こんな面倒なことはやれない」から始まって、「部下に
自由にやらせていいのか」「上の方針に従わせるべきじゃないのか」といった考え方の対立もありますす。部下側としては「これまでは余計なことを考えずにヤ
レ!と言われてきたのに、今さら自分で考えろと言われてもできない」など、過去の人事施策との矛盾に反発する例などがありえます。それらの不満の結果、本
気で取り組もうとしてくれる管理者がでてこないという企業も少なくありません。特にこれまで面談が制度化してなかった企業では、面談を定着させるまでには
非常に苦労が多いようです。
その背景にある問題として、上司と部下が十分な対話を行なうようなマネジメントを、推進スタッフが管理者に押しつけている、という構図があります。やはり
推進スタッフにも、管理者の不満や抵抗に共感を示し、根気強く話し合っていく覚悟が求められます。
次に多く見られる問題は、目標管理を業績評価と連動させ、賞与や給与に大きく反映させる制度をとった企業では、評価の有利不利や評価制度の矛盾
の指摘ばかりに関心が集まってしまい、目標管理そのものがなかなか活性化しないという状況です。
これは業績評価と連動させたからいけないというわけではありません。目標管理が評価と連動していないときには真剣さもそれなりで、なし崩しになりがちで
す。評価と結びついているからこそ、真剣に考え問題提起が起こってきているのであって、たまたまその関心が本筋と違う方向に向かっているだけと捉えるべき
だと思います。
このような状況のときには、実際に評価制度の方にいくつかの不備や矛盾が存在していることがあります。そのような場合はすぐに改定はできないにしても、速
やかに対応方針を提示していくことが肝心です。
それでもやはり、目標管理は評価のための制度という認識から抜けきらないケースがあります。そうなってしまった場合はそこからスタートするしかありませ
ん。目標管理の話はしばらく脇に置き、公正な評価を行なうためにはどうするかを考えてもらいます。この議論を突き詰めていくと、結局は目標設定を真剣にや
るしかない、という結論に行きつくはずだからです。
最後に、目標管理を数年やってきた結果発生しやすい問題があります。それは、組織全体が短期指向に陥ってしまう傾向がでてくるという問題です。
これは目標設定を半期とか1年でやっているので、その期間中に結果を求めすぎるからだと言われます。しかし、目標設定を2年とか3年にしても結果責任に対
して曖昧になるだけです。逆に結果を求めるのをやめるべきだという意見もありますが、そうすると緊張感のないもたれ合いの風土に逆戻りしてしまいます。
この問題を解決するには、今期中にやるべき仕事、求める成果とは何かという部分に絞った議論をもう一度最初からやり直すことです。そうすると、表面的な売
上や利益を追い求めて努力しても、今期という期間中ではあまり影響がないという意見も出てくるはずです。では今期、本当にやるべき仕事は何かといえば、
CSに代表されるような競争力の源泉となっているものを地道に強化していくことではないかというような意識も芽生えてきます。
こうした議論を繰り返していくことが、組織内で戦略的な視点を育てることにつながりますし、そのような発想が多く生まれることによってはじめて目標管理が
戦略推進のしくみとして機能するようになるのだと思います。